White shining

 

 

 トレジャーハンターと呼ばれる者たちがいる。

 ある者は欲のため。

 またある者は歴史探索のため。

 そしてまたある者は、果てない探究心のために!

 

 

 いつもは閑静な住宅街に、激しい雨音が響く。

 その雨音をかきわけるように、一人の少年が歩いていた。

 髪は短く揃えた黒。体は細く、身長はそんなに高くない。

 その意味も知れない英文が適当に並んだシャツと、安物のデニムパンツ。それらを包む灰色のレインコートは大粒の雨を称え、水浸しのスニーカーは耐水性能を自白していた。

 目深(まぶか)にかぶったフードの下には、いたって普通の少年の顔。人によっては「かわいい」くらいには見えるかも知れない。

 少年の名は下野(しもの)(とおる)

 彼もまた、トレジャーハンターである。

 透の探索エリアは見慣れた住宅街。たまに離れたところへ足を運んだりもするが、おおむねは近隣だ。

 「見慣れた場所に、ひっそりと埋もれている輝き」というのが彼の求めるモノであり、また信条でもある。

「ふふっ」

 透の口から小さな笑い声が漏れ、雨に滲んで消える。

 彼は胸元にある感触を確かめながら、口の端を吊り上げた。

(ずっと前から狙ってた超レア物をついに手に入れた…!今日はツイてる!)

 わずかに軽くなる自分の足取りを感じながら、透は雨を割り続けた。

 ――と、

「ちょっと君」

 (りん)とした声が、背後から耳に届く。

 激しい雨音を奏でるフードを突き抜けて、それははっきりと聞こえてきた。

 自分に向けられた声であることは疑いようもないだろう。少年は少なからぬ嫌な予感を覚えながらも、振り向かずにはいられなかった。

(っ!?)

そこにいたのは美女。

長い髪を後ろで束ね、雪のような肌は雨の中にあってなお神々しく映える。その背筋と同じようにまっすぐ伸びた視線は、こちらを捕えて放さない。

 何よりも目を引いたのは、彼女の制服。

 彼女が何者であるか、透は瞬時に理解していた。その姿にはそれだけの力がある。詳細を知らずとも、幾度モデルチェンジしようとも、誰にもその存在を一目で認知させることのできる姿だ。

 凍りつくような血流に身震いしながら、少年は引きつった笑みで、引きつった声を返した。

「ナンデショウカ…」

「手錠はしないであげるから、ちょっとお姉さんに付いてきてくれるかな?」

 婦警さんは、にっこりと微笑んだ。

 

 

 ――コチ、コチ、コチ……

 どこにでもあるような交番の一室。その中央に無造作に置かれたテーブルと、それを挟むパイプ椅子。わずかに重心をずらしただけで悲鳴を上げるそれに、透は座らされていた。テーブルの上にはデスクスタンドが一つ。その他には何もない。あえて言うなら、自分のレインコートが部屋の隅に転がっているくらいか。簡素と言うよりは、やたら殺風景な部屋である。

 こういった場所では、掛け時計の秒針が心なしかうるさい。

「ごめんね、待たせちゃって。いい子にしてた?」

 と、例の婦人警官がやたら軽い口調で入ってきた。向かいに腰を下ろしながら、机の上に用紙を広げている。他の警官が入ってくるような気配はない。なんとなく、こういったことは二人でやるようなイメージがあるのだが。

 いや、それよりも――

「あの」

「なぁに?」

「交番に取調室ってあるもんなんでしょうか?」

「さあ?」

「さあって……、じゃあなんであるんです?」

「趣味よ」

「趣味って……」

「まあ、この交番自体が趣味みたいなもんだけどね」

(……交番が、趣味?なんかそんな無茶な話をどっかで聞いたような……)

「さて」

彼女は机の上に広げた用紙に、胸ポケットから取り出したペンで今日の日付を走らせた。

「まずは、名前を聞かせてもらおうかしら」

「…………」

「下野……、透……と」

「おいっ!?」

 徹は思わずテーブルの上に身を乗り出し、声を張り上げた。

「急に怒鳴んないでよ。びっくりして字がよれちゃったじゃない」

「いや、ンなことより、こっちが黙秘した名前があっさり出るってどういうことですか!?

