「痛みが快感に変わる瞬間」by turn-to
「ああぅっ!」
沙紀絵が善弘の背中に爪を立て、強く抱きしめる。
善弘は背中の痛みに少しはっとする。しかし腰の動きを止めることはしない。
二人はぴったりと合ったリズムで互いの腰を動かし、快楽の頂点を探る。
「もう、もうだめぇっ!」
沙紀絵が声を上げる。善弘ももう限界であった。
善弘は「ああぁ!」と悲鳴に近い声をあげた。同時に腰を沙紀絵の秘部に強く押し付ける。
善弘のペニスが沙紀絵の奥深くで痙攣を始める。沙紀絵が体をのけぞらせ、背中に立てた爪をさらに食い込ませる。
絶頂・・・。
「ちょっと、背中見てくれる?うずくんだけど。」
善弘が沙紀絵に言う。
「あら、ごめんね。痛そう。」
「血、出てる?」
「少し出ちゃってるわ。待ってて。フロントに言って消毒薬借りるから。」
「たいしたこと無さそうなら、いいよ。どうせほっとけば直るし。」
「でも、いいの。ちょっと待ってて。」
沙紀絵はバスルームに入ると、軽くシャワーを浴びて、手早く服を着ていく。
真っ白なショーツとブラをまず身につける。
ブラウンのチノ、オフホワイトのブラウス。ブラウンのジャケット。
仕事帰りの地味な服装。
「じゃ、シャワー浴びてて。今電話で呼ぶから。」
フロントに内線をかけると、ほどなくボーイが消毒薬を持って来る。
沙紀絵は部屋のドアでボーイと2,3、言葉を交わして、バスタオルと消毒薬を持ってバスルームに入ってくる。
ちょうど善弘は一通りシャワーを浴び終わったところ。
沙紀絵が全身をやさしく拭いてくれる。善弘は、沙紀絵のボディソープの匂いと、髪に残った汗の匂いを感じて、終わったばかりだというのにちょっと気持ちの高まりを感じている。
「さ、背中を見せて。・・・ちょっとしみるかも。」
沙紀絵は手馴れた様子で、善弘に消毒薬を塗っていく。
確かにちょっとしみるけど、たいした痛みではない。善弘はされるがままになっている。
「はい。おわり。」沙紀絵はそう言いながら、善弘の背中を軽くたたいた。
善弘はバスルームにあったガウンをはおる。沙紀絵も服を脱ぎ、ガウンをはおる。
二人はそのまま、ベッドに向かう。
沙紀絵と善弘はベッドに入ると、手をつないだ。二人は目を閉じる。善弘は沙紀絵の温かな手を感じながら、まどろみ始める。
沙紀絵が善弘の耳元に顔を寄せてきた。ゆっくりした調子で善弘に話しかける。
「最近、あまりよく眠れてないでしょう?」
「ああ。ちょっと仕事が忙しくて、気分が高まってるのかも。」
「完全にリラックスして、不安感を取り除いてから眠るといいのよ。こないだ雑誌にのってた。」
「ふうん。で、どうやって?」
「いろいろあるの。せっかくいいホテルに泊まってるんだし、いい睡眠とりたいよね。」
沙紀絵はベッドを出ると、テーブルの上に置いてある自分のハンドバッグを開ける。
中から小さな小瓶を取り出す。そしてティッシュを1枚取り、ベッドに戻る。
沙紀絵はティッシュを丁寧に四つ折りにする。
「これはね、フランキンセンス、っていうエッセンシャルオイル。気分が落ち着くわよ。」
沙紀絵はそういうと、小瓶のふたを取る。心地よい香りが善弘のところまで届く。
ティッシュにエッセンシャルオイルを一滴垂らして、沙紀絵は善弘の方を向いた。
「さ、これを鼻に当てて、ゆっくり深呼吸をして。」
善弘は言われるがまま、ティッシュに垂らされたエッセンシャルオイルの香りを深く吸い込む。確かに沙紀絵の言うとおり、気分が落ち着いてくる。心地よい香り。
「ありがとう。よく眠れそうだよ。」
しばらく香りを楽しんだ後、善弘は沙紀絵にティッシュを渡しながら言った。
沙紀絵はティッシュを丸めて、「シュート!」とおどけた調子でゴミ箱に投げた。
きれいな放物線を描いて、ティッシュはゴミ箱に入る。
