目隠しな君

俺はずっと、催眠術とか暗示治療とかヤラセっぽいよな、

所詮心弱い奴を騙してるだけなんじゃねーの?って思ってた。

催眠術に興味があるっていう彼女にもはっきり言ってやったら、


「ちょっとやってあげようか?君みたいな人はすぐかかっちゃうよ」



って言い返された。

へぇ、出来るんだ。



「絶対かからないね!」

「じゃあやってあげる」

「いーよ、そんなの結局、子供だましだからな」

「恐いんだ?」

「こ、怖くなんかねーよ。バカじゃねーの?」 



なノリで結局されることに。



彼女に煽られた俺はムカツキながらも彼女の挑発に乗る。

暗示になんかかかんねーよ、うん、そうにきまってる。

本当は少しドキドキしながら。 



『目をつぶってそこに立ってみて』



物の少ない彼女の家。

壁や天井には少しアヤシゲな色調のよくわからないポスターが張ってある。

その部屋の 真ん中に立たされる俺、



「何だよいったい?」

『いいから。これから可愛くなる魔法をかけてあげる』

「ば、馬鹿じゃねー?」

『"平気"なんでしょ、じゃあ黙って言うこと聞きなさい』



渋々言われたとおりにする。

目をつぶった俺に

ゆっくりと、



―ひた ひた



すごくゆっくりと、



―ひた ひたり



彼女の気配が近づいてくる。

彼女の香水の香りが周りに漂い、

静寂と混ざって俺をやさしく包み込んでいく。

香水の香りと静寂で俺の心を締め付けていくように。

耳元で囁く彼女の声



『さあ、覚悟はいい?でも、恐がらなくていいから、ねっ?』



俺は彼女の手の中に堕ちていく…



彼女の長い両腕と大き目の手がゆっくりと、

ツタが樹木を這っていく様に俺の体に絡み付いてくる。

細い指先が触るか触らないかの距離で俺の全身を撫で回す。



『動いちゃダメ、目も開けちゃだめ』



思わず腰を引いた俺に、ちょっぴり厳しく囁く彼女。

俺を軽く抱きしめたり離れたりを繰り返しながら、全身を執拗に撫で回してくる。



―さわ さわ



―さわ さわぁ



―スッ




「ひゃ!」



心地よい陶酔感のなかで急に脇腹や内股に走った強めの快感。



『あれぇ、どうしちゃったの?今日すごぉく敏感。』

「ち、ちが、」



うまく答えられず、また腰をひく俺に



『何が違うの?こんなに敏感になっちゃって…』



だんだん早く、

イジワルになってくる彼女の指の動きに思わず声が漏れそうになってしまう。



―さわ さわ



―さわぁ さわさわ




ち、ちきしょう、なんでこんなに感じやすく、あっ、ぁぁ、

『ね、立ってられないんでしょ?じゃあこっちに』



部屋の壁に立ったまま押さえつけられる俺。

ガクガクいってる足にも構わずそのまま全身を撫で回す彼女



『敏感ね、ほーら敏感、すごぉく敏感』

どうしてっ、こん、なに。



『否定すれば否定するほど敏感になっちゃうよ』



やさしく、ちょっとイジワルに耳元で囁く。

悔しいけど、信じられないけど、どんどん体が敏感になってしまう。

それまで体の表面をやさしく引っかくように撫で回していた細い指が、

ほんの少し、けれども鋭く、俺の体にめり込む。



「アッ、ああっ、」



とうとう声を漏らしてしまう俺。



『ふふっ、感じちゃったね。一度感じちゃったらもう我慢できないよ 』



―さわさわさわ

―こちょこちょこちょ




「あっ、ひぃっ、くぅぁは、あっ」



思わず足から崩れ落ちる俺。

すぐに彼女に引き起こされる。



『こらぁ、もっとちゃあんと感じなさい』 



何度も壁伝いに倒れ、倒れてはてはやさしく引き起こされて、

また撫でくすぐられる。



「だ、だめぇはは、も、もう立ってらんないよ」



情けなくも泣きを入れてしまう。



『もぅ弱いんだから〜。でもダメ、きょうは壊れるまで感じさせるんだから』 



崩れる俺は彼女に抱かかえながら、ゆっくりとベッドに引き連れられていく…。



―ひた ひたり



―さわ さわぁ



「ねぇ、最初、なんて言ってたっけ?」

「ぇ、さい…しょ?」

「そう、最初。」



俺は今ベッドの上で、彼女に両手足を抑えられている。



「言ったわよね、"催眠術とか暗示治療とかヤラセっぽいよな"って。」



言った、のかもしれない。

けれど今は、その催眠によって全身の自由が奪われて動くことができない。



「だけど今は、私の催眠で君は動けなくなってるんだよねぇ。」

「う・・・あ、そんなことは・・・」

「君は、私の催眠にはまって、抜け出せない。」



―フフッ



耳元に彼女の甘いと息がかかる。

それだけで、すごく・・・タマラナイ、オカシイ、なにか―



「君はこれから、私に壊されちゃうんだよ、楽しみだよねぇ。」



彼女の手が俺の体をゆっくり這う。

閉じた視界の中で、それは蛇に巻きつかれる姿を創造させた。



『手も足も動かせない。
 目も開けられない。
 真っ暗な闇の中。
 君は私に、
 滅茶苦茶に壊される。
 でも・・・
 それが幸せだと思えるようにも、なると思うから。』


 

