成人向け催眠小説 hypnoMiko02




02
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深淵たる内部。どこまで続くのか。この、階段、階段、カイダン。
目は今、幻を見る。
幻は真となる。真は偽となる。そしてまた、偽は幻となり、繰り返される。

 〈そう、あなたは今とても深いところ。〉
 〈あなたの名は私の内にある。だから支配されていて当たり前。〉

 〈そして、私の感覚で安心する。私がそばにいると安心。〉
 〈でも私が離れると...ほら、なんだか不安。とても不安。
  ひとりになるのは寂しくて辛くて悲しいでしょ。
  ほら、胸が締め付けられているみたいでつらい。不安。私に側にいて欲しい。〉

 〈でも大丈夫。私が手を握って....身体をあなたにあてると、ほら...安心..。
  とっても安心。安心するから私とずっと一緒にいたいね。〉


 
                  *


  パンッ
くいっと右腕を軽く引っ張られる。

 『ふふ、おはよう。目を開いて。ちょっとびっくりしちゃった?でも頭、スッキリしたね。
  ちょっと伸びをして。ほら、ん〜って。うん、頭がもっとはっきりした。』

 『それにしても、あなた、寝ちゃってた?
  自分でも気がついていないくらい気持ちよさそうだったね。
  ...寝顔、ごちそうさま。......あ、赤くなってる。ふふっ』




 『...で・も。さっき、私は寝ちゃダメって言った気が、するんだけどなー。』

 『約束...だったのに...破っちゃった...の?....くすん』

 『私の約束...破るなんて...』





 『..え?謝ってくれるの?ごめんなさいって?』




 『...ぅ〜、なによぅ、その気のこもらない謝り方。
  ごめんなさい、何でもしますってくらい謝ってくれなきゃ、ダメ。ほらぁ。』







 『...え?ホント?なんでもしてくれるの?分かった。それじゃあ許してあげる。』
 『ん?なにか言いたい?ふふ、ダーメ。』



 『えっとね、ん〜と、』







 『...じゃあ、手、つないで?』




そろり空を歩く右の五本の指。彼らは、待っている。新たな仲間と交わるのを。
空間に浮く感触。意識はその感覚のみに向かい、一つとなる。
鋭敏たる感覚は、他を遮断すると共に、彼女自体を、伝える。

 『ん、ありがとう。』


彼女との感覚の共有。同時に彼女の髪の柔らかな感触、香りが、
肩のあたりに重みと共に掛かってくる。なすがまま。

 『あったかいね。それになんでかな、あなたといると安心する。懐かしい匂いもするの。
  とくに、あなたの、この耳たぶのあたり..........えい。はむっ』

 『ふふふ、びくってした。なぁに?そこ、感じちゃうの?
  感度高いままだもんね。』

彼女は悪戯っぽく微笑む。





電車は何時の間にかトンネルを抜け、減速し始めた。
夜。未だ明けぬ、闇。
外は一として光を通すことを拒むかのようである。



 『あ、そろそろ着くね。
  でも....離れるの、嫌だし.....まだ、私といっしょにいてくれる?』

下から覗くように。内なる鼓動を打ち鳴らさせる。首を縦にしか振れない見方。

 『うん、頷いてくれると思ってた。嬉しい。』







右手から彼女の手が抜け、彼女は腰を浮かし、伸びをする。
しかし不意にも、電車はキッと止まり、彼女のバランスを崩させた。


彼女を、受け止める。抱きとめる。正面と、正面。

 『あ、ありがと......』


彼女は離れる様子は無く、かえって腕を後ろに回し、その胴体との距離を縮める。
しかし彼女の匂いは、境界を曖昧にする。
包んでいるのか、包まれているのか。


 『ふふ、まるで電車さんに離れちゃダメって言われたみたい。
  なんだかずっとこうしていたいね...

