成人向け催眠小説 hypnoMiko01





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―闇。
  遠くから、
   音が聞こえてくる。車輪の、音。


  タタン...タタンタタン...
 タタン...タタンタタン...

この一定のリズムは、体に伝わり、耳に伝わり、深いところへといざなってゆく。
 小さな思考は下の温かい、ソファーのようなイスに吸い込まれていく。





然し、ふと、どこからか甘い匂い。ほのかな香り。
あまい果実のように、惹きつけたものを逃さない。

そのもとを確かめたくなる欲求に駆られ、眼が開いていく。
すると、意識が少々明らむにつれて、左肩に少しの重さを感ずる。
左のほうに顔を向けた途端、ふわりと口元に掛かってきたのは、
 髪。
少女のふわりとつややかな長い髪が、すこしかかってきている。
そして、見知らぬ少女を見やって...


  (....っ、巫女さん?)

驚くも体は彼女のもたれる感覚に任せているよりほかはない。動くことはできない。
もたれられているのか、もたれているのか。
なんとも言えぬ思いが、わく。



彼女は20より少し若い位なのであろうか。
髪は艶やかに水のごとく柔らかく、長く、和紙の髪留めがしてある。
しかも容姿端麗であるとすぐに分かるほどのもの。

この白衣(しらぎぬ)の内の神秘に思いを馳せ...



 『う〜...ん  ...むにゃ...』



復た驚き、体がビクリとなるが、
彼女は冬眠するかのごとく、さらにくっついてきて寝る。
少し胸を押し付ける形。



慌てて、気を紛らわせようと、周りをみる。
電車の車内。
しかし、何かが異なる。
人の気がない。不思議な静寂。
外は、トンネルのようであるが、タタンタタンと柔らかな音が告げられているだけである。
  ―昼なのか、夜なのか。―
この高揚と不安の入り混じる世界。

この異様な空間で、彼女の、感覚と、フワリとした良い匂いが頭を支配してくる。
  ―ここは...どこなのか。―
混乱するにつれて、頭や体が空間に、彼女と二人で浮いてくる。
ただ、彼女の質感と重みのみがある。




 『ん....んぅ〜』


彼女が肩から離れる。名残惜しさを理性にてかき消す。


 『ん〜良く寝た。....ふぅ。...ん』

じーっと、短い時間だが、見つめ合ってしまう。いや、長かったのか。
彼女はくるりとこちらに向き直った。

 『あ、お肩、お借りしてました。とても気持ちが良かったです、ありがとう。』

彼女は寝ぼける様もなく上品に微笑み、つつと立ち上がり、巫女さんらしい15°位の礼をする。
思わず、礼を返してしまう。



 『あ、そんなにかしこまらなくてもいいですよ。
 ふふ、ようこそお参りくださいました。
 初めまして、私、巫女の、さくら、と申します。』

 『え?ここですか?ここは、電車の中。』

疑問も浮かぶが、彼女を前にして、消え薄れる。

 『細かいことはお気になさらずに。ここは、私の演舞列車、とでも今は言っておきましょう。
 まあ、こちらにいらしたのも何かのご縁。
 ただいまから、お肩をお借りした、お礼をいたします。』


いつ着替えたのか、彼女は千早をまとい、簡素な演舞の格好となっていた。
幽雅な所作で、舞い始める。
どこからか曲が流れる。

ゆったりとした、曲、舞。
世界には二人。
つかむところを無くした感覚は、薄れる、薄れる。

  .
  .
  .
  .
  .

 『どう....でした?なんだかぼーっとしてましたけれど。』

いつの間にかまた左隣にいる彼女。もとの白衣になっている。
再びのやわらかい彼女の感覚に、少し安堵する、感触。
世界につなぎとめている、唯一の、感触。

 
 『ああ、気になさらないで。巫女の舞は神様が宿ると言われますし、
 ボーっとするのが当たり前で、ボーっとしてくるのが正しいんですよ。』

澄んだ声。まるで天から語りかけてくる。

 『そして、ボーっとするのは神様のお話を聞く準備になるんです。
 そう、もっとボーっとしていくと、声が聞こえてくるでしょう?
 ほら、眼を閉じて...』

抗えない、良い匂い。


 『そう、目を閉じると、音と香りと感覚だけの世界。
 でも安心して....私が手を握っていてあげるから...

