身長は145とかなり低く、顔立ちは童顔。そしてさらに声変わりしてない声

の高さのせいで女の子と間違われる始末。

そのため、少しでも男らしくみせようと一人称を『僕』から『俺』へと無理や

り変えたのも、今ではいい思い出となっている。

それが俺、橘直樹だ。上に挙げたこと以外を除けばいたって普通な高校生で、

彼女もいる。西田未来という、俺には勿体ないくらいの子だ。

思春期真っ盛りの高校生となると、当然だが・・・女の子の体に興味を持つ。

俺もそうだった。が、そういうことは今までしてこなかった。何故だかはわか

らないのだが・・・してはいけないことのような気がするのだ。こう、積極的

に行動しようとすると心の隅にある何かが俺の衝動に歯止めをかけているよう

な・・・そんな感じ。

「ま、今の状態が壊れたら嫌だしな。」

と、無理矢理自分に言い聞かせてそういうことにしてきた。

そんなまま、高校一年が過ぎ去ってしばらくしたある日のこと。

 

平凡な日常は、あっけなく崩壊し始めた。

 

[五月一日 午後八時 自宅]

無事に高校二年へと進学でき、一学期最大の楽しみであるゴールデンウイーク

に突入したある日のこと、家に一本の電話がきた。

別にたいしたことではない。遠くに住んでいる叔父さんと叔母さんの家族が連休を利用して

泊まりにくるという内容。例年となんら変わりはなかった。到着するのは明日

の昼頃らしい。電話をしながら母さんは、ウキウキしながら何かをメモし始め

た。恐らく、明日の予定でも話し合っているのだろう。

(まったく・・・)

毎度毎度のことなのにどうしてこうも楽しみなんだろうか・・・

かという俺も、楽しみじゃないわけではない。むしろドキドキしてる。なぜか

というと・・・

「あ、直樹。明日あんた一日ずっと暇よね?」

と、いきなり母さんは電話の受話器を離して俺に尋ねてきた。

「え?あ、あぁ。」

(いきなり話しかけるなよな・・・何だったか忘れてたじゃんか)

「んで、なんだよ?」

「いや、明日家族で空港まで迎えに行くからあんたも来なさい。」

「えぇっ、何で!?」

「『何で!?』じゃない。向こうに失礼でしょうが。」

「え〜」

「わ・か・っ・た・わ・ね・?」

母さんの眉間にシワがよりはじめる。

(ヤ、ヤベェ・・・)

「わ、わかった・・・」

「よろしい。」

そういうと、母さんは再び受話器のコードを反対の手でいじくりまわしながら

話の相手と話し始める。

「あ、ごめんね遅くなって。・・・うん・・・うん、直樹も来るってさ。・・・

うぅん、そんなことないよ。すっごく楽しみにしてるって。」

話の返答だけでも、聞いているとだいたい想像できる。

(誰も楽しみなんかじゃないってーの。)

と、心の中でさりげなく反抗。もちろん、声には絶対に出さないが。

「うん・・・うん、わかった。それでいいと思うよ。・・・うん。じゃあ、ま

た明日ね、カオちゃん。」

ガチャリ

(・・・・・・)

今、何かひっかかるような感覚が・・・

(・・・香織さん?)

 

 

 

[五月二日 午後一時三十七分 空港前駐車場]

次の日。

俺は車の助手席にいた。他の皆は空港のゲートの方へと行った。

『迎えはここまで』と俺なりに最大限の譲歩をして、何とかここで待つことを

許されたのだ。

あの後、俺は迎えに行くのを断固として拒否し続けた。何となく、行くのが恥

ずかしく思えたのだ。・・・香織さんに会うのは。

ってなわけで、俺はこうして車で待つことにしたのだ。

(・・・っ!?)

