それは、まだ私が学生だった頃の事。

 あの時私は一つ上の先輩と付き合っていた。

 彼女は笑顔が素敵な人で、綺麗な髪の持ち主だった。

 そんな彼女と付き合っていた私は……多分、幸せだったのだろう。

 深い深い眠りの中、私は今日もあの日の夢を見る……。

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン。

 授業の終わりを告げるベルが鳴る。僕――石神明(いしがみ あきら)は荷物をまとめ、教室を出た。

「やれやれ、今日も眠い授業だったな……ふぁ〜あ……」

 軽く欠伸をしながら下駄箱へと向かう。そこには僕の彼女である水野由佳(みずの ゆか)がカバンを手に立っていた。

「あっ、明くん! 今帰り?」

「ええそうですよ。先輩、ひょっとして待ってました?」

「うん、そうだよ。よかったら一緒に帰らない?」

「いいですよ。今日は特に用事もありませんし」

「よかった。それじゃ、行こっか」

 そう言うと先輩は僕の手を取り、引っ張るようにして歩き出した。思わず体勢を崩しそうになったが、何とか持ちこたえる。

「ちょっ、先輩……」

「ほらほら、早く行こうよ〜」

 声をかけようとするが、先輩はニコニコと微笑みながら歩き続ける。やれやれと嘆息し、僕は先輩に手を引かれるままついていった。

「ふふっ、明くんと手をつないで下校なんて久しぶりだね」

「僕の記憶が確かなら、三日ほど前にも手をつないで下校していたはずなんですが」

「あれ、そうだっけ? ……うそうそ、ちゃんと覚えてるって! やだなあ、私が明くんと経験した事を忘れるはずがないじゃない」

「……はいはい、それはどういたしまして」

 先輩と僕が付き合い始めたのは去年のバレンタインデーがきっかけだった。その日僕は、先輩から告白されたのだ。

(あの時の先輩、可愛かったなぁ……)

 その時の様子を思い出し、思わず顔がにやける。そんな僕の様子に気付いたのか、先輩は僕の方を怪訝な顔で見ていた。

「……ところで、今日わざわざ僕を待っていたのはどうしてですか? ひょっとして、また『アレ』じゃ……」

「あはは……鋭いね、明くんは。今日家の親帰ってくるの遅いし、ちょうどいいと思って……駄目、かな?」

 ああもう、そんな顔をされたら断れるわけないじゃないですか。

「……わかりましたよ、先輩。でも、程々にしておいて……」

「いいの!? やったぁ、それじゃ早速私の家に行こっ!」

「せ、先輩! 腕を引っ張るのは……」

 立ち話もそこそこに、僕は先輩の家へと引っ張られていった。

 

 

 

 ぱちんっ!

 先輩が手を叩く音で、僕は目を覚ました。目の前にはこちらを覗き込む先輩の顔がある。

「おはよ、明くん」

「……おはようございます先輩。ところで……今日はどんな暗示をかけたんです?」

「んーと、まだ秘密。でも、すぐにわかると思うから安心して」

「……それはいいですけど、ちゃんと最後に解いてくださいね」

 そう……先程僕が言っていた『アレ』とは、催眠術の事だ。何でも先輩はある催眠術師に催眠術を習っているらしく、付き合う前にも何度か練習台にされたことがある。しかもかけられる暗示は大抵……というか、全部えっちなものばかりだったりする。

 ちなみにこの前は、普段の何倍もの快感を味わうが、いいと言うまで絶対に射精できないという暗示だった。その前は確か……いや、あれは思い出さない方が幸せだろう、うん。

「それじゃ、はじめるね……んっ……」

「……ふぁぁっ!?」

 そう言うと、先輩は僕の頭を抱き寄せ、ゆっくりと口づけた。その瞬間、背筋を雷が駆け抜けたかのような快感が体に走る。

「んふふー、気持ちいいでしょ?」

「せ、先輩……今のは一体……」

「さぁ、何だろうね〜?」

 にこにこと笑いながら、先輩は僕の体を弄り始めた。ジーンズの上から股間を右手でやわやわと揉み込み、左手を服の裾から差し込み、直接肌を撫でる。その度にぴりぴりとした感触を味わい、思わず喘いでしまう。

「はっ、ふぁっ……」

「ふふふ、もっと気持ちよくしてあげる……ちゅっ♪」

「うああっ!?」

 先輩が僕の体に口付けた時に痺れるような快感を感じ、思わず声を洩らしてしまった。そんな僕の様子を見て、先輩は何度も何度も僕の体のあちこちにキスをする。同時に服を脱がされ、僕は丸裸にされてしまった。

「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♪こっちにも、ちゅっ♪」

「ひゃっ、ひぅっ! うぁっ、やめっ……くぁぁぁぁっ!?」

「だ〜め、やめてあげな〜い♪」

(キ、キスされるだけでおかしくなりそうだ……これが今日の暗示なのか?)