 ほら、心を落ち着かせよう...?うん、深呼吸すれば落ち着くよね。深呼吸...。
 そうそう、いい感じ。心音が、トクン..トクン..と、落ち着いてきてる。
 その音を聞いているともっと落ち着いてくるね...

 ねぇ、もっと私に体を預けて...うん、力を抜いて....
 もっともたれていいんだよ...そうすると全身の力が抜ける...』


 『それじゃあ...意識をこの曲に合わせて...?聞こえてきた?
 そう、私が舞っていた時の曲。この曲は頭を空っぽにするための曲なの。
 神様とお話しするのが舞だから、頭を空っぽにするの。体のすべての力を抜くの。
 空っぽになっていたほうがいいでしょ?そう、だから頭がボーっとしてくるの。
 それにもっとボーっとしたほうが、気持ちよくなってくるでしょ?
 私も、舞を舞う時はただ何も考えないでこの曲を聞いているのよ。
 そうすればもっと声が身体に染みこんでいくから...』

 『ほら、なんだかボーっとして、頭がトローンとして、
 身体からもすっかり力が抜けてて、気持ちがいいでしょう?
 今のあなたの、ボーっとして、気持ちのいいその状態は、トランス状態って言うの。
 そう、フワフワしてて気持ちのいいトランス状態。』


 『それじゃあ、私が3つ数えると、頭フワ〜っとしたまま目を開けれるよ。
 イチ、ニ、サン。』
  パンッ

 『ふふ、おはようございます。どうですか?ぼーっとして何も考えられないような、
 気持ちのいい感じですね。
 ぼーっとしたまま、目を開けておいてね。』

 『いま、あなたが入っていたところ、フワフワしてたでしょ?
 うん、でもまだ浅いところなの。トランスには、浅い深いがあって、
 もっと深く入ると、もっと気持ちよくなれるんだよ。
 だから、これからいっしょに深く、入りましょう。』



 『じゃ、また目を閉じて。数を数えおろすとまたあの世界に入っていくよ。
 ご、よん、さん、に、いち、ぜろ。』
  パチンッ

 『なんだかフワフワしていたいい気持ち...。
 スーっと、滑り台を滑っていくように...ス〜〜っと深くまで...』
 『そして、これから、何度も何度も、トランスしたり、起きたり。
 何度も何度も繰り返すの。
 トランスすればするほど、より深く深ーく入っていく...
 いーい気持ち。』


 『さあ、もっとそこに居たいところだけど、
 起こしちゃうね。イチ、ニ、サン。』
  パンッ
 『起きて。残念。起こしちゃった。もっと深く入っていたかったよね。
 じゃあ、眼を、閉じて....
 さん、に、いち、ぜろ。』
  パチンッ

 『そう、入って行く時の快感。忘れないで.......。

 イチ、ニ、サン。』
  パンッ
 『ふふ、じらしちゃった。
 ごめんね。もっと入りたいよね。浸かっていたかったよね。
 だから今度は起こされる前にどんどん入っていこう...
 眼を閉じて....私の匂いも感じて...
 さん、に、いち、ぜろ。』
  パチンッ

 『快感。気持ちがいい。脳がとろ〜り溶けていく...深ーいところに...自分から深ーいところに...』
  パンッ
 『目を開けて。じゃ、今度は、眼を開けたまま。
 そう、気持ちがいいと眼を開けたまま入っていっちゃうよ...
 ほんっとうに眼を開けたままだと気持ちがいいからね。ほら。』
  パチン。

   .
   .
   .

  パンッ
 『起きて。いま、何が起きたかわかる?わからなくていいよ。気持ちがいいだけだから。
 ほら。』
  パチンッ

   .
   .

  パンッ
 『起きて。今度は、眼がひっくり返っちゃうよ。そう、
 白目になっちゃう。』
  パチンッ
 『ほら、良い気持ち。真っ白になる。頭はもうドロドロ。どんどん落ちる。
 まぶたがピクピクする感じが気持ちいいよね。』
  
  パンッ
 『起きて。何回目かな...わかんないね。ただ、気持ちいい。
 私の声に従えば気持ちいいよね。そう、ただ私の言うとおりにして?』





 『ねぇ、それじゃあ、私の眼を...見て...。
 そう、私の眼を見ているだけで...入りそうになるけど...

 ガマン。まだ入っちゃダメ。
 入っちゃう時はストーンと入っちゃうけど、今はガマン。
 ほら、頑張って眼を開けていて。我慢すればするほど、入りたくなって...
 体中がぴくぴくして気持ちがいいけど.......
 ガマンだよ...そう、ガマン。....まぶたが...重くなってくるけど......
 