「住所ってここでよかったっけ?」

「住所まで!?」

「ふふふ、これで私に黙秘が無駄だということがわかってもらえたかしら」

「な、なんなんだあんたは……」

 あまりのことに透が絶句していると、彼女は満足したように微笑を浮かべ、顎の下で組んだ手に頭を預けた。

「さあ、さっき何をしていたのか教えてもらいましょうか。とは言っても、私犯行現場ずっと見てたし、なんならここに、証拠映像もあるけど?」

「ぐ…………!」

 透は歯を軋らせたが、それが無意味であることにはすぐに理解していた。デジタルビデオカメラをひらひらと弄ぶこの婦警は、なんか色々と規格外だ。せめてもの抵抗か、少年が口を開かずにいると彼女は嘆息を一つ漏らした。なんのことはない、単に一呼吸置いただけだ。

「下野透。高校生。家族はいるけど、通学に不便なので一人暮らし。愛されてるわねー」

 と、彼女は頭を傾けて、大きな瞳でこちらを覗き込んだ。

「で、なんで下着泥棒?」

――――下着泥棒!?」

 透は激昂し、立ち上がりながらテーブルをばんと叩いた。背後でパイプ椅子の倒れる音が響く。婦警はちょっとびっくりした、という程度で、先ほどの姿勢のまま、きょとんとこちらを見上げている。透は構わずに、

「下着泥棒……!下着泥棒!!下着泥棒だって!?」

「えーと……」

「俺はトレジャーハンターだ!あんな稚拙で浅慮な輩と同じにしないでいただきたい!」

「まあ、確かにブルマ盗んだら下着泥棒とは言わないのかも知れないけど……」

「普段は主に下着をメインに活動しております」

「やっぱり下着泥棒じゃない!そういえば報告にあった前科五件、全部下着だし!」

「わかってない!あんたは全然わかってない!!

「うう、なんなのこの妙な迫力は……」

 少し気圧されたのか、わすかに後ろに引いた婦警を見下ろし、少年は力強く頷いた。目を伏せて、指を一つ立てる。

「いいですか、そもそもトレジャーハンターというものは――

「うわ、なんか始まった」

「自らのあくなき探究心を追い求めるものなのです」

「終わったし」

「つまり!」

 少年は大仰に両腕を広げた。信徒に啓示を下す、神のような胡散臭さで。

「俺の場合、それは下着だった!もちろん、そこらの下着泥棒とかいう奴らが相手にしてるような小物じゃない!俺の目があってこそ発見できる、この街にしか存在しない輝き!!」

「えーと、だんだんよくわからなくなってきたけど……」

 婦警はこめかみに指を押し付けながら、書類に何かを書き足し始めた。

「一応被害届も出てるし、ていうか犯罪だし、私もこの目でしかと犯行現場見たし、大体何も言わなくてもおとなしくここに来たんだし、一応罪を認める気はあるのね?」

「下着の窃盗とかじゃなくて、罪状を『星々の導き』とかにしてくれたら認めなくもないです」

「ワケわかんないし」

「わかりませんか?つまり星の位置関係と――」

「わかった、ストップ、ありがとう」

 婦警は再び嘆息を吐いた。今度は間違いなく不快のため息であろう。

「じゃあ聞くけど、なんでそのブルマが、えーと……『輝き』?なのかしら?」

「ブルマ自体に大した価値はありません。このブルマが持つ物語が重要なんです」

「物語?」

「持ち主は、三十後半とは思えないほど綺麗な奥さん。その子供のブルマですが」

「ちなみに小学五年生の真帆(まほ)ちゃんね」

「主に活用しているのは奥さんの方なんです!」

「マジで!?」

「奥さんの趣味です。それまではノーマルだった旦那さんも、今ではすっかりブルセラマニアの変態野郎へと新生しました。最近はイメージプレイも意欲的に」

「鈴木さんトコそんなディープな性活を……」

「どうです」

 少年は自信たっぷりに婦警を見下ろした。彼女は戦慄の表情で唾液を飲み込みながら、顎の下をぬぐっている。

「むう、確かにレアっぽいわね……」

「わかっていただけたらいいんです」

 透は満足げに頷いた。婦警は、とりあえず気を取り直して少年を見上げる。

「で、それをどうするつもり?匂いを楽しみながらアレするわけ?」

「しませんよ」

「じゃあ布団に縫い付けて、その人のことを妄想しながらアレするわけ?」

「なんかマニアック楽しみ方ですね、それ……」

「……じゃあどうすんの?」

「…………」

 透は咳払いをしてからパイプ椅子を立て直し、そこに腰を下ろした。

「……を……で……する」

 妙に肩を小さくして、うつむいたまま声を発する。聞き取りづらいのは、顔の角度のせいだけではないだろう。羞恥からか、罪の意識からか、少年が明言できずにいるのもわかるが、彼女としても立場上聞かないわけにはいかない。

