女性向ボーイズラブ催眠小説 ヒーロー派遣!不思議なバーで夢のタイムトラベル〜甘いカクテルのように危険な恋を・・ ”第2章 〜 過去への旅立ち”



「ヒーロー派遣!不思議なバーで夢のタイムトラベル〜甘いカクテルのように危険な恋を・・」


第2章 〜 過去への旅立ち

「ジゴマ」というBARはショット・バーでカウンターにはバーテンダーが一人いる。

恐らくこの店のマスターだろう。

店内は意外にも広く木造でレトロな造りだがそこが良い雰囲気を醸し出していた。

家具も調度もレトロで産業革命時代の洋式のものが置かれ、店内で奏でられている音楽は蓄音機から流れている。

ちょっとモダンな骨董品屋のようなバーだった。

まるで僕は田舎者のようにもの珍しげに店内を見回していると、カウンターのマスターが
近づき椅子をひいてくれ席を勧めた。

そして、誘われるがままに席に着くと「何にいたしましょうか?」と清潔なタオルを渡してくれ、机にコースターを敷き暖かいおしぼりとメニュー表を置いてくれた。

僕は先程の雨でまるで濡れ鼠・・・いやドブ鼠のようにずぶ濡れで汚かった。


自分の姿にハタと気付き僕は急に恥ずかしくなってオロオロしながら

「あ・・・!すみません。こんなにお店の中を汚してしまって・・!
あの・・!!また出直します!!」

と逃げるように席を立とうとすると、

「いえ・・お客様。いいんですよ。この雨だと誰だって仕方がないですよ。
どうかお気にされずに・・。
もしよろしければ、こんな天気の日は暇なので良かったらせめて雨がやむまでゆっくりしていって下さいませんか?」

と引き止められた。

「はぁ・・?」と恐縮しながら浮かせた腰を下ろしメニュー表を広げた。

濡れた頭や体をタオルで拭きながら僕は考えた・・。

僕の所持金は5000円だ。

だいたい、バーというところは店によってはその価格がまちまちだ。

メニュー表に書かれているドリンクを頼んでも清算時はそれで済まずカウンター料金と加算して取る店もある。

喫茶店などのようにメニュー表だけの料金ですまない所が多い。

この店の雰囲気からすると間違いなくカウンター料金はかかるだろう。

ただ、問題はカウンター料金がいくらかかるかだ・・。

メニューと合わせて5000円超えだったら僕には払えない・・。

困ったな?とうんうん悩みながらメニュー表をみていると


突然とてもキレイなビロードのような毛をした黒猫がカウンターから「みゃ〜〜お!」と出てきて僕の足にまとわりついた。首には首輪と鈴をつけている。

マスターは半ば呆れるようにこの猫を見てため息をつき
「あぁ・・。出てしまいましたか・・。すみません。本当はこういう飲食店に動物がいると色々マズイんですよね。お客様・・・お願いがあるのですが宜しいでしょうか?今回は見なかった事にして下さると嬉しいのですが?
そのかわり初回無料という事で出血大サービス!今夜は御代は結構です」

と言われた。

これはひょっとして猫が僕の為に福を招いたのか!?

僕は足元でじゃれている黒い招き猫に感謝し、ようやく心穏やかにドリンクを注文した。

いつも僕はビール・・それも170円で500ミリ入っているコンビニ・ブランドの安発泡酒を
飲んでいたので、今日は思い切ってビールを注文した。

グラスに注がれた黄金色のビールは高級感があり、とても冷えていてグラスを傾けると喉にス〜〜と浸透して美味(うま)かった。

地ビールらしい。

こんな美味いビールは初めてだ!