「んふふ〜♪ キスされると気持ちよくなるように暗示かけたと思ってるでしょ。でも、それだけじゃないんだな〜これが」

(ま、まだ何かあるのか!?)

 意地悪そうに微笑みながら、先輩は僕の体を弄り続ける。右手で股間のアレをしゅこしゅことしごきながら、左手で肌をなぞるように指先を滑らせ、時折体の何処かに口付ける。その度に僕は何度も体をビクッと震わせた。

 そうこうしている内に、だんだん射精感が込み上げてくる。僕の様子を見てそれを察したのか、先輩はあそこをしごくスピードを速めた。

「ふふ、イっちゃいそうなんだね……じゃあ、激しくしてあげる」

「くっ……あっ、ああああああああああっ!?」

 僕は先輩から与えられる快楽に耐え切れず、欲望を解放しようとした。だが、それは叶わなかった。出す事が出来ないことに戸惑う僕を見ながら、先輩はなおも僕のモノをしごき続ける。結果、射精できないままに快感だけが蓄積されることになり、僕は耐え切れないほどの快感にもがき続けた。

「うっ、うぁぁぁぁ!? せ、先輩ぃ……一体、僕に、どんな……くうっ、暗示を……ふわぁぁっ!?」

「簡単な暗示だよ♪ かけた暗示は二つ。明くんは私にキスされるとその度に、おかしくなりそうなくらいに体が敏感になって気持ちよくなっちゃう。もう一つは……」

 そこで一旦言葉を切ると、先輩は覆いかぶさるようにして僕の唇に口づけた。軽く触れる程度のキスだったがそれだけでも達しそうな快感を感じ、僕は体を大きく震わせる。

「明くんは『ある場所』にキスされるまで、絶対にイけない……どう? こんな快感、普段なら絶対に味わえないでしょ?」

「ひゃいいいいいいいいっ!? せ、先輩っ! もう……」

「だぁ〜め♪ まだイかせてあげない」

 そう言うと、先輩は指先をぺろぺろと舐めて唾液塗れにし始めた。そしてその指をゆっくりと股間の辺りに……いや、違う!

「せ、先輩……まさか」

「……前にここ弄ってあげた時の事、覚えてる? あの時みたいに、たっぷり気持ちよくしてあげるね♪」

 先輩の指先が向かった先は僕のお尻の穴だった。その入り口を指先でほぐすようにして唾液を滲ませながら、先輩はその奥へと指を進ませる。

「先輩、やめっ……くっ、あああああっ!?」

「ふふっ、指一本、丸ごと入っちゃったね。どう、わかる?」

「は、早く抜いて下さ……ひうっ、きぃああっ、うっ、うああああっ!?」

 僕の訴えを無視し、先輩はお尻の穴に入れた指を動かして前立腺の辺りを攻め始めた。思わず情けない声が口から漏れ出る。

「ほ〜らほら、お尻の穴弄られるのって気持ちいいでしょ〜?」

「せ、先輩……もう止め、止めて……ひぃっ!?」

「そうだね、あんまり意地悪するのも可愛そうかな。それじゃイかせてあげるね……ちゅっ♪」

 そう言うと先輩は僕のアソコへ顔を近づけ……その先端に軽く口付けた。その瞬間、今まで射精を抑えていた枷が一気に外される。

「あっ、ああああああああああああああああああ――――っ!」

 絶叫を上げ、僕は大量の白濁液を撒き散らし――そのまま意識を失った……

 

 

 

「んっ……ううん……あれ、先輩……?」

「あっ、目が覚めた?」

 意識が戻った時には、僕の頭は先輩の太股の上に置かれていた。所謂膝枕というやつだ。よく考えたら太股を枕にしているのに膝枕という呼称はおかしい気もするが、そんなことはこの際どうでもいい。

「えっと……ひょっとして僕、『また』気絶させられたんですか?」

「あはは……えっと、その……ごめんねっ♪」

 『また』の部分を特に強調し、先程された事のお返しとばかりに先輩を責める。先輩は精一杯の笑顔を作り謝罪の言葉を口にした。だがこの人の場合一旦は反省しても、後で必ずといっていいほどまた同じ事をやらかすのだ。ここは少々キツめに言っておく必要があるだろう。