「何?なんだって?」

 何やらもじもじしていた少年は、がばっと顔を上げて、

「それでチンポを挟んでゴシゴシするんです!」

 婦警の世にも冷たい視線が、ちくちくと痛くはあった。

 

 

「半年も前から、そんなことやってたわけね……」

「うう、もうしません……」

「計画犯罪?」

「そうです。一月かけて『星の導き』を待ち、突然の雨が降ったら干したままの『輝き』を雨音に紛れて()るんです……」

「…………」

 婦警は言葉の端々に色々聞き捨てならない単語を聞いたような気がしたが、とりあえず無視することにした。机の上に肘を、その手の上に顎を乗せ、嘆息しながら半眼で見つめてやると、透は「うう」と言いながら縮こまった。

「あら、かわいい」

「へ?」

「ふふふ」

 涙目できょとんとする少年に、婦警は微笑を返した。微笑というよりは、煽情的な、艶やかな笑み。

「ねえ、コレを持ち帰ったら、早速楽しむつもりだったのかしら?」

 と、彼女は押収していたブルマを胸元から――何故そんなところに入れているのかは不明だが――取り出した。

「え?あ、はい……」

「ふふふふふ」

 婦警はおもむろに立ち上がって、テーブルの上に身を乗せた。ブルマを指でくるくるやりながら、挑発的な瞳でこちらを見下ろしてくる。

「ね、ゴシゴシ……、してあげよっか?」

「え!?」

「これから帰ってするつもりだったんでしょ?新しい『輝き』を持って、期待して、アソコは待ち遠しいはずよ、コレの感触がね」

「えぁ……、あ……?」

(なんだなんだ!?)

 言葉を重ねるたび、婦警は少しずつ近づいてきていた。彼女の甘い香りが鼻腔をくすぐり、もう不能になったのではないかと思っていた性器が躍動しはじめる。

「あら、いい度胸ね。この状況で勃起するなんて」

「あ、いや、これは……」

 今目の前にいるのは、先ほどまでのやたら子供っぽい婦警ではない。妖艶な、一人の女だ。彼女は品定めをするかのようにこちらの股間を凝視しながら、

「元気いいのね」

 デニムパンツの上から、こちらの性器に細い指を這わせた。

「ぅあっ!」

「うふふ、今びくんってなったわよ」

「あぅ……」

「この反応……。相当溜まってるのかしらね」

 言いながら、婦警は嬲るように指をゆっくりと上へ滑らせる。

「あぅっ!」

「かわいい声で鳴くじゃない。もっとしてほしい?」

「…………」

「もっとしてほしいかって聞いてるでしょ!」

「ぅあぁあぁあああああっ!」

 唐突に激しく揺さぶられ、透は思わず悲鳴を上げた。

「ふふっ」

 婦警は、何故かその少年の反応にも満足したようだ。恍惚とした表情で、こちらを見つめている。

「かわいいわ。ね、もっとしてほしいでしょ?」

「はぁ……、はぁ……、は……、はひ……」

 透は息を荒らげながら、小さく頷いた。婦警は、にっこりと笑って、

「じゃあ立って、脱ぎなさい」

「……はひ」

 実は溜まっているのも事実だった。性器を中途半端に刺激され、頭が少し朦朧(もうろう)としている。抗う術を考慮することすらかなわず、少年は立ち上がり、トランクスと一緒にデニムパンツを下ろした。

