(第四話)

 

「きゃあーっ!」
髪の毛をひっぱられたまり子が悲鳴をあげても誰も近くにはいなかった。走っていたのでまり子は前のめりになってころんでしまい、そのころんだ背中の上から両方の髪の毛をにぎったまま美加也が馬乗りになって抱きつき、美加也はまり子のおさげ髪のわかれるはえぎわあたりから首すじを長い舌でなめはじめた。
「くくく。」
「きゃあ、いやあ。やめて。」
「おまえをへびにしてやる。」
「たすけて。」
美加也はまたまり子の両方の三つ編みの髪の毛を思い切りひっぱった。すると、興奮した美加也は精液も出してしまい、まり子の背中も濡らしてしまっていた。やがて、美加也はまり子のうなじのあたりに牙をとがらして噛みつきだした。
「ひひひひ。おまえもこれでへびになるんだよ。」
「ええっ?」
「おまえはクラスじゅうの女の子と男の子をおそってみんなへびにする、へびの女王になれるのさ。」
まり子の腕も、だんだんひふがはがれてきてへびのうろこが現われ始めた。
「ううっ、血、血がほしい。」
「どうやら、へびになりきったようだな。さっそく、ともだちのところへいってへびにしてこい。」
しばらくすると美加也もまり子のからだから立ち上がった。まり子はうつぶせになりながら首だけを上に向け、へびがはうようにして動き始めた。まり子の顔もうろこだらけになり、ほどけかかった三つ編みのふたつの髪の毛も不気味に毛先がへびの顔のように見える感じで地面をはっていた。
こうして、まり子も美加也によってへび少女になってしまったのである。

美加也によってへび少女になったまり子は、同じクラスの美樹と加代を襲ってへび少女にしていった。
美加也の髪の毛も少し伸びて、姉の編髪は美加也の髪の毛をていねいにとかすと、頭の上にポニー・テールにまとめて今度は三つ編みに結い、毛先を黒いゴムでとめた。編んだ毛先は、ちょうど首のうしろぐらいにかかっていた。
「ほら、美加也、お似合いよ。」
「おねえちゃん、ありがとう。」
鏡の前で自分の姿にしばらく美加也は見とれていた。このまま、スカートでもはいて女装したい気持ちにもなった。
「男の子のくせに、女の子みたいなことが好きなのね。」
「もうすぐ、ぼくがへびにした女の子、こっちへ来るよ。」
「うふふふふ、わたしはちょっと出かけてくるわ。」
「いってらっしゃい。」
編髪は髪の毛を後ろに垂らせてでかけた。お尻を覆うほど編髪の髪の毛も長くなっていた。
編髪の出かけた頃に、まり子もすれちがった。
「きれいな女の人だわ。はっ、あの人もへびだわ。」
誰がへびになっているかは、へび少女たちにはもちろんわかられている。
まり子が美加也を訪ねた。まり子も今日は三つ編みをほどいて束ねもせずに背中に髪の毛をおろしていた。美加也はこれも初めて見たので、すぐにこうふんしてきた。
「うふふふ、まり子ちゃん、おはいり。さっそくぼくの部屋に。」
「うん。」
まり子は美加也の部屋に入り、すぐに床にすわった。
「じゃあ、君が吸った女の子の血、ぼくが吸うよ。」
「いいわよ。」
美加也はすぐまり子に正面から抱きついてまり子の長い髪の毛をなでた。
「ねえ、ぼくの髪の毛もなでてよ。」
「うふっ、三つ編みにしたのね。よく似合うわね。」
まり子は美加也のそのおさげ髪をするするっとなで始めると、美加也は興奮してまり子の首にかみつき始めた。
「いたい。」
「ふふふ、女の子の血、たくさん吸ったね。」
「うん、加代ちゃんも美樹ちゃんもへびになったし、その子たちが他の女の子もへびにしたわ。わたしのクラス、女の子はほとんどへびよ。」
「男の子は襲わないの?ぼくみたいに。」
「男の子みんなこわがちゃって手も出せなくなったし、学校休んじゃった子たくさん出たわ。女の子がこわいって。女の子ににらまれるとからだが動けなくなってしまうのよ。」
「ふふふふ。女の子が強くなっちゃんたんだ。じゃあ、吸いつづけるよ。」
「ええ、どうぞ。」
美加也はまり子の両肩を髪の毛ごとおさえながらまり子の首にかみついて鋭い牙を出し、まり子の身体から血を吸い続けていた。