「ナイスシュート!じゃ、お休み。」
善弘はそう言って目を閉じた。
「もうひとつあるの。」
「えっ?」
善弘は目を開ける。
「目は閉じてて。リラックスする暗示の方法があるの。自分でも使えるから、今度雑誌見せてあげるね。」
「暗示?」
「そうよ。まあ、だまされたと思って、目を閉じて聞いていて。子守唄代わりにはなるから。」
善弘は目を閉じる。沙紀絵は静かに、ささやくように、聞こえるか聞こえないかの声で、ささやきを始める。
− 善弘、あなたは今、とても心地のよいベッドに横たわっています。
− 目を閉じています。とても心地のよいベッド。
− 力を抜きましょう。一回肩を上げて、そう。ぱっと脱力。
− ほら、肩の力が抜けた。
− ゆっくり息を吸って。そう。吐いて。
− 10回、深呼吸しましょう。
− 1。肩のリラックスが、腕に広がる。そう。
− 2。リラックスが、体に広がる。そう。
− 3。脚もリラックスしてくる。そう。
− 4。全身がリラックスする。そう。
− 5。体がベッドに沈み込む。そう。
− 6。もっと深く沈みこむ。そう。
− 7。ふかーく、ふかーく沈み込む。そう。
− 8。意識がだんだん沈み込む。そう。
− 9。ふかーく、ふかーく沈み込む。そう。
− 10。ふかーく、ふかーく。
− とても心地よい。とても温かい。
− とても心地よいベッドに包まれて、そう、善弘はいま、心地よいベッドにすっぽり包まれているの。
− 私の声が聞こえる。私の声は小さく、遠くのほうから聞こえる。でもはっきりと聞こえる。
− 静かな夜の闇に、かすかな私の声だけがはっきりと聞こえる。
沙紀絵は催眠状態に落ちた善弘を見る。目を閉じて、深く呼吸している。
善弘の肩に手を伸ばし、やさしく触れる。
− 私の手が肩に触れる。温かい。とても温かい。
− 肩から腕に、腕から肩に、私の手が動く。触れたところが温かい。
− 今度は胸に触れます。ほら、温かい。とても温かい。
− とても気持ちがいい。とても温かい。
− もっと温かくなると、もっと気持ちがいい。もっと気持ちがいい。もっと。もっと。
ささやきながら、沙紀絵は善弘の肩から腕をなでる。ガウンを肩から外し、善弘の胸を触る。
沙紀絵はシーツの下をまさぐる。そこにはあらかじめ隠してあった、赤いロウソクとライターがあった。
さらにささやきを続ける。
− もっと温かくなりたい。そうすればもっと気持ちいい。もっと温かくなりたい。
沙紀絵はロウソクに火をつける。ほどなく、ロウソクには真っ赤なロウがたまってくる。
自分の手の甲にロウを垂らす。熱いけれど、耐え難いほどではない。高いところからたらしたロウは、見た目ほどには熱くない。
沙紀絵はささやきを続ける。
− 今から、温かい雨が降ってきます。とても心地よい雨。
− 雨の雫を浴びるたび、あなたは温かくなる。温かくなれば、気持ちがいい。
沙紀絵はロウソクを持った腕を高く掲げ、善弘の胸に狙いを定めて傾けた。
真っ赤なロウソクが、善弘の左の乳房の下に垂れる。
− ほら、温かい。気持ちいい。
沙紀絵はロウが熱くなりすぎないように加減をしながら、ロウソクを垂らし続ける。
− とても温かい。とても気持ちがいい。熱くなると、もっと気持ちがいい。
沙紀絵は伸ばした腕を徐々に善弘に近づけていく。ロウを垂らしながら。
ロウの狙いも、徐々に乳首に近づいている。
− 温かさが胸から全身に広がる。とても気持ちがいい。とても気持ちがいい。
− 全身から血液があそこに集まってくる。そう。おち○ちんに集まってくる。
善弘のペニスが、ゆっくりと大きくなる。沙紀絵の言葉に忠実に従っている。
ロウは乳首を残して、善弘の左の乳房を覆い尽くしてしまった。それでも善弘は目を閉じたまま、ペニスを大きくしている。