マズイ。思い出しただけで胸がドキドキしてくる。顔に手をやると、しっかり

と頬は熱くなっていた。多分、顔は真っ赤になっていることだろう。

(・・・情けない)

「おーい」

「うひゃあ!?」

突然、窓の外から呼びかける声。思わず、変な声をあげてしまう。

窓の外を見てみると−−−

「こんにちは、直樹君。」

「こ、こんにちは・・・」

香織さんが、そこにいた。

「もう、直樹君ったら・・・迎えに来てくれるっていうから楽しみにして来た

っていうのに・・・」

香織さん。本名は橘香織。俺の父さんの弟の奥さんということになる。歳は・・・

わからないが、多分三十くらいだろう。とても綺麗な人で、俺の・・・初恋の

人。

「えっ?迎えって・・・来てるじゃないですか。」

「ちゃんと空港のゲートの前でだよ。チーちゃん(俺の母さん、橘千裕のこと

だ。だけど、四十過ぎたオバサンにチーちゃんって・・・)に聞いたらここだ

っていうから、こうやって急いで来たの。」

「な、なんでですか。」

「そりゃあ、直樹君だけがあそこにいなくて心配したからだよ。こんな所にい

ないで、待っててくれればよかったのに・・・」

(誰のせいだよ、誰の。)香織さんに会うと、胸が鼓動を早め、変な気持ちに

なる。香織さんの事を考えると無性に寂しくなって、どうにかなりそうになる。

実際今も心臓はドキドキと鳴りっぱなしで、体のいたるところから湯気がでそ

うなくらいに熱くなっている。多分、その理由は−−−

(俺がまだ、香織さんのことを・・・)

こういう気持ちは初めてだった。多分、これが本当の恋心とでもいうのだろう。

 

だが、その想いをうちあかすこともないだろう。俺と香織さんとでは、歳が離

れすぎてるし、それに−−−

(香織さんは俺のことなんか全然想ってもないだろう。親戚だし・・・。それ

に、打ち明けたからって結局どうにも−−−)

「カオちゃ〜ん!」

「あっ、チーちゃん!」

ようやく皆がここに来たらしい。車のバックミラーから家の母さんが近づいて

くるのがみえる。

「カオちゃん、荷物重たいでしょ。車に積んじゃお。」

「あ、そうだったね。忘れてた。」

「直樹、後ろのトランクそこから開けて。」

「ヘイヘイ」

俺は運転席にあるトランクのボタンを押す。

「開けたぞ」

「サンキュー。んじゃ、さっさと積めますか。」

「うん、そうだね。」

「・・・・・・」

(なんでなんだろうなぁ・・・。別に未来にあう時にはなんとも感じないのに。・・・

それなのに何で、香織さんなんだろう?)

肉親に心を動かされ、自分の彼女にはそんなことがない。そんな、自分に対す

る情けなさと未来に対する申し訳なさで俺の頭は一杯だった。

 

 

[五月二日 午後七時十二分 食卓]

我が家の食卓は優雅なものだった。まぁ、毎年の事なんだが・・・

テーブルには所狭しとご馳走が並べられている。両方の家族を足してもこの量

は食べられるかどうかがわからないというほどのボリュームで、そのどれもが

豪華だった。

「さあ、冷めないうちに食べましょう。・・・できるだけたくさん食べてね?」

 

作ったのは母さんと香織さんのコンビ。大方、二人で作るのが楽しくなりすぎ

て、作りすぎてしまったのだろう。それにしても・・・作りすぎだ。どこかで

気付かなかったのだろうか?

みれば、隣にいる父さんは硬直していた。まぁ、無理もないが・・・

「しっかし」

気合は入ってるにしろ、これは・・・

「やりすぎなんじゃね?さすがに・・・」

と、声も出せない他のメンツに代わって、とりあえず言っておくべきであろう

事を代弁した。

「うぅっ・・・ごめんね?」

香織さんは悪かったと思っているらしい。が、家の母親ときたら

「別に謝らなくたっていいって、カオちゃん。どうせ明日の朝ごはんになるだ

けなんだから。」

と、反省の気持ちすらもっていないときた。全く、どんな神経をしてるんんだ

か。

「何か言った、直樹?」

「いいえ、別にぃ?」

「・・・白々しい。あんた来月の小遣い減給処分決定。」

「横暴だ!!」

「あら、まだ減らし足りないの?なんならなしって方向性も・・・」

「前言撤回します。謝ります。・・・勘弁してくださいっ!」

「うわぁ・・・直くん、マジ泣きだ・・・」

香織さんの同情の視線が突き刺さる。

「あぁ、こいつの高校はバイト禁止だから、必然的に小遣いが生命線なの。今

でも少ない小遣いをさらに薄っぺらくしたらどうなるか、こいつは何回も身を

もって体験しているから。」

「チーちゃん、それ鬼だよ・・・」

うぅ、その視線が今はとても痛い・・・。こんな、情けない姿を見ないでくれ。

 