「確か、この前も気絶させられましたよね……あの時は最後にイきっぱなしにされてかなりキツかったから、途中で何度も止めてくれるように言ったけど止めてくれませんでしたよねぇ? その後で、もう二度と気絶させたりしないって約束しましたよね?」

「だ、だってあれは明くんがすっごく可愛かったからつい……ご、ごめんなさい……」

「全く……気絶するまで責められる方の身にもなってくださいよ。あれ、結構辛いんですから……」

 色々と問題のあった反論はジト目で睨んで黙らせる。一応罪悪感はあったらしく、流石の先輩も完全にしょげかえってしまった。

「本当、ごめんね明くん……私の事、嫌いになっちゃった?」

 やれやれ……どうやら少々意地悪しすぎたようだ。ここはちゃんとフォローしておかねばなるまい。

「先輩。僕は先輩のこと、好きですよ。先輩が僕のことを好きなのと同じくらいに。そりゃあ、毎回毎回責められてばっかりなのはどうかと思いますけど……先輩に求められてると考えれば、決して嫌じゃありませんから」

「明くん……本当? 本当に私でいいの?」

「ええ……言っておきますが、今回みたいに気絶させられるのは嫌ですよ? あくまで、嫌じゃないってだけでそうされたいってわけじゃ……うわっ!?」

 そこまで言ったところで先輩が思いっきり抱きついてきたので、僕の台詞はそこで中断されてしまった。ちょうど僕をベッドの上に押し倒したような状態で、先輩はぐすぐすと泣いていた。

「嬉しいよ、明くん……」

「先輩……」

 僕は先輩の目じりに溜まった涙を指先で拭い、そのままゆっくりと顔を近づけて先輩の唇に口付けた。

「んむぅっ!?」

「んっ……明くん、どうしたの?」

 と、その瞬間。凄まじい快感を感じ、慌てて僕は唇を離した。一瞬何が何だかわからなかったが、すぐにその正体に思い当たる。

「先輩っ! さっきの暗示、まだ解いてなかったんですか!?」

「あっ……そういえば起きてから解いてあげようと思ってたんだ。ごめんね〜♪」

 そう言いながら、先輩は暗示を解く準備を整えようとして――ぴたりとその手を止め、何か思いついたかのような笑みを浮かべた。

「せ、先輩……?」

「……ちゅっ♪」

「ふぁぁっ!? せ、先輩! いきなり何するんですか!」

 にんまりと笑みを浮かべながら、先輩は僕の頬に口付けた。思わず喘ぎ声を上げてしまい、顔を赤くしながら僕は先輩に抗議する。

「んー、解いてあげようかと思ったんだけど……もう一回したくなっちゃった♪ よく考えたら、まだ私何もされてないわけだし……いいよね?」

「いや、続けては無理ですって!」

「そう? じゃあ確かめてあげる♪」

 そう言うと、先輩は僕の股間に顔を寄せ、勢いを失っていたモノを口に含んだ。そしてそのまま陰茎に刺激を与え始める。

「うっ、うわっ!」

「んふふ〜、ひもひいい?」

 僕のモノを咥えたまま、先輩は上目遣いで尋ねる。その光景に思わず興奮してしまい、僕のモノはむくむくと大きくなった。

「ふふっ……それじゃ、一緒に楽しもっか♪」

 言うが早いか、先輩はおもむろに服を脱ぎはじめた。そして脱ぎ終わると同時にお互いのアソコが相手の眼前に来るような体勢に移行する。所謂シックスナインというやつだ。それが終わると、先輩は再び僕のモノを口に含んだ。

「はむっ、ちゅぷっ……ほらぁ、明くんも……」

「はっ、はい……」

 思わず頷き、先輩のアソコに舌を伸ばす。全く触れていなかったにも関わらず、そこは既にぐっしょりと濡れていた。愛液でてらてらと光るそこを激しく舐め啜り、先輩を味わおうとする。