  .....私、今までずっと一人で居たから、寂しかったのかな。
  あなたも?ふふっ、似たもの同士だったのかな。
  ますます、あなたをてばなしたくないなぁ....』

 『ううん、なんでもない。
  よかったら、もっと、ぎゅっとして...』


彼女の吐息、彼女の香り。
須臾(しゅゆ)は長きよりも永遠。しかし、所詮は短き瞬間。
そのときは終わり、彼女は少し名残惜しげに離れる。

 『手、つないでいよう。』

 『それに、いつまでもここにいる訳にもいかないし、出ようか。』






ドアがガコンガコンと開き、外に出る。
ホームに降りた足の感覚はあれど、外の感覚を得るものはない。
風、季節、光、音、形。全てはこの闇に捕らえられている。



だが、彼女は微々たる光をまといっている。
つながれる手から伝わってくる光は、温かい。全身も心なしか温かい。
すなわち、彼女の世界。


彼女は独り言のように呟く。

 『...ふぅ、やっと降りれた。』



彼女は少しこちらを見る。

 『今から、神社に行くけど、そんなに遠くはないから安心して。』

そう言うと、ふと彼女は手を離し、つつと後ろにまわってくる。
すると、両手をこちらの肩にかけてくる。

 『だから、....ね?』





 『入ろっ』


  グッ





いきなり肩を引っ張られ、不意に身体が傾く。不安を察知した身体は、硬直。
木のように倒れる。
 

 『深く入る!ほら、ずーんと、ずーんと、入っていく。落ちていく。
  今までよりも深ーく入っていく....トランスに...入っていく....』


しっかりと地に立っている彼女に、しかと抱きとめられる。

 『それじゃあ...ここのベンチにもたれるよ...。そう、私に全てを任せて...。
  ベンチに座ると一気に全身の力が抜けるよ。...ほら。

  スーっと抜ける。頭のてっぺんから足の先までス〜っと抜ける。
  そう、全身の力が抜けると頭がボーっとしてくるよね。
  前よりも脳みそがとけちゃうみたい。トローンととけちゃう。
  いいよ。気持ちのいいあの世界にどんどん入っていっちゃおう?
  うん、入る...入る...、気持ちよーく落下していく....。』


 『...さあ、あなたはまた深ーい深ーい、気持ちのいいトランスに戻ってきました。
  何も考えず、ただ私の声だけを聞いていればいい。従っていればいい。
  私だけの世界。私だけを感じていればいいの...。』





 『それじゃあ、あなたは深いまんま、目を開けて私の声に従うことができるよ。
  はい、目を開けて。』




 『ほら、この光を見て...』


彼女の手に収まる、立方体の木の箱。
一つのみ開いた小さな穴からは、中の光源の、橙の光が伸びてくる。
全てを通り抜けてしまうような、しかし優しい光。
彼女のまとう拡散する光と、この直線の光。

額に、入る。

 『ほら、この光が頭のほうにすーっと入っていく。そう、脳に直接入ってくる。
  こうやって額のあたりに光をくるくるあてていると....
  光が脳をかき回してるみたい。気持ちいいでしょ?ゾクゾクする...。
  そして....ほら。これを眉間のあたりに集中すると...眉間のあたりに目を向けて...
  そう、視線を眉間にくるっと向けると....ほら気持ちがいい.....』


 『さあ、そしてあなたは、これから、この光についてこなくてはいけません...。
  なぜなら、あなたは、この光を見ていると、
  とても気持ちのいいトランスに、深く入っていけるから。
  だから、必ずついてこなくてはいけませんよ...。ほら。』


光が、動く。上に、少し。つられて、立ち上がる。

 『でも、この光が消えると、あなたは足も、腕にも、頭にも、
  すべて力が入らなくなってしまいます。
  全身の力が抜けるので、その場にへたりこんでしまいますよ....。』


光が、消える。全身の力が抜ける。膝を、手を、つく。


...光がつく。光が、動く。立ち上がる。
光が遠ざかる。ただ、歩いて追う。

 『そう....一歩一歩、確かめながら....。』

...光、光。橙の光。無思考。闇と、光。
ただ追う。...一歩。...いっぽ。



 『私の声だけ.....この光だけ.....』

...光。...一歩。..声。...いっぽ。...光。...一歩。


光が消える。崩れる。座る。深淵。.......