「さ、こんな奴のことはほっといてさっさとご飯を食べちゃいましょ。」

そうして始まった夕食。俺はそれから随分後になって食べ始めたが、小遣いの

件のせいで味も何もわかったもんじゃなかった。

 

[五月三日 午前零時十一分 自室]

「・・・・・・」

ガチャ・・・・・・カタン・・・

「・・・ん、ん〜・・・」

・・・な、んだ・・・?今さっき・・・ドアの、音が・・・

「・・・」

目の前に・・・誰か・・・い、る・・・誰、だろう・・・

「・・・に・・・する・・・・・・・あなた・・・をし・・・・る。」

あ、何か・・・言ってる・・・何・・・

あぁ、駄目・・・また眠く・・・なって・・・き・・・・・・

「・・・・・・」

「・・・たくな・・・それ・・・・・・私に・・・を・・・・・・」

・・・・・・・・・

 

[五月三日 午前六時三分 キッチン]

「ふぁ〜っ、眠・・・」

目覚めはあまりよくなかった。何だかよくわからないが、眠くて眠くてしょう

がない。

昨日、ちゃんといつも通りに寝たはずなんだけどなぁ・・・

「どうしたの直くん。寝不足かな?」

「あぁ、おはようございます香織さん。」

香織さんは既に着替えを済ませ、食事の準備をしている最中だった。

「どうしたの。昨日、眠れなかったの?」

「いえ、なんか・・・夜中に何かあったような気がするんですけど・・・あれ?

なんだったかなぁ・・・」

「・・・駄目だよ、ちゃんと寝ないと?夜更かしも程々にね。」

「いや、だから夜中になにか一一一」

「あぁ、そうだ!」

いや、だから話を・・・

「直くんは朝食は和食と洋食、どっちがいいのかな?今から私がちゃちゃっと

作ってあげるからさ。」

「えっ,今から作るって・・・母さんはどうしたんですか?」

「それが昨日飲み過ぎたみたいで・・・まだおきてないの。」

「・・・はぁ」

思わず、ため息が出た。

「まったく、俺の親にして情けない・・・って、香織さんは飲まなかったんで

すか?」

「えぇ、私お酒飲めない方だし。それに、皆明日にはこうなるだろうって・・・

わかってたしね。」

「・・・少しは母さんも見習って欲しいです。いつもいきあたりばったりで・・・」

 

「あははっ、それわかるわかる。・・・それで、どっちにする。洋食かな、そ

れとも和食かな?」

「うーん、それじゃあ洋食で。俺も手伝いますよ。」

俺は母さんのエプロンを借りて支度する。

「えっ、そんな・・・。いいよ、休んでても?できたら呼びにいってあげるか

ら。」

「いいんですよ。好きでやろうとしていることです。それに・・・母さんの尻

拭いには慣れてますから。」

「フフッ・・・じゃあ、お願いしようかな?」

「はいっ、お願いされちゃってください!」

朝食ができた頃にも居間に来るものは誰もいなくて、「起こすのかわいそうだ

から」という理由で俺と香織さんは二人っきりで朝食を取ることになった。

こうして、俺は香織さんとの役得な朝を思う存分できたのだった。

 

[五月三日 午前八時五分 居間]

「どわーっ、寝過ごしたぁーっ!!」

ドタドタと、慌ただしい足音が階段の方から聞こえた。

・・・ちっ、もう来てしまった。

「ごめーん、カオちゃん・・・って、なにやってんの二人で?」

「・・・見てわからない?コーヒー飲んでるの。」

まったく・・・せっかく香織さんがいれてくれたコーヒーで優雅にブレイクと

洒落込んでたというのにここで母さんとは・・・コーヒーが不味くなってしま

う。

「あ、チーちゃんおはよう。ごめんね。あまりに気持ち良さそうに寝てたから、

起こしづらくって。」

「こっちこそゴメンね・・・んで、この料理は?」

「あぁ、これ?直くんと一緒に作ったんだよ。」

「母さんいなかったから、俺が代わりに手伝ったんだ。」

「でも直くん料理うまいねー。男の子って、皆料理下手なのかと思ってたよ。」

 