 まだ。まだ入れない。


 ほら、ご、よん、さん、に.......
 


 



 ...まだ。まだ入れないよ。ほーら、しっかり目を開けて。

 ほら、何も考えないで私の目を見て...私のことだけを考えて...私の声だけを聞いて...
 私の姿を目にやきつけて...私の匂いを感じて...私の匂いを脳に焼き付けて...

 そうすると、なんだかあなたの...ふふ、そこがじんじん、じんじんしてくる。
 この世界には私とあなただけなの...
 でもガマンしてね...我慢すればするだけ入ったときに一気に気持ちよくなるから...

 さあ、...今までずーっと入れなかったあそこまで...いっきに...』
 

  パチンッ
 『ほら、気持ちいい!落ちていく、どんどん落ちて行く。
 落ちるほど快感が溢れていく。あそこも気持ちよくなってくる...』


彼女は左耳に近づいて囁き始める。


 『ふーっ』
 『どぅ?ぞくぞくしてくるでしょ...こうやって耳元で話すと...
 ふふっ...もう開放していいのよ...もうトランスに入ったから、ガマンしないでいいの...
 そ、私の身体の感触も感じて...ほら...あなたに密着してあげる...んっ..ふふ...

 もう頭の中は私だけで...ちょっとえっちになっちゃうね...
 もっと息をハアハアしていいのよ...そう、ハアハア、ハアハアって。
 頭も身体もじーんとなって...私の匂いがどんどん入って...もっと熱ーくなってくる。
 私でいっぱいだね...ほら、ハアハア、ハアハア...ふふ、荒い息ね。』

 『気持いいところ...さわりたい...?


 だめだよ〜。いまはハアハアして私に夢中になるの。
 私の言うことを聞いていたら、考えてあげる。』


 『私の言うことは気持いいね。そして、私がそばにいるだけで安心。
 あなたは私の言うことを聞いて、気持ちいいよね?うん、ありがとう。
 だから、ずっと近くにいたいよね?うん、ありがとう。
 ねえ、私の声、好き?うん、ありがとう。
 私の匂い、好き?うん、ありがとう。
 私の感触は?うん、ありがとう。
 わたしのこと全部好き?うん、ありがとう。
 じゃあずっと私の言うことは守るんだよ。うん、ありがとう。』



 『それじゃあ、一回その深いまま起きるよ。
 その気持ち良さと体の状態はちょっと残って起きてくる。
 でも私の言うことに逆らっちゃだめだよ。
 言うとおりにすれば、気持いいからね。』



密着する彼女はちょっと離れる。


 『さ、起きるよ。
 イチ、ニ、サン。』

  パンッ


 『ん、おはよう♪
 気持ちよかったね。トランスって気持ちいいよね。』

 〈...これで準備は完了。〉

 『ん?なんでもないよ。
 あ、そういえばあなたの名前、聞いてなかったね。

 うん、  あなたの名前は、なんというの?

 へ〜...いい名前。あなたに合ってる。』


 〈...真名も、いただきました。〉



 『ふふ、正直はいいことね。私も、初めて見た時からあなたが好きになってた。
 あ、赤くなって。可愛い。』



 『ちょっと、私、疲れちゃったから私は寝るね。
 でもあなたは何故か目が覚めてて眠れなくなると思うから、
 目を開いたまま、電車の音に耳を傾けていてね。
 寝ちゃダメ。ふふふっ♪
 でも、トランスには入っていいからね...』



彼女は左側から右のほうに移動してくる。
緋袴が座っている膝にフワリ、と当たり、髪が目前をフワリ、と通る。
蠱惑的な匂い。からまり、からまり、ほどけない。ほどきたくない。



 『さっきは、左を借りていたから、今度はみーぎ。』


また、質感が右にかかる。心が安堵感に包まれる。


 『じゃあ、次の終着駅についたら、起きるから、
 あなたはぼーっとしていていいよ。寝ないほうが気持ちいいからね。
 じゃあ、またね。』


彼女がこつん、と右肩に寄りかかると、すぐに寝息が聞こえてくる。







電車は、時間が止まったかのように、静寂、安堵。
寝息と、タタン...タタン...という音が、かすかな振動が、伝わってくる。
まだまだ、奥の世界へと誘うように。
然し、照明は、現代的に明るい。


トンネルは、まだ、出ていない。











つづく

























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