一言ひとこと力を込めるようにして、彼女が囁きかける。

彼女の言う通りに体は動かない。



「始めるから、楽にしててね。」





彼女は本気でそんなことができると思っているのだろうか。

体は彼女に支配されていても、

俺の心は俺だけのものだ。

そう信じて、耐えるしかないようだ。



―さぁ がさがさ

―すぅ ばさっ



『裸になっちゃったよ。ねぇ、どんな気分?』



―さわ さわり

―ひた ひたり




『黙ってる気なんだ、いいよ。
でも、覚悟してね。』




俺は彼女の催眠で体が動かない。

口も開かない。

彼女が知らないはずはないが・・・



―ひた ひた ひた



『胸ってさ、男の人でも使えるんだよね、
触ってると、とっても気持ちがよくなってくよ。』




―ひたり ひたひた




くすぐったい、体の奥がなんだか熱い・・・



『ほら、真ん中が立ってきた。変だよねぇ、君はオトコノコなのにね。』



―くる くるり

―さわ ささぁ




『ほら、どんな気分か教えてくれるまで続けるよ・・・』



―さわ さわり

―ひた ひたり




『ほおらぁ、教えてよ。君のココはもうこんなに―』


彼女の手が止まる。

『君の体は動かない。動かせない。
 でも、呻いてもいいよ、泣いてもいいよ。
 私に、君のことを教えて・・・』




「ふぅあはっ」

「ゴメンネ、喋れなかったんだねぇ。」



言葉が開放されて、俺の口から声が漏れる。

さっきよりも惨めで、でもそれを隠すことはできない。



『可愛いよ、とっても。』



彼女の手が下のほうに下がっていく、

ゆっくり ゆっくり



―さわ さわ さわ

―ひた ひた ひた




その手の動きとともに、

俺の中のなにかも下のほうに・・・



―すぅ さぁ さわぁ

―ふわ ふわぁ




「うぁあ。さ、わってぇ」

『とっても気持ちいいよね。
でも、まだダメ。君がもっと壊れるまで。』




ただ触られて、撫でられているだけなのに、

彼女の手が通り過ぎた場所は物足りなさでうずく。

もっと触って欲しい。って叫んでる。



―さわ さわ

―ひた ひた




彼女の手は股間のソレには触れず、太ももを撫でる。

「あぁ、おね・・がい・・・します。」



俺は心を、彼女に捧げるを決めてしまった。

どんなに理性が騒いでも、もう止まらない。



『すっかり堕ちちゃったね・・・
 でも私は言ったよ?
 君を滅茶苦茶に壊す。って』



「あ、あぁあっ、ふぁあ・・・」



俺はどこまで堕ちればいいのだろう。

彼女は、俺に何を望んでいるのだろう。



―さわ さわり

―ふわ ふわり  。




彼女の手が足の先まで撫できった。

もう触られていないのは頭ではわかっているのに、

体には強く感覚が残っている。



頭から足の先まで彼女に包まれているようで、

その感覚は或ることをイメージさせた。

そう。まるで俺自身が・・・







『君の体は私の手に囚われた。
 そして心も、私は奪う。』




彼女が何かささやいている。

だけど何か、頭にもやがかかったように何も考えられない。



『君の胸に私の印を刻み付けます。
 君は私のもの。私のドレイ。』




ただ彼女の優しい、甘い声だけが、

頭の中をぐるぐる回る。

意味はわからない。

 

『逆さまの黒い十字架が、君の胸にあります。
 目を開けても見えないけど、
 君が眠ったとき、目を閉じたときにだけ見えます。』




ぼぉっとして、深い湖に沈んでいくような・・・

とても眠いのに、でも目は開いているような・・・



『逆さまの黒い十字架が、君の胸の奥に刻み込まれた。
 さあ、繰り返して・・・「ボクはあなたの物です。」』




俺の中のどこかが、警鐘を鳴らす。

でも、体が・・・口が勝手に開いて、言葉にする。

言葉の意味はわからない。



「ぼくは・・・あなたのもの・・・です」



『そう、いい子ね。「体も心もあなたに捧げます。」』

「からだも・・・ここ ろもあなたに・・・ささげます」



『「ボクを滅茶苦茶に壊してください。」』

「ぼくを・・・めちゃくちゃにこわして・・・ください」



どこかで、何かが折れたような気がした。

大切な何かが、音を立てて崩れていくような。



『よく言えました。
 覚えておいてね、お願いしたのは君なんだよ。』



『それじゃぁ、そろそろ食べちゃおうかな。
 ―君を。ちゃんとよがり狂うんだよ。』




―ひた




彼女は俺に跨るようにし、そのままためらいもなく腰を落とす。



―ぐちゅるっ



それだけですぐにイってしまいそうになるほど気持ちいい。



『イってもいいよ。空っぽになるまで何回でも、いつまでも続けるから。』



―ぬちゃ

―ぬちゃぬちゃっ



『気持ちいい?でも、もっと気持ちよくなるよ。』



―くちゅ ぐちゅぅ
―ちゅっ ちゅく




『だからほら、イっちゃおう。』


「あぁあ、ふぁ〜。」



どぴゅっ ぴゅっ ぴゅー



―ぬちゃぬちゃ

―くちゃ くちゃ




どくんっ びゅっ 



―ぬちゃぬちゃ

―ぎゅっ ぎゅーっ




びくっ びくびくっ



「ふふ、ふふふ、くふふ・・・」



彼女の笑い声を耳にしつつ、

俺の意識は途切れた。


『ほら、、まだ終わらないよ。終わらせないよ。
何回もなんかいでも、君が君で居られなくなるまで―』




真っ暗な視界の中でボクは―

コレが現実の出来事なら、いつまでも続いて欲しい。

コレが夢ならば、覚めて欲しくないと思っている。

いつまでもいつまでも、彼女に溺れ続けていたい。



『とぉーっても可愛いよ。ふふふ・・・』 




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