「当たり前です。母さんが寝坊するなんてこと、今日が初めてというわけじゃ

ないんですから。」

そう、初めてじゃない。むしろ、日常茶飯事なくらいだ。大抵は起きているの

だが、それでもよく起きるのを忘れてしまっている。そうなると料理を作れる

ものが誰もいなくなってしまう。というわけで、俺自身が作るはめになったの

だ。

「俺も当初は失敗ばかりで・・・よく、授業中に料理本みて学んでたものです。」

 

「あはは、授業中に料理本・・・ずいぶんと、異様な光景だねぇ・・・」

確かに。俺が初めて本をもって行った時、クラスの皆がすごく驚いていたっけ。

 

「そういえば先生たちが泣いて誉めてましたね。『偉いね、一人で・・・』と

か。」

「・・・同情されてるんだと思うよ、それ。」

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

っ!?う、後ろから殺気が!?

「フフフ・・・私がいる前でそんな話するんだぁ、直樹は。へぇ・・・」

「あ・・・あ、あの・・・これは、ですね?」

や、やばい。ここは、香織さんにフォローを・・・

「・・・さ、さぁて。私は洗い片付けでもしておこうかな?残りの皆の分のご

飯も作らないといけないし〜・・・」

「あっ、香織さんっ!?」

に、逃げられた・・・

「じ、じゃあ俺も香織さんの手伝いに・・・」

「あ、直くんは来なくていいからっ!これくらい、私一人でできるからっ!・・・

ほら、チーちゃんが話したいことがあるみたいだよ?」

その上売られたっ!?

「さて・・・」

「ひっ!?」

「覚悟は、いいのかしら?」

「いいいやあのそのぉ!」

「まぁ、できてなくてもやるんだけど・・・ねっ!!!」

ガゴッ!!

「!・!・!・!」

あっ、走馬灯・・・

バタン・・・

そのまま、俺の意識は飛んでいった・・・

 

 

[五月三日 午後一時 居間]

「・・・ってて!いってぇ・・・」

あまりの痛さに一気に脳が覚醒していく。

「あれ?」

気が付くと、俺はソファの上に寝かされていることに気づいた。

俺、まだ生きてたんだ・・・そう、純粋に当たり前のことに感動できた

「いてっ!?」

頭に手をやる。・・・どうやら、コブになってるようだった。

「いてて・・・何か、冷やすものを」

俺は右手でコブを押さえながら、キッチンへと向かった。

 

[五月三日 午後一時三分 キッチン]