− 今から最高に温かい雨が降ってきます。最高に心地よい雨。全身が気持ちよくなる。体全体が、気持ちよくなる。
そうささやくと、沙紀絵は一気にロウソクを乳首に近づける。
ほとんど触れるか触れないかというあたりまで近づけて、ロウの雨で善弘の乳首を固めていく。
善弘の乳房が完全にロウで覆われると、沙紀絵はロウソクを口に近づけ、フッと吹き消した。
ロウソクを消したときの独特の匂いが部屋をつつむ。
善弘はまだ目を閉じたまま、ペニスを隆々と大きくしている。
沙紀絵は軽やかに立ち上がり、ハンドバッグに向かった。
ハンドバッグから注射針を取り出す。2本。30ゲージの細い針。
そばにおいてあった消毒薬も一緒に手に取り、善弘がじっとしているベッドに戻る。
沙紀絵は再び善弘の横に添い寝する。耳元に顔を近づけて、悪魔のささやきを再開する。
− 善弘、あなたは今、とても幸せ。とても気持ちがいい。
− もっと気持ちよくなりたい。私が触ると、触った場所が気持ちよくなる。
ささやきながら、今度は右の乳首、そしてペニスに触れる。ゆっくりと乳首をいじり、ペニスを撫でる。
− とても気持ちがいい。もっと強く触って欲しい。もっと強く。
右の乳首を乳輪ごとつまむ。
− もっと強く、もっと刺激が欲しい。痛い位の刺激が欲しい。欲しくてたまらない。
− 痛みはすぐに快感に変わる。痛みが胸から脳に伝わり、脳から全身に快感が広がる。
− 痛みが快感となって、善弘の全身を貫く。
沙紀絵は善弘の乳首をつねり上げる。つねりながらペニスをやさしく撫でる。
ペニスはさらに硬度を増している。亀頭が湿り気を帯びてきている。
もう大丈夫。そう判断して、沙紀絵は最後の仕上げに入る。
一旦善弘の体から手を離し、消毒薬を自分の両手に垂らして刷り込む。そして善弘の乳首にも。
− もっと強く、もっと刺激が欲しい。もっと痛みが欲しい。痛みは快感をもたらしてくれる。
− 痛みはすぐに快感に変わる。痛みが胸から脳に伝わり、脳から全身に快感が広がる。
− 痛みが快感となって、善弘の全身を貫く。
沙紀絵は注射針のパッケージを空け、中身を取り出す。
銀色に輝く細い針。
沙紀絵は根元を右手でつまみ、左手で善弘の乳首をつまみ上げる。
− 今から3つ数えたら、最高の快楽を与えます。快感が全身を貫きます。
− 痛みが快感に変わり、全身に広がり、おち○ちんに集中します。
− 3、2、1、はい!
沙紀絵はためらうことなく、注射針で一気に乳首を貫いた。ビクンッ、と善弘の体が動く。
善弘のペニスが、こちらもやはりビクンッ、と反り返る。
− また3つ数えます。もう一度、快感が全身を貫きます。
− 痛みが快感に変わり、全身に広がり、おち○ちんに集中します。
− 3、2、1、はい!
今度は下から上に、注射針で一気に乳首を貫いた。
貫き終えると、沙紀絵は素早く体の向きを変えて、ペニスに顔を近づける。
ペニスに、沙紀絵はたらりと唾液を垂らす。そしてゆっくりと右手でペニスを愛撫する。
ペニスを愛撫しながら、沙紀絵は再び体の向きを戻して、善弘へのささやきを再開する。
− とても気持ちがいい。とても幸せだ。
沙紀絵はペニスへの愛撫を止める。そして、最後の仕上げに取り掛かる。寝た子は起こさなければいけない。
− 善弘、あなたは今、最高の快感を味わいました。
− 目が覚めても、この快感は小さな疼きとなって残ります。
− 善弘の体は、この快感を覚えました。もう忘れない。
− 目覚めの時間です。今から3つ数えると、とても心地よく目を覚ますことができます。
− 3. 体に力が戻ってくる。今善弘ははっきりと自分の力を感じることができる。
− 2. 頭がはっきりしてくる。頭の中を涼しくて心地よい風が吹き抜ける。
− 1. さあ、朝を迎えました。はい!
