第四話
「うふふふふ。」
少女顔負けの腰まで長くした黒髪を二本の三つ編みにまとめ、背中におろしながら不気味な笑いをする純三だった。
部屋の窓ガラスをたたく音がした。純三を、悪魔の仲間に引き入れた張本人である小学生の少女、桐原真奈美がやってきていたのであった。
純三は、すぐに窓を開いて真奈美を迎え入れたのであった。窓からすぐに真奈美は純三の身体にとびかかるようにおりてきたのであった。そして、正面から両手をあげて純三の背中に垂れている三つ編みの髪の毛をそれぞれの手でわしづかみにしたのであった。
「あん!痛い。」
「ふふふふ。女の子みたいな叫び方。悪魔のあたしにはおいしいわよ。」
「それより、妹に正体を見られたみたい。」
「だいじょうぶよ。まあ、この人には用はないわ。」
「そうか。」
「あたし、ここで待ってるから、エッチなことしよう。」
「うん、ちょっとトイレにも行ってくるから。」
百合子は、兄の純三に自分の部屋に運ばれ、扉をしめられた。
妹をもとの部屋に戻して、便所で用足しをすませた後、洗面所の電気をつけて鏡にうつっている自分の髪の毛を長くした姿を見ようとしたのであった。背中にはらっていた両方のおさげ髪を、前に垂らしてはその毛先をつまんでまた自分の姿に見とれているのである。
「ふふふふ。すっかり長くなってしまったな。」
その後、洗面所に母親も便所に行こうとして起き出してきたのであった。純三とは気づかずその後ろ姿を見て当然のように驚いたのであった。
「まあ、あなた、どこの女の子なの?この家にはあなたのような髪の毛を長くしている人なんかいないはずなのに、あっ。」
母親のほうをふり向いて純三も驚いたのであった。そして、純三のその変わり果てた姿にまた驚いていた。
「もしかして純三さん、あなた、そんな女の子みたいなかっこう、どういうこと?すぐそのかつらをはずしなさい。」
母親は、息子のその片側の髪の毛をひっぱり始めた。
「ママ、やめて、これはほんものの髪の毛だよ。」
「なあに?カツラじゃないの?いくらなんでも、急にこんなに伸びているなんて。」
「いたっ、いたい!ひっぱらないで。」
「第一、女の子でも長すぎるわよ。特にあんたは背が高いんだし、生活するのに不便でしょう。もうすぐに切りなさい。」
母親は、傍らにあったはさみをとりだして息子の髪を切ろうとしたが、まずきっちり編まれている三つ編みの髪をほどくために、ゆわえられていた白いヘアゴムをはずし、またもういっぽうの髪の毛をゆわえていたヘアゴムもはずしたが、その時だった。
「ああ、ううん…。」
ほどかれた髪の香りが広がって母親をもうろうとする気分にさせたのであった。
「まあ、なんてきれいなおまえの長い髪の毛…。切ったらもったいないわ。」
とうとう、母親もその場にばったりと倒れてしまったのである。
そこへすぐ、真奈美もやってきたのであった。
「おにいさん、どうしたの?なかなか戻ってこないから…、あ、もしかしておかあさんにつかまっていたのね。ふふふふ、あたしがおかあさんには催眠かけておくから。」
真奈美はこうして純三の眠っている母親に髪の香りをかけていたのであった。
「これでだいじょうぶよ。」
翌朝は、信じられないことが起ってばかりいた。
百合子が目覚めて洗面所に行くと、兄の純三と母親が洗面台の前にいっしょにいて、しかも母親は兄の長い黒髪を女もののヘアブラシで念入りに何度もとかしていたのであった。
「うふふふ、純三ってこんなに長くてきれいな黒髪がお似合いだったのね。」
「ママに言われるとうれしいよ。」
百合子は呆然としていた。自分の兄が急にあんなに女の子顔負けの長い髪になって、しかも自分も髪を長くすることを決して許さなかったはずのママがどうして兄の髪の毛を…、百合子はまだ夢からさめていないような錯覚も感じた。だが、ふたりとも恐ろしい悪魔の手先になってあやつられていることなどを夢にも思わなかった百
合子だった。
母親は、兄の髪をとかすと左右の両サイドを少しずつ三つ編みにも結って、間の髪を両側から巻きつけてポニーテールをつくるために巻いていた。もはや、完全なお嬢様ふうの髪形になっている兄だった。
「うふふふ、これで近くの女子大学に忍びこんでみるといいわ。」
「そうね、ふふふふ。」