...光がつく。遠ざかる。立ち上がる。追う。


 『そう、確かめながら...歩いていると...深ーい...トランスに...ゆっくりと...。
  そして...全身の...物事を感じ取る感覚も...段々....敏感になっていく...。』



光が、腰のあたりにゆっくりと下がる。足元が、見える。
長い石階段。下り。光が下の方に遠ざかる。

 『ゆっくりと...一歩....一歩.....』
  

下る。降りる。深くへ。奥へ。
光。一段。光。二段。光。一歩。光。いっぽ。............延々と、降りる。





平坦な道に出る。
光がまた、目の高さのあたりに来る。鳥居が見えるも、見えていない。

下は、フワフワした地面。足を付いている感覚は、ない。光だけ。
...光は、急降下、地面へ。身体が、つられる。地面に、身体が吸い込まれる。
寝そべるような体勢。光を、見る、みる、ただ、見る。


...光が、消える。目が閉じる。


...光が、つく。まぶた越しに光を感じ、目が開く。
光が、動く。境界の内へ。また、ついていく。一歩、いっぽ..............






 『...さ、社の前まで来たよ...。あなたは、特別。入っていいよ。』

また腰のあたりに下がった光。木の階段を、上がる。
光。一段...二段...三段...四段....五段。



そして、光の動きに合わせるように、社の扉が、キィと開く。
目の高さに戻った光りに導かれ、入っていく。



社に入ると、扉がパタンと閉まる。

光は、眉間の前。彼女は、右隣。歩みが、終わる。




 『そして、私が...この光を...こうするとどうなる?』

光が、素早く、脳天、後ろへ。目で追う。頭で追う。身体で追う。
後ろへ。白目。すかさず彼女の右腕に受け止められる。

 『そう、失神しちゃう。ほうら、良い気持ち。』

彼女と共に下に座る。

 『す〜っと深いところ。目を閉じて。そう、いままでずーっと深いところに歩いて行っていたから、
  座るともっと深いところに入って...完全なトランス状態です....。
  だから、体の感度も全て、そう、全て上がっている。
  あなたの感じているすべてに敏感に反応して、気持ちが良くなってきているよ...。
  そして...何も考えられないから...脳がとろ〜んと溶け出してくる感覚...。』






彼女に、後ろから包まれる。香り、感触、思考。すべてを彼女に支配される。
彼女が全て。

 『そうそう。わたしの感覚だけ感じてて。』


 『お疲れ様。ずっと歩いていて疲れたね。
  でも大丈夫。今から疲れなんか、どっかにいっちゃうから。
  私だけを感じて。

  そして...左の耳に......フ〜。
  ふふ、どう?感度が上がってるから気持いいでしょ。ぴくってした。』


 『ここからは、お楽しみ。もう我慢はなし。
  その欲求がたまった心の扉を全て、私が開いてあげる。
  私に全部任せて。そう、私に意識を集中...』




さっきより強い、後ろからの柔らかい感触。

 『じゃあ、左の耳たぶを.....えいっ。...はむっ』

 『あ、さっきよりも反応がいいね。背筋がゾクゾクする。
  んじゃ、今度は、もっかい耳たぶを....はむっ』

ぺちゃ、ぺちゃと耳たぶをしゃぶられる。

 『ん...くち.....ん....んはぁ。ふふ、どう?気持ちいい?
  えっちな気持よさだよね。トランス状態だからもっともっとえっちになって。

  今度はみーぎ。...はむっ』



 『あはは、またぴくってした。
  ほら、気持いいならもっと声出して。そうすればもっとえっちに気持ちよくなるよー。
  身体の感度がどんどん上がってすべてが溶けちゃう.......はむっ』

   ぺちゃ...ペロ..ペチャ....クチ..ペチャ....ズゥ...

 『ほら、身体がもっと熱くなってもっと声が出ちゃう。
  ...そして...耳の穴の入り口を.....んっ』

   ぺちゃゃ.....チュッ...ペロ....

 『身体、ピクピクビクビクしてる。.....んーっ』

   チューーっ....ペチャ...ペロ....チュッ...

 『ほら、身体も脳みそもなんだかすべてが吸われているみたい。
  耳だけでもうおかしくなっちゃいそう。息、ハアハアしてる..。
  あ、左の耳の穴からも吸ってあげるね。脳みそ。......は〜むっ』

   チュッ...ペチャ....ぺちゃ...チューーーっ.....くち....