「うふふ、元気いーい。触ってもいないのに、びくんびくんって。このままじっと見ているだけでイっちゃいそうじゃない」

「あう……」

「ん?なぁに?」

「その……、してくれないんですか……?」

 婦警はにんまりと笑った。いたずら好きの子供のようでいて、それでいて官能的な笑み。

「してほしかったら、お願いしなさい」

「……してください」

「誰が?何で?何を?」

「はぅぅぅ――

 透は頭が真っ白になっていくのを自覚しながら、

「婦警さんの手で、俺が盗ったブルマでチンポ挟んで、ゴシゴシしてくださいっ!」

「……この期におよんでまだブルマを忘れてなかったなんて……、ホントにいい度胸ね。ますます気にいったわ」

 婦警はブルマを透のペニスにあてがいながら、

「いいわ。望みどおりコレでしてあげる……」

 彼女は少年の半身にその肉体を密着させて、彼の性器をブルマごと、ゆっくりとこすりはじめた。

「はあ、はあ、はあ」

「私の手の中でおちんちんが暴れてるわよ。ホントに溜まってたみたいね。もうこんなに濡れて、すぐにイっちゃいそう」

 婦警がペニスをこするたび、こちらに触れている彼女の感触が動く。吐息が、胸が、太ももが。

「はあ!はあ!はあ!」

 透の呼吸が激しくなる。いつもとは違う、生々しい女性の感触が、より一層彼を絶頂へと駆り立てた。

「気持ち、いいです。ブルマも、婦警さんの、感触もっ……!」

「君、童貞くん?」

「はいぃぃぃ」

「うふふ、制服ごしの感触で興奮できるなんて。ほーんと……、かわいいっ!」

「くはっ、あぐううううっ!」

「ふふっ、そろそろイかせてあげるわ。ほら、ほらほら!」

「はぁっ!はああああああっ!」

――浮かんでくる。

 ブルマを履いた、人妻の姿。

 いつもどんなことをしてるんだろう?

 ブルマ姿で、ご飯をつくって、洗濯して、そしてベッドの上で。

 明瞭に浮かぶ。とても綺麗な人妻。

 いつも綺麗で、清楚で、笑顔が素敵で、

 でもブルマ。

 リアルに伝わるブルマの感触が、そんな彼女をつれてくる。

 そして頭が真っ白になって、

 真っ白な輝きが、降り注いで――

「イクっ!!」

 びゅくっ!びゅくびゅく!びゅっ!

「あぁ……、あぁぁぁぁぁ……」

 ブルマの中で弾けた精子が、ペニスに熱を伝える。

 そして、それをしっかりと包み込む婦警の手。

 少年はとろんとぼやけた瞳を彼女に向けた。

「ありがとう……ございました……」

「気持ちよかった?」

 彼女は暖かい眼で囁く。透はパイプ椅子にへたり込んでから、素直に頷いた。

「はい……」

 彼女はにっこりと微笑んで、

「じゃあ、もっと気持ちいいことしよっか」

「え!?」

「ほら、私のパンティよ」

 彼女はいつの間に脱いでいたのか、白いシルクのショーツを透の鼻にかぶせた。微かな香りと、体温が残っている。

「うふふ、やっぱりこうやってお話して、触れ合えば、『物語』も濃密なのかしら?もうここが反応してるわよ。それとも、若いから?ただ溜まっているだけ?どうでもいいわよね。だって、ここはもうやる気満々だもん」

「うぁぁぁぁぁ」

 ショーツでペニスをこすられる。再び快感を求めるそれを止める術など、少年は知らない。

「同じことしたってつまんないわよね」

 と、彼女はタイトスカートとストッキングを下ろした。

「童貞く〜ん。こんなコトも、してみたかったんじゃない?」

 言うが早いか、彼女はパイプ椅子に座ったこちらに乗っかるかたちで、ペニスをショーツごと自らの中に挿入していった。

「うっ」

 今まで味わったことのない感触だ。

「上も、んっ、脱いであげよっか?それとも君のような子は、あはぁ……、着たままの方が、あんっ、お好きかしら?んはぁっ」

 腰を動かしながら、婦警が言う。されるがまま、かつてない快感にうめきながら、それでも少年は言葉を発した。

「裸の上に……、あっ……、上着だけひっかけてください〜〜」

「……ホントいい度胸よ、君は」

 半ば呆れながら、それでも彼女は裸になり、上着に腕を通した。少年の目の前に現われた真っ白な乳房は、桜色の先端を尖らせてこちらを挑発する。彼女が再び腰を動かしはじめると、それは大きく弾んだ。