着ているものも、女ものだった。純三は髪の毛が腰まで長く伸びたのをいいことに、見事に女装までするようになってしまい、どの角度から見ても女性にしか見えなくなっていた。
百合子はすぐに自分の部屋に戻って制服に着替えた。そして洗面所のほうを見向きもせずに玄関に直行して早々と家を出てしまったのである。
「ママもおにいちゃんも、ようすがおかしいわ。」
身の危険を察知してか、百合子は家をぬけだしたのであった。
しかし、学校もまた恐ろしいことになっていた。
「どういうこと?まさか、地震があったわけでもないのに…。」
校舎がどの建物も無残に崩れていたのである。まだ朝早く来たのが自分だけだったから、気づいたのは自分が最初になったが、このあとみんな来て自分と同じように驚かずにはいられないだろうと思った。
ところが、始業時間になっても、生徒も教師もだれひとりとして来なかった。
「みんな、学校がつぶれているって知ってたのかしら。」
事実、小原孝子がようやくやってきたのであった。
「百合子さん、なにしているのよ。」
「あら、孝子さん、いったい…。」
「みんなのうちに連絡が行っていたと思ったけど、百合子さんのこと探したら、なあんだ、学校のあったところに来てたのね。」
「連絡って、そうか、わたしは早くうちを出てきちゃったから、知らなかったわ。」
「そうだったの、早く、こっちの公民館に行きましょう。」
「みんな、いるの?」
「残念ながら、学校の生徒たちはいっぺんに同じ場所に入れないから分かれたわ。家の近い者どうしで。わたしたちの住んでいる区域は女子しかいないけど、これから同じ部屋で寝泊りすることになるわ。」
「同じ部屋って…。」
「おうちも、学校と同じようにつぶされてしまったのよ、みんな。」
「大地震でもあったのかしら。」
「そうじゃないみたいだわ。ゆうべ、空が急に光って、まちじゅうが暴風に巻き込まれたみたいな、原因はよくわからないらしいわ。」
何が起きたのかわからないながらも、とにかく百合子は孝子のいるところに一緒に入っていこうと思った。
一連の仕業はもちろん、侵略者のそれである。
女子大生に化けて、女子大学に忍びこんだ兄の純三は、さっそく校舎にある便所に入って好みの女子大生が現われてくるのを待っていた。
純三の好みどおり、髪の毛をお尻のあたりまで長くしてふたつに黒いヘアゴムでまとめたおさげの少女がやってきたのであった。純三は、さっそく少女の背中に抱きついて両手で髪の毛をそれぞれわしづかみにすると、少女の後頭部にある髪の分け目をなめはじめたのであった。
「きゃあーっ、いたい。だれ?」
「くくくく。」
「ううっ。」
少女は気絶して倒れると、興奮した純三がスカートやパンティーをぬいで性器を少女の顔に向け、少女のあいていた口のなかに精液を垂らして飲ませるのであった。
「うふふふ。おまえも仲間になるんだよ。」
やがてその女子大生もうつろな表情で目ざめては、不気味な歩き方をするようになるのであった。
百合子の訪れた公民館には、ほかに十人ほどの女子生徒が異なる学年で何人かいたのであった。百合子や孝子と同じ高校生以外にも、小学生や中学生、幼稚園の女児もいたのであった。
「みんな、よろしくお願いします。急にたいへんなことになってしまいましたが、力を合わせてがんばっていきましょう。」
それぞれ自己紹介がされたのであった。
いったん解散して決められた部屋に戻るよう、管理人からの指示があった。
百合子は幸いにも、孝子と同じ部屋でふたりで寝泊りするようになった。
「よかった、安心だわ。」
だが、百合子には恐怖も近寄っていたのであった。
解散してそれぞれの部屋に戻っていた少女たちのうち、髪の毛をいちばん長くしていて左右の耳もとにも白い布製のリングでとめ、二本の三つ編みに結って毛先を黒いヘアゴムでまとめてお尻まで届かせている少女の表情が、突然不気味な笑いになっているのであった。
「くくくく、ここの女の子たちをみんな手下にしてやる。」
少女は着ていたスカートのホックをはずし、下着をずりおろし始めていた。下着をつけていた股のなかからは、大きく勃った肉棒が現われていた。
その少女は、侵略者の下僕にされていた男の子が、やはり髪の毛を長くさせられて女装していたのだった。
(つづく)