BARのカウンターで飲むビールは格別だった。

あんまり無料で飲むのも居心地が悪いので二杯目以降は金を払って注文しようとしたが、マスターは受け取らなかった。

次に出してくれたのがカクテルだった。

これもしばらく口にしてないのでチビチビ舌で楽しむようにゆっくりと堪能した。

「テキーラ・サンライズ」だ・・。
朝焼けの空をイメージしたカクテルだが、僕はなぜか夕日をイメージする。
夜空が広がる前の空をイメージするのは僕だけだろうか?

昔は撮影終了たんびに連日打ち上げで居酒屋にいっていた。

だからこれから飲むぞって時に頼んでいたのでそんなイメージがあるんだろう。

アメリカの洋楽バンド「イーグルス」で確か・・このカクテルの歌があったはず。

俳優養成所に通っていた頃、飲み屋でアルバイトをしていた時の客で彼女に良いとこをみせようと必死になって付け焼刃のうんちくを披露していた男が言ってたっけ?

見た目も美しく飲みやすく作り易いカクテルなので僕も昔はよく自宅でも作っていた。

テキーラをオレンジジュースで割り、最後の仕上げに長いスプーンにグレナデンという赤いシロップをしたたらせるとそれを伝ってグラスの底にいき二層になる。

赤とオレンジのコントラストは美しくまさに朝焼けのようだ。

今の僕はまだ朝はきて欲しくないが・・・。

夜は長い・・・・!今夜は飲むぞ〜〜!

側に人がいるとこんなにも心地がいいものか。

その時オーブントースターの音が鳴った。

あぁ・・そういえば、食事も注文できるんだっけ?

確か軽食でスパゲッティーやピザトーストを出すバーもある。

しかし、この店にはそんなものはなかったような?

せいぜいあるとしたらオードブルかチーズか乾き物だけだったはず。


カウンターの僕の目の前にコトリ・・と皿が置かれる。
熱々のトーストだ。
ちょっと変わっていてトーストにきんぴらごぼう がのっていてマヨネーズがかかっていた。

「常連さんだけの隠しメニューなんですよ。ですが、賄い食なのでお口に合うか分かりませんが・・よかったらどうぞ」とマスターはイタズラっぽくウインクして唇に指を当てた。

そういえば、昨日から僕は何も口にしていない。

お腹がグ〜グ〜なり、僕はこの熱々のトーストを一気に平らげた。

はじめて食べたがきんぴらごぼう とトーストは絶妙に合う。
またマヨネーズとの相性が抜群で和風サンドイッチみたいな感じでさっぱりして美味しい。
コンビニ弁当やジャンクフードばかりの僕の胃に優しい気がする。

これで味噌汁があったら最高かもしれない・・。


大雑把だか美味い男の一品料理に僕は舌鼓し、お腹もいっぱいになりようやく僕は一心地ついた。

そこで僕はこの親切なマスターをコッソリ観察した。


短髪の黒髪をキレイに櫛でなでつけ、オールバックにしている。
一糸乱れずタキシードを着ているのでスキがない。
ちなみに言葉は丁寧だがそれが逆に壁を作ってるような気がする。
アルセーヌ・ルパンを彷彿させるような19世紀に上流社会で流行した古風なモノクル(片眼鏡)をかけている。
眼鏡までレトロで店の雰囲気にピッタリあっている。
水商売をしてるようにはみえず、インテリ特有の威圧感があり高級官僚か弁護士のような雰囲気だ。長身でスリムだが意外にも肉体美?
袖をまくるとたくましい腕がのぞいた。
静かな物腰で派手ではないけれどかなりの美貌だ。一見言葉は丁寧で優しそうだが時折眼鏡の奥の目は冷たく光り他人を寄せ付けない雰囲気がある。
気品漂うって言葉がピッタリで昔だったらこれが貴族かな?って感じの紳士にみえる。