「これ……、意外と、気持ち、い……かも……」

「俺も……、気持ちい……!」

「ああっ!いいいっ!これ、けっこ、いいっ!」

 彼女の動きが激しくなる。熱い吐息がのしかかって、肩に置かれた手にも力が入ってきた。

「あっ、婦警さんっ!」

 透は目の前で揺れていた乳房にしゃぶりついた。と、

「ダメ!もっとショーツの感触だけ、楽しみたいんだからぁ!」

 婦警はどこからか手錠を取り出し、こちらの手をパイプ椅子の後ろで固めた。そして腰の動きを再開する。

「ああんっ!気持ちいい!ショーツペニス気持ちいいよぉっ!」

「うぁ……」

眼前で乳房が踊る。先ほどしゃぶりついたときの香りと味は鮮明に残っている。それだけに生殺しだった。

「ううう〜〜」

 少年は手をなんとか前に出そうともがくが、もちろん無駄なあがきに終わった。

「んっ、ふぅ、はあぁぁぁん」

しかし、婦警の動きは激しくなるばかり。少年は為す術も無く、その股間をゆだねた。

「はふっ、くぅ、あああああああ……」

 彼女は一心不乱に腰を振りつづけた。

「んっ!んっ!んはっ!」

 やわらかな彼女の中で、ショーツと、蜜と、熱と、欲情が絡み合う。

「んんんんんんっ!」

 透は、再び達しそうになるのを感じながら婦警を見上げた。彼女は快楽の虜とでもいうように腰を振り続けている。少年は自らの快楽に、何もかもがどうでもよくなってきていた。

「あはぁっ!はっ!はんっ!はあああああっ!」

 婦警は止まらない。

「もっとぉ!もっとぉっ!」

 婦警は止まらない。

「んはぁ!はうっ!あああああああん!」

 こちらが果てても止まらない。

「あはあああん、いいの!いいのぉっ!」

 ――輝きはまあともかく、とりあえず少年は世界が真っ白になるのを感じはじめてはいた。

 

 

(なんか変だと思ったんだよな)

 透はぼんやりと天井を見上げた。

(婦警が交番勤務っていうのも珍しい気がするけど、この交番、あの人の他には誰もいないし、なんか色々と設備的に疑問があったし)

 いや、天井と言うよりも、やたら上の方にある窓から差し込む光を見上げていた。

(あげくの果てには……)

 そして視線を正面に移す。

「なんで留置所まであるんだよっ!?」

 少年が格子をひっつかむと、婦警の笑い声が聞こえた。

「うふふふ。まあ夏休み中だし、しばらくそこで反省してなさい。そしたら許してあげるわよ」

 あの行為の中、どうやら気を失ってしまったらしい。気が付いたらここに入れられていた。

 悲しいほど冷静になってみると、色々と思い当たることがある。

 最近この近隣で噂になっている婦警の話。

 警察の御偉方の御息女様で、独自の交番をつくり、独自の捜査をし、独自の正義を貫く道楽警官。

 それが彼女であることは、疑う余地がないように思う。

「あなたが、御堂(みどう)さつきさんですか……?」

 こちらが気絶するまで腰を振り続けていた――いや、たぶん気絶してからも自らが満足するまで振り続けていたんじゃないかと思う。恐くて聞けないが――婦警は、おやつのチョコチップクッキーをつまみながら、けろっとした表情でこたえた。

「そうよ」

「いつもこんなことしてんですか……?」

「君は特別。気に入ったって言ったでしょ。他の男の人には本気でひどいことしてるかもね〜」

(本気でひどいことってなんだろう……)

 他にも「じゃあ女の人には何をするのか」など、聞きたいような気もしたが、少年は聞かないほうが幸せだろうと判断した。

 冷ややかな視線を婦警に送るが、彼女はやはり無邪気に微笑むだけだった。

「ここにいる間、楽しませてあげるね♪」

「…………」

 それはそれでおいしい話であることは間違いない。

(ま、いいか)

 少年が顔を赤らめると、彼女――御堂さつきはくすくすと笑った。

「やっぱり君かわいいね。君は私が見つけた『輝き』かな?」

「そ、そうですか……」

 少し複雑な気分ではあったが、こんな美人に気に入られて嬉しくないはずはない。少年は思わず顔をほころばせた。さつきはその無邪気な笑顔のままで、

「輝いてるブタ」

「豚!?」

「ほら、ブタ箱に入ってるんだから、やっぱりブタかなーと」

「いや、なんか言い方ってもんがあるでしょうが!俺太ってないし!」

「うるさいわね。変態に人権なんてないのよ。変態。畜生。ブタ。……うん、やっぱりブタがぴったり♪」

「あああああ……」

 少年は頭を抱えて倒れこんだ。

(………あれ)

 ふと気づいて上半身を起こす。

「あのー、そういえば俺、いつ出してもらえるんです?」

 彼女はティーカップに唇に近づけながら、相も変わらずのん気な口調で、

「洗脳が終わったら」

「洗脳!?」

「私もトレジャーハンター目指してみようと思って。君みたいな子を洗脳して、私だけのブタにするの。そしていつかは輝くブタ王国を!」

「わかってない!あんたはやっぱり全然わかってない!」

 少年の叫びがこだまする。

 留置所に降り注ぐ白い輝きは、雨の終わりを告げていた。




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