「ふああっ!? ……いっ、いきなり激しすぎだよっ、明くん!」

「そっ、そう言うわりには、先輩気持ちよさそうですよね?」

 先輩の動きが止まった瞬間に、僕はすかさず攻撃を仕掛けた。濡れているアソコの中に直接舌を差し込み、同時に前歯をクリトリスに触れるようにして刺激を与える。

「……くぁっ、はぁぁあん!? もっ、もう! おっ、お返しししてあげるんだからぁっ!」

 負けられないとでもいうように、口淫を再開する先輩。互いに快感に負けぬよう、刺激を与える事に集中していたが……しばらくの後、先輩が先に与えられる快感に屈した。

「……ひゃあん!? こ、こんな……くぁぁぁっ! も、もう駄目ぇ……はぁうぅっ!?」

 実は元々、性的な経験は先輩より僕の方が多かったりする。その辺はあんまり語りたくない部分もあるのでここでは割愛するが……催眠さえ使われなければ、こういう勝負は僕の方が有利なのだ。

「まだまだ続けてあげますよ、先輩」

「ひぃっ、ああっ!? あ、明く……んはぁぁぁっ! やっ、やぁぁぁっ!」

 先程一方的にされた仕返しとばかりに、飽きる事のない快感を与え続ける。時折お尻の穴の方にも刺激を与え、先輩を悶えさせる僕。

「あっ、ああああっ! わっ、私もう……んっ、はぁぁぁぁあああああああああああ――――っ!」

 やがて限界を超えたのか、先輩は大きく体を震わせて――達した。

「はぁぁぁ……明くぅん……」

 とろんとした目つきでこちらを見つめる先輩。そのままこちらへ顔を寄せ――不意打ちで唇を奪った。

「んっ、んんんんんっ!?」

「んっ、んっ、んっ〜♪」

 まだ続いていたらしい暗示の効果で動きが止まった僕に対し、先輩は楽しそうに舌を絡めてきた。快感で思うように身動きが取れなくなった僕は、先輩になされるがままになってしまう。

「……ぷはっ、はぁ、はぁ……それじゃ明くん、本番にいこっか♪」

「ちょっ、ちょっと待って……」

「だ〜め、さっきイかされたお返し♪」

 にっこりと微笑みながら、先輩はどこからか取り出したコンドームを僕のモノにかぶせ、上に乗った。そのままゆっくりと位置を調整し、僕のモノを先輩の中へと導いていく。

「んっ、はぁぁっ……ふふっ、全部入っちゃったね♪」

「うっ、うぁっ……」

「それじゃ、このままするね……んっ、んんっ!」

「くっ、ああっ! せっ、先輩!」

 騎上位の体勢で腰を振る先輩。僕はその下で何度も何度も喘ぎ声をあげ――

 

 

 

「……んっ……夢、か」

 上半身を起こし、今の状態を確かめる。夢精はしていなかったことに安堵してから、隣で髪の長い女の子が眠っていたのに気付き、思わず苦笑する。彼女――半年と少し前までは家庭教師と教え子の関係であった朝倉麻衣――は安らかな寝息を立てて眠っていた。

(……そういえば、今日は日曜日だからデートに行こうって約束してたっけ。そろそろ起こしてあげますか)

 そう考え、私は彼女の体を揺さぶった。何度か揺さぶっていると、麻衣は「んっ……」という声をあげて薄目を開ける。

「んんっ……あれ、先生……もう朝ですか?」

 まだ完全には目覚めていないらしく、眠たそうな目を擦っている麻衣。私はその頭をさっと撫でた。

「ひゃぁんっ!? も、もう、先生ってば……」

「あはは、ごめんごめん」

 一気に目が覚めたらしく、麻衣は顔を赤くしていた。その様子があまりに可愛いのでそのまま進行してしまおうかとしたその時――玄関のチャイムが鳴った。

「あっ……誰か来たんですか?」

「うーん、麻衣ちゃん以外にここに来るような人に心当たりはないんだけど……郵便か何かかな? とりあえず行ってくるから、そこで待ってて」

 そう言い置いてから、私は玄関の方へ向かった。ドアを開けると、そこには見知らぬ青年が一人で立っていた。といっても不審人物というわけではなく、ただの宅配便のお兄さんだったが。

「えーと、石神さんですか?」

「はいそうです。何か届け物ですか?」

「ええ。こちらにサインをお願いします」

「はい、わかりました」

 そう言ってから受取人の欄に名前を書き、何かが入った大き目の封筒を受け取る。厚みから察するに、中に入っているのはビデオテープだろうか?

「それじゃ、失礼します」

「はい、どうもご苦労様〜」

 封筒を手渡すと、青年はバイクに乗って立ち去った。

「さて、誰からか……なっ!?」

 差出人の欄に目をやり、僕は思わず硬直していた。

「馬鹿な、そんなはずは……っ!」

 差出人の欄には。

 水野由佳、と記されていた。




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