沙紀絵がパチンっと指を鳴らすと、善弘はパッと目を開ける。
「善弘、あなた、自分の胸を見て。」
善弘は言われると自分の胸をみてはっとする。真っ赤に染まった左胸。そして、無残にも十文字に針を通された右胸。
「ど、どういうこと?」
「ご覧の通り。あなたが寝ている間に、私が遊んだの。SM、って、知ってるでしょう。私は、Sなの。だからあなたにはMになって欲しい。そう思ったの。でも、気持ちいいでしょ。」
「で、でも、こんな・・・。」
沙紀絵は善弘のペニスを握る。硬さは失われていない。
「あなたには選択権がある。私はあなたに暗示をかけたけれども、心は支配していない。今あなたは快感を感じている。間違いなく感じている。もっと深い快楽を得るために、私に全てをゆだねるか、アブノーマルな快楽を避けて、私から離れるか。さあ、よく考えて選んで。」
沙紀絵はゆっくりとペニスを弄びながら、善弘の目をじっと見つめている。
善弘は、右の乳首に刺さった針がもたらすかすかな疼きが、避けようの無い快楽になっていることを、もはや否定できないことを悟っている。
それでも自分の両胸の醜怪な様を見ると、恐怖心がふつふつと沸き起こってくる。
(とても気持ちがいい。こんなことをされているのにとても気持ちがいい。この快感は沙紀絵がかけた催眠なのだろうか。)
(それでもいい。沙紀絵が望んでいるんだ。私はもう道を踏み外してしまったんだ。沙紀絵に、全てをゆだねる。全てを。)
善弘は沙紀絵を愛していた。今も間違いなく愛している。今まで見たことの無い妖艶で吸い込まれるような表情の沙紀絵。とても神々しい沙紀絵。善弘は沙紀絵を愛している。そして、今自分はとても気持ちがいい。幸せだ。
「全て、ゆだねる。」
善弘は言った。
沙紀絵の顔がパッと輝く。天使のような、いや堕天使のような笑み。そして、はっきりと言った。
「いいわね。もう、選択権はないのよ。」
「はい。」
「じゃあ、イキましょう。記念に。あなたが落ちた、記念に!」
沙紀絵は再びペニスを撫でる。同時に、十文字に針が刺さった乳首を弄ぶ。
善弘は乳首がもたらす痛みがペニスに響いていくのを感じている。
沙紀絵は乳首をはじく。乳首に刺さった針をはじく。そしてペニスを、今度は力強く扱く。
善弘は急速に高まっていく。今までのセックスでは味わったことの無い強烈な快感が、ペニスからつま先まで、そしてペニスから脳天まで響いてくる。
「もう、もう・・・。」
こらえることなどできなかった。善弘は必死にこらえたつもりであったが、ついにペニスから白濁液が噴出した。
「ああああああああぁぁぁぁ!」
後始末を済ますと、善弘は沙紀絵に尋ねた。
「これから、私はどうなってしまうのだ」
イッてしまい、素に戻ると、さすがに不安になった。
沙紀絵は無言のまま、乳首のロウをはがす。はがし終えると、今度は注射針に手をかけた。そして言う。
「いろいろなことをするわ。あなたが多少は知っているだろうSMの世界と同じこともするし、違うこともする。心は、これから時間をかけてゆっくりと変えていく。でも心配しないで。あなたは私にとってとても大切な人。幸せになるために、じっくりと時間をかけてあなたの心と体を私にぴったりに変えていくの。そう、私にぴったりに。」
善弘は、沙紀絵に針を抜いてもらいながら、乳首の痛み、そして快感を再度味わった。
沙紀絵にぴったりな自分。幸せな自分。落ちてしまった自分。
それでいい、善弘は小さくつぶやいた。
fin.