へび女はあちこちにふえていった。
編髪が女子高校をおもに狙ってしのびこみ、悪臭を漂わせて重症の女子生徒が病院へかつぎこまれると、その病室に友人を装って忍び込み、女子生徒が寝静まったころに、編髪に噛みつかれてへび少女になっていった。さらにその女子生徒も同級生らを襲ってへび少女にしていった。
こうして、この女子学校では、ほとんどの生徒がへび少女となってしまい、へび少女となった者の正体を見た生徒も次々にへび少女にされていった。そして、これらの生徒はすべて編髪の手下だった。もっとも多くの者から血を吸った生徒が編髪に呼び出されるとまた血を吸われ、その少女がふたたび狂い出してまた獲物を狙いにいったのである。
へび少女たちに狙われたのは、最初はおもに女子高校生だったが、女子高校生が帰宅すると妹をへびにして中学校や小学校の女子にも、そして女子だけでなく男子も毒牙にかかっていた。その男子は、同じ学年で隣にいる最も髪の毛を長くしている女子生徒に好意を抱いていたが、その女子生徒に初めて声をかけられた男子は校舎の裏側にあったへび穴に誘われ、倒された男子生徒に女子生徒が長い黒髪をばさっと男子生徒の肩にかけながらとびかかり、男子生徒はかみつかれてへびになってしまった。その男子生徒も同じクラスにいる、腰までとどくほど髪の毛を長くして三つ編みのおさげにした女子生徒の家に夜中に忍び込んで、女子生徒を襲ってへび少女にしていったのである。
そして、子供から親へともへびが広まっていった。おもに女の子が自分の親をへびにしていた。この世界は女が男の上に立って支配しているためである。男子生徒の親は、同級生の女子生徒が襲っていた。編髪が襲ったえり男のように、先に親や女兄弟のほうからへびにして追い詰めた男子生徒を襲う女子生徒もいた。男子を襲う女子生徒は髪の毛を長くしている者だけに限られていた。男子生徒が襲う相手も最低でも三つ編みができる女の子だけに限られていた。このため、髪の毛を長くしている女子生徒は同じ女子生徒には狙われなかったため、他のへびになっていた女子生徒といても守られていたが、夜になるとへびになった女子生徒が男子生徒を呼んできて襲わせていた。
昼の学校では教師に気付かれないようにへび少女がふやされていた。夜中になってへび少女たちは行動を起こし始め、まだへびになっていない者の家をさがしだしてその家を襲いに行っていた。どんなに頑丈に戸締りをしてもへび少女たちの魔力によって窓があけられてしまうのであった。もちろん、二階にいてもマンションでどんなに高い階の部屋でもだめである。ただ、これらの魔力が使える者もやはり髪の毛が長い少女に限られ、髪の毛の長さが長いほど魔力のききめが強くなっているのだった。
へびになった時には短い髪の毛でもそれから髪の毛を切る者はいないため、みんな長くなって、長くなると男子生徒を襲い始めるへび少女もいた。男子生徒も髪の毛を切らずに三つ編みができるほど長くなり、女子生徒の貸したゴムをまとめた男子生徒はその女子生徒の命令通りに行動して襲った別の女子生徒の血を吸った男子生徒からまた女子生徒が、その男子生徒の編んだ両側の髪の毛をひっぱりながらこうふんさせて首にかみつき、血を吸っている姿もあった。
編髪の近くにある小学校や中学校、また幼稚園の子供たちは、全員が編髪の手下となるへびになっていた。髪の毛が短い子供が男女両方にもひとりもおらず、全員が三つ編みできるほどになっていた。
編髪が襲ってへびにしていたえり男も、片思いの相手だった同級生の少女の家に忍び込んでいた。トイレに起きだしていた、やはり三つ編みのおさげをしていた寝間着姿の少女の背中にとびつき、髪の毛を両手でひっぱりながら、少女のうなじに噛みついていた。
「くくくくく。」
「きゃあーっ!」
えり男も、こうしてひとりの少女をへび女にしたのであった。

へび少女たちの増殖は、もはや防ぐてだてもないところまできていた。
「おほほほ、みんなわたしの手下よ。わたしの思い通りに地球が動くようになるのよ。わたしはみんなに気持ち悪いっていじめられてきたけれど、この気持ち悪さこそほんとうの世の中の姿なのよ。」
不気味に笑っていたのは、ほかならぬ編髪だった。髪の毛もとうとう地面を引きずるほど長く伸びていた。弟の美加也も三つ編みにした二本の髪の毛先がお尻の先までとどいていた。
力も女が男より強くなっていた。
ひとりの男子生徒を女子便所に複数の女子生徒がつれこんで着ているものをぬがせ、オナニーなどのいやらしい行為を強要する姿はあたりまえになっていた。
「ふふふふ、ひとりずつそのみにくいおちんちんをもませてもらうのよ。」
「あーっ、この子髪の毛長くしてる女の子のときに大きくなっちゃってるわ。」
「ふふふふ、女の子は髪の毛のこと、みな詳しいからすぐわかるものね。」
「やっちゃいましょ。」
「髪の毛長い子とは本番やらせたら。」
「うれしいでしょ、あなたの好きな長い髪の毛の女の子とエッチなことできて。」
夜道も女性が歩きやすくなった。痴漢がいなくなり、代わりに痴女がふえて男性がおびえながら歩かなければならなくなった。
「女性がこわい!」
「自分の妻もへびになっていると思うとおちおち眠れない!」
男性の夜歩く姿も減ってきた。
子供も女の子が男の子より多く生まれるようになってきた。
いつのまにか、世界の大統領や総理大臣なども女性になっていた。
世の中は、すっかり女社会と化してしまったのである。

うふふふ、わたしは、最初に出てきた編髪(あみ)。
いま、わたしは、わたしのことをへび女にしてくれた、おかあさまに髪の毛を三つ編みに結ってもらっているの。
このお話はこうして今回はここまでよ。続きはもしかしてあるかもしれないが、今のところはわからないとしておくわ。
ふつうなら、へび女を退治する正義の味方でも登場させ、全員が元の人間に戻れば話は解決となるんでしょうが、もしかするとこのままのほうの世界が、特に女性や、力の弱いいじめらっれ子などにとっては、むしろよいと思っている人も多いんじゃない?
へび女にしても、吸血鬼にしても、またインベーダーにしても、時には世の中を大きくひっくりかえして動かし、それで生き物のすみよい世界になればいいのよ。
ねえ、このお話では、途中で死んだ者は誰もいないわ。へびになってもみんなしっかりと生きているでしょう。つまり、ばたばた人が死んでばかりいる、ほかのホラーの話に比べれば、ましなんじゃないかしら。
さあ、これをお読みのあなたもわたしに噛みつかれて、へびになるのよ。
「ぎゃあーっ!」



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