適当にビニール袋に氷を詰めて、コブの場所にあてる。

・・・冷たくて、気持ちいい。

それにしても、何で誰もいないんだ?俺一人置いて皆でどこかにでも行ったん

だんだろうか・・・

「あっ、頭大丈夫だった?」

「えっ?」

振り返ると香織さんがそこにいた。

「ごめんね?こんなに強く叩かれるとは思わなくて・・・」

「もう、酷いですよ。俺だけこんな仕打ち・・・って、他の人達は?」

「あぁ、皆ここの観光に行ったよ?私はお留守番。さすがにそれ、私の責任で

もあるしね・・・」

香織さんの手が俺のコブの部分を撫でてくれる。

「痛かったでしょ?気絶しちゃうほどだもんね・・・」

「・・・・・・」

うぅ、なんか恥ずかしい・・・

「どうしたの?顔、赤くなってる・・・まさかそんなに痛かったの!?」

「いいえちがいますこれはそんなことではなくてですねあのっ!」

うわぁ、なんか意識しないようにすればするほどに意識してしまう。

すぐ近くに香織さんの顔がある。家には俺と香織さん以外誰もいない。そう考

えただけで、自然と体の温度も上昇していくようだった。

「あっ、そうだ!何かお詫びをしないとね。直くん、何がいい?」

「え、えぇっ!?」

何っていわれても、その・・・

「い、いきなり言われても・・・」

「うーん、それもそうだね・・・あっ!」

香織さんは思いついたかのように手をポンッと打ち、

「#######」

と、なにか呟いた。すると一一一

「えっ・・・」

急に筋肉がガクリと抜け落ちたみたいに、体の力が入らなくなった。

そのまま、ソファに倒れ込む。

「えっ?どうして・・・」

「大丈夫かな、直くん?」

「あっ、すいません。今起き上がりますんで・・・あ、あれ?」

まるで力の入れ方を体が忘れてしまったかのように、全く言うことを聞かない。

 

「・・・フフッ」

「あれ?なんか、力が入らない・・・」

ふと、目の前にいる香織さんを見る。

香織さんは俺の状況を全く動じることなく見つめていた。まるで、俺が困惑し

ているのを楽しんでいるかのように・・・

「大丈夫かな、直くん?」

「あ、あの・・・香織さん?」

「ん?」

「俺に、何かしました?」

「何かしたように、見えた?」

「い、いえ・・・」

わからない。何でこんな風になったんだろう。

俺は、引き続き動こうと頑張る。・・・が、結果は変わらなかった。

「ねぇ、直くん。」

「・・・は、はい?」

「##################」

「・・・・・・!!?」

あれっ、こ、今度は声がっ!?

「・・・!・・・・・・!?」

口からは『ムーッ!ムーッ!?』という、声か音かもわからないようなものし

か出て来ない。

「フフフ・・・直くん、本当にどうしたのかな?」

「・・・!・・・・・・・・・!」

必死で訴える。だが、香織さんには届きそうにない。

「まぁ、私が口を塞いでしまってるから喋れないんだけどね。」

えっ・・・今、何て・・・

「どうかなぁ、感覚を一つずつ潰されていかれる心境は?」

(な、なんだって!?)

どうしてとか、どうやってとか、そういった疑問が頭の中で次々に生まれてく

る。が、それを外に表現することができない。

「・・・・・・」

「『どうしてこんなことを?』って顔してる。そうだよねぇ、いきなりこんな

ことされたら誰だってそう思うよねー?」

香織さんの腕が俺の頬を撫でる。

「だから言ったでしょ?お詫び、だって・・・んっ・・・」

(っ!?)

突然、のことだった。

香織さんの唇が、俺の唇の上を覆いかぶせてる。

(こ、これって・・・キ、キス・・・むぅっ!?)

香織さんが舌をつきだしてきた。そして、お互いの繋がりを求めるように口の

中を貪っていく。

「・・・んっ・・・あむっ・・・んん〜っ・・・」

「・・・んぁ・・・・・・んぅ・・・んっ、んっ・・・」

自然と恥ずかしい声が漏れる。

抵抗することもできない。完全に、されるが、まま・・・だ・・・

(あ、頭の中が・・・真っ白に・・・)

「・・・んっ・・・ぷあっ」

香織さんから舌が引き抜かれた。涎が銀の糸となって、お互いの口と口を結ん

でいた。

「はぁ・・・はぁ・・・」

「あらあら、そんなに息を荒くして・・・息を止めてたのかな?」

「もしかしてファーストキスだった、今の?」

「・・・・・・」

カアッ、と一気に頬が熱くなる。

「安心していいよ、それ初めてじゃないから。直くんのファーストキスは、ずー

っと前に私が奪ってあげているから。」

(えっ・・・嘘だろ?)

必死で記憶をたぐいよせる。だがそんな記憶、いくら探しても出てこない。

「う〜ん・・・直くん、催眠術って知ってるかな?」

(催眠術?)

「昔はそういうの好きだったから、自分なりに勉強したり友達に実験してみた

りしてたの。おかげでだいぶうまくなったんだ。」

「実はね・・・あなたにもかけてるのよ、催眠術。」

「・・・!」

(じ、じゃあ・・・俺のこの状態も、香織さんの仕業なのか?)