 『んはあ。あぁ、あなたの脳みそ、おいしいね。思わず全部吸っちゃったかも。
  でもそうすると身体が、あなたが溶けていくよ...
  比喩?...そうかもね。でも...本当に、溶けちゃう....ほら...』





彼女に強く、強く抱きしめられる。苦しいくらいの、抱きしめ。

全身は、火となり、やがて、素粒子へ。
木であった身体は、火となり、土となり、金となり、ついには水に至る。
水と水は、互いに混ざり合い、区別をつけることは、できない。

 『ほら...すべてが私に取り込まれる....溶ける...とろーり....とろーん...』


無。無が彼女。彼女が全て。全てに満たされる。

 『気づいたかな...。あなたはもう意識だけになってるの...。
  でも安心して。全て溶かしてあげる...。
  私の体と一体になって....そう、だから...もう私たちはずっといっしょ。』

 『ほら...身体、熱い...指を鳴らすともっともっと感度が上がって、
  ....五回鳴らすとイッちゃうよ...?』

   パチンッ
    
 『ん...ひゃっ...あっあっ.....え?....だから....
  ...いったでしょ?私とあなたはいっしょ...。
  だから私も...気持ちよくなっちゃう..の...あっ...んっ.....』

   パチンッ

 『ん〜〜〜っ....あぁ....んっ....気持ち...いい?...わたしも..ああんっ....
  つぎ....』

   パチンッ

鳴る、指。快感。音は、彼女が鳴らしているのかもわからない。
天頂に、響く。溶け合う。声が、重なる。鼓動が、重なる。
ニは一となり、一は二である。
上がっている。

   パチンッ

鳴る、指。身体は彼女。彼女が感じる。彼女も感じる。
次を、共に待つ。共に、溶ける。

 『ァ...ァ...イクよ........ーッ.....』

   パチンっ









ひときわ大きく響く、乾いた音。

大きなうねりによって、身体は流される。
上りつめる。

刹那に光、白。



星が、炎が、消える際にひときわ大きく光を出すように...。









                  *



......無による有か。有による無か。天か、地か。全ては、溶けた。


 〈気持ち、良かったよ。ありがとう。〉
 〈離れるの、イヤなんだけど、離れなくちゃいけない。これは理(ことわり)。〉

 〈私は現実でも、夢でもない、その間の”もの”なの。〉

 〈私は気がついた時から、ずっと、電車に一人。〉
 〈行き先も、することも、私という”もの”についても、すべて知っていた。〉
 〈ううん、私自体がこの世界、なのかな。〉
 〈だからなぜ、私が、巫女なのか、も。あなたになぜ、こうしているのか、も。
  すべて意味があるの。〉
 〈でもあなたが、私を、無から有にしてくれた。意味を私に与えた。〉

 〈..なんだか、あべこべだけど、、難しいことはいいね。〉


 〈....もし、私のこと、覚えていてくれるんだったら...
  また、どこかで会えるかもしれない....〉

 〈あなたがはじめて、だし、...もう、あなたのことしか考えられないから....
  かわいい...あなたのことだけ...〉

 〈だから...あなたと離れるの、辛くなっちゃってるの...おかしいね。
  こうなるってことは分かっていたのに....人間、でも、ないのに...
  悲しいって、こう言うことなんだね....辛いって...〉

 〈私ができるのは...印を残すことだけ。〉

 〈一人は...辛いから......〉

 〈あなたの意志で、覚えていたいときは覚えていて...〉


 〈また...会いたい......〉






頬に、唇が触れた気がした。
しかし、それはまた頬にしたたってきた雫の感覚に消されたようだった。



                  *


電車は、走る。そして、ある”もの”を乗せ、どこまでも。
ある”瞬間(とき)”を待つように。ただ、暗闇の中に。




                  *




...遠くからの喧騒にうっすらと目を開く。
車輪の音。レールの音。人の声。

そして、アナウンス。

「エー、シュウテン、ミフネ、ミフネデス。オリグチハ、ミギガワ。
 オワスレモノ ノ ナイヨウ、オオリ クダサイ。

 タサクラヤマジンジャヘハ、ニバン ノ バステイ ヨリ、
 ジュンジ バスガ デテオリマスノデ ゴリヨウクダサイ。

 ホンジツモ、ホンセンヲ ゴリヨウクダサリ、マコトニアリガトウゴザイマシタ。

 ミフネ、ミフネデス。」



意味を取らない頭はぼんやりとしながら、習性のように伸びをする。


すると、襟のところにチク、とするものがある。

いて、と首に手をやる。少し、硬い感触と小さい柔らかなつぶが、ともにくっついている。

 桜の枝と、小さいその蕾であった。







    fin.






























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