非常にミステリアスで・・・・う〜〜ん気になる・・・・。。

気になるって事は恋愛のはじまりというのを思い出し急いでこの妄想を引っ込めた。

いくら優しくされたからといって僕は男は趣味じゃない。


店内には19世紀末に制作されたという珍しいピアノも置いてあり、時々マスターは弾くそうだ。

こんな世界でも数台とない楽器を所有し演奏できるなんていったい何者なんだろう?。・・謎だ。

僕の姉がピアノを習っていたのもあって僕も子供の頃習っていたがそれでも初めてみた。
この店にあるのは「スクエア・ピアノ」。

モダンピアノが発明される前のピアノだ。

調度机としても美しい。

音色も普通のピアノとは随分違う。僕のうちにあったのはごくありふれたレッスン用のアップライト・ピアノだが。


「フフフ・・珍しいですか?」

マスターは僕の心を読んだかのように尋ねた。

僕は不躾にみてたのかもしれない。

恥ずかしくなり頬を赤らめてうつむくと、

「あ〜、そういえば・・珍しいといえば・・この店には世にも珍しいカクテルをお客様にだすんですよ。ただのカクテルではありません。
それを飲むと願い事が叶い自分の望む過去に戻りやりなおす事ができるんですよ」
と言った。


僕はその言葉に興味を持った。

今の僕は不幸だ・・・。

人生をもしやりなおせられるのならあの時に戻りたい・・・・!!!

もしかして単なるお遊びで言ったのかもしれない!

だけど僕はこのマスターの言葉にすがるような気持ちでこのカクテルを注文した。

ほんの一時の夢でもいいから懇願するように・・。

僕はポケットの中のなけなしの全財産を出した。

僕の派遣のバイトもしょっちゅうあるわけでなく次はいつ来るか分からなかったのでこのお金
を本当は全て出してしまうと困るのだが今はそんな事ど〜でもよかった。

僕のあまりの気迫にマスターは一瞬驚いたようだったが、すぐに「かしこまりました」言い
棚の酒を調合してシェーカーをふった。

僕の前には今まで見た事がない世にも美しい宝石のようなカクテルが目の前に置かれた。

「これはアブサンを使用したカクテルです。
レシピは・・企業秘密です。フフフ・・。
アブサンは魅惑の禁断のお酒とも言われ一時は禁止された時代もあるんですよ.
まぁ、といっても当時は禁酒法の時代だったのかもしれませんね?
あ〜、そうそう、ちょっとした伝説があってアブサンには緑の妖精が住んでいるとかも言われてますよね・・・。」

マスターの言葉を聞きながら僕はこの不思議なカクテルを飲み干した。

僕は今日は随分酒を飲んだ。

酔いのせいか・・それとも・・この不思議なカクテルに酔ったのか分からない・・・。

店内にはお香の香がしていた。僕の前にはアロマキャンドルが透明の美しいグラスに置かれ
その神秘的な灯はゆれていた。カウンターはいつの間にかキャンドルでいっぱいだった・・。

マスターの唇が動いてるような気がする・・。

何と言っているんだろう・・・?


あぁ・・・もう心配しなくていいよ・・だ!

大丈夫・・その身をすべてゆだねなさい・・・・。

君は今から過去に戻る・・・。

人生で一番輝いていた頃・・・やり直しがきく・・高校生の頃に戻りましょう・・。

君は俳優の道を選ぶ前の・・・ごくごく普通の男子高校生です・・。

肩の力を抜いて・・・・。

楽にしてください・・・・・。

そう・・・・とてもいいコだね・・・・。

息を吸って・・・・はいて・・・・・・・・・・・・・・

おやおや・・・?目がトロンとしてますよ?

フフフ・・・もう・・もちそうにないですね・・・・・

では・・・・いってらっしゃいませ・・・・・・・・よい旅を・・・・。


夢か真かぼ〜となった僕の頭が生み出した言葉か分からないけど頭の中に響く・・。

カウンターの中のマスターの丹精な顔がだんだんゆがんでいって・・いや・・部屋全体が
空間のひずみが発生し・・ゆがんでいき・・・暗転した・・・。

音もすべてない真っ暗闇に僕は落ちていった・・。





























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