「しかも強力なやつを何重にね。自分の意志でも抜け出せないようにね・・・」

 

(な、なんで・・・)

ますますわからなくなる。どうして香織さんが俺にそういうことをしてくるの

だろうか。そのことだけがグルグルと頭を駆け巡る。

「ここまで仕立てるのに苦労したよ、本当。なんせ半端ない暗示をすりこまな

きゃならなかったんだから。毎年夜中に暗示をかけにいくのは本当に大変だっ

たよ。」

(・・・そういえば昨日の夜、誰か来たのかなと思ったけど・・・あれが香織

さんだっていうのか!?)

「そうよ〜。毎年毎年直くんが寝静まった頃を見計らって暗示をかけにい

ったよ。その度、いろいろと悪戯もさせてもらったけどね。キスもその一つ。」

 

そういうと、香織さんは俺の方へと腕を伸ばしてくる。そしてそのまま、ズボ

ン越しに股間を撫でてきた。

(な、なにをっ・・・!?)

「あれっ、もうズボンがパンパンに膨れ上がってる。・・・さっきのキスで興

奮してたのかな?」

「・・・・・・」

(は、恥ずかしい・・・)

手で隠すことも、香織さんを突き放すことも何もできずにただ見られるのを恥

ずかしそうに我慢するので精一杯だった。

「・・・ふふ〜ん。少し、焦らしてみようかな?」

そういうと、香織さんはズボン越しに俺のモノを撫で始めた。

「・・・んっ、ふっ・・・ああっ!?・・・」

時に優しく、時に激しく撫でる指先は、普段自分でするよりも何倍も何倍も気

持ちよかった。

「フフッ、そんなに喘いじゃうなんて・・・女の子みたい。」

「・・・ふ〜ん・・・」

香織さんがほほ笑んだ。すごくいやらしく、妖艶に・・・

「よし、じゃあ直くんをちょっと女の子にしてあげよう。」

「##############」

(あっ・・・体が、何か・・・変っ!?)

「######」

(熱い・・・体が、熱いっ・・・何か体の奥から湧きでてくるような・・・)

「#####################」

(あっ、あっ・・・来るっ、な、何か来るぅっ!!)

「ああっ!!」

「はい、どうかな。女の子になった感想は。」

「あれ、声が・・・」

「ああ、声の暗示は外しておいたの。そっちの方が、そそられそうだし。」

「なっ、何で僕にこんなことを・・・って、ええっ!?」

今確かに俺、『僕』って・・・

「あははっ、さっそく変化してる。『僕』だって・・・本当に、かかりやすい

んだから・・・」

「うっ・・・な、なんで僕・・・お、俺にこんなことするんですかっ!この体

も全部元に戻してください。そして二度とこんなことしないでくださいっ!!」

 

「う〜ん、それはできない相談だなぁ・・・」

香織さんは指をパチンと鳴らした。すると一一一

「あ、あうっ・・・な、体が・・・」

(今、体の奥で『ズクン』って・・・)

経験したこともない感覚に、勝手に反応する僕の体。

「あっ・・・あ、あ、あ・・・な、何これぇ・・・」

「今ねぇ、あなたの体の中にね、疑似的に子宮を作ってみたの。私がこうやっ

て指を鳴らす度に・・・」

パチンッ

「ああっ!?や、やめ・・・」

「あなたの中の子宮が刺激されて、快感を感じるようになるの。」

いつの間にか香織さんの呼ぶ声が『あなた』へと変わっていたが、今の僕には

気にするだけの余裕はなかった。

体の内側からの快楽。男として感じたことのないそれは、どんなに体をよじっ

ても逃れようがなく、このわき出てくるような感覚は自分が中から狂ってしま

いそうなくらいに気持ちがよかった。

ズクン・・・ジュク、ジュクン・・・

「うあっ、あぁ・・・ひっ、やぁ!・・・うぅっ・・・」

断続的に、体の中に快楽が響き渡る。その度に僕は身をよじり、喘ぎ声をあげ

ながらも耐え続けた。

「ふふっ、涎まで垂らしちゃって・・・かわいい。」

もはや涎など、気にしてる場合ではない。そうこうしてる内にも、この刺激は

確実に僕の意識を奪っていっているのだから・・・

「さあ、もっと追い詰めてあげるからね。」

「そ、そんな・・・ちょっとまっ・・・あぐっ!?」

さらに強い刺激。快感に変換され、全身へと駆け巡り僕の意識を根こそぎ奪い

取ろうとする。間隔もだんだんと早くなっていく。

「そ、そんなに・・・あっ、くぅ・・・さ、されたら・・・うぁっ・・・ぼ、

僕ぅ・・・」

足はつるくらいにピンと伸ばされている。全身が快楽でできているかの感覚に、

体が震える。もう、頭の中は真っ白だ。

「・・・う、ぐっ・・・あぁっ・・・な、なにか来る!?・・・な、なにっ・・・

なんなのこれぇっ!?」

「ああっ、マズイ・・・来る、来る来る来る・・・いっ、ああああああああっ!!!」

 

体がこれでもかというくらいに伸ばされる。そして、全身が痙攣しだした。

「あっ・・・ああ・・・」

トロンとした感覚。ヒクヒクと足がぴくついてるのを感じるが、それ以上に全

身がだるく、そして

(気持ちいい・・・)

射精したのかと思って下を見るが、精液は飛び散ってなかった。というよりか、

あれはなんだかオナニーとは違った感じ・・・の、ような気がした。・・・多

分。

「それはね、あなたが女の子としてイッたからだよ。」

横を見ると、香織さんが僕を見てた。

「でもまさかこんなに早くイクなんて思わなかったよ。直くん、女性としての

才能があるのかもね?」

(それはどんな才能ですか・・・)

なんか今は全てがどうでもよくて、香織さんにいろいろ問い詰めることはでき

なかった。体が、その前にこの感覚を一秒でも長く味わうことを望んでいたか

らだった。

「僕・・・女の子に・・・なっちゃったんですか?」

「ううん。あくまで『感覚』だけ。ちゃんとあなたにはオチンチンもついてる

から、安心して。・・・んっ、チュ・・・」

「あむっ・・・」

再び香織さんからのキス。抵抗する気もなくなってる僕は、ありのままを受け

入れた。

自ら、舌を突き出していく。

「んっ・・・んんっ・・・」

甘えるように香織さんの舌を欲する僕。香織さんは一瞬驚いたようだったが、

にっこりと笑った後、

「んっ・・・あむっ、チュ・・・レロレロ・・・んっ、んっ・・・チュ、パッ・・・」

 

と、僕を受け入れて激しく舌を絡ませてきた。

(あぁ、香織さん・・・香織さん・・・)

必死に香織さんに甘える僕。そんな僕に、香織さんがゆっくりと手を上げてい

るのは、目に入らなかった。

パチンッ

「あっ・・・」

バタン・・・

急に、意識が切れた・・・

 

「ふぅ・・・とりあえず、ここまでにしておこうかな?」

「これ以上やると、記憶の操作が面倒になるし・・・」

「・・・もう、この操作も限界かな・・・記憶なんて、容易に書き換えられる

ものじゃないもの。多分、これで最後・・・」

「『なかったことにする』ことができない・・・か。でも、直くんかわいいか

らなぁ。何かもったいないしなぁ。」

「もう、次からは悪戯じゃ済まされないんだよねぇ・・・」

「・・・・・・」

「まぁ、いいか。さてと、まずは乱れた服を整えてないと・・・」

 

[五月三日 午後三時五十七分 居間]

「んっ・・・ふあぁぁ・・・ねむ・・・」

「あ、おはよう直くん。」

「あ、おはようございます、香織さん。・・・あれ、俺何を・・・」

「ああ、チーちゃんに殴られてからずーっと寝てたよ。起こすのもかわいそう

だから、そっとしておいたんだけど・・・」

「そうですか、ありがとうございます。おかげで痛みも全然ないみたいです。」

 

「そう、それはよかった。・・・ほら、もう多分チーちゃんたち帰って来る頃

だろうし、私これから夕食の買い物にいってくるけど?」

「あっ、じゃあ俺も行きます。荷物持ちくらいならできますんで。」

「そう?じゃあ、一緒に来てもらえるかなぁ・・・」

「はいっ、よろこんで!」

「・・・ふふっ」

「あ、あれ。俺何かおかしなことを?」

「ううん、何でもない。・・・何でもないよ。」




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