「ふんふんふ〜ん♪」

 あたしは今、すこぶるご機嫌だった。

 なぜなら今付き合ってる彼に呼び出されたからだ。

 金剛 卓也(こんごう たくや)君っていうんだけど、これがまた陸上部所属で顔も2枚目で、性格も優しくてこれ以上ない人なのだ。

 1年前にあたしから告白したんだけど、いまだによくOKしてくれたものだと思う。

 まぁあたしだって容姿には自信が・・・・・・ない事もない。

 うん、これでも結構、ううん。とびきり可愛い方だと思う。

 そして付き合い始めて1年。ついに彼から呼び出しがあったのだ。

 滅多な事では人がこない、今では廃部となっている心霊研究部の部室の裏に・・・・・・。

 人目を避けるような場所への呼び出し、そして二人はついに一線を超えるのよ!

「・・・・・・はっ!?」

 思わず拳をぐっと握り締めたあたしは、周りの視線を思いっきり集めてしまったらしい。

 あたしは照れ笑いを浮かべながら、そそくさとその場を後にして目的の場所へと向かった。

 宮崎 美里、18歳。思えばこれがあたしの人生最大の分岐点だったのかもしれない・・・・・・

 

「・・・・・・っていうわけでさ」

「はい?」

「だから、別れて欲しいんだ。俺と」

 彼の言葉はあまりに衝撃的で、あたしの頭にはまったく入ってこなかった。

「えっと・・・どうして?」

「実はさ・・・」

 彼が言うには近所に住んでいるお姉さんといい仲になったらしい。今まではずっと姉弟のようだったが、つい昨日告白されたと。

 彼としても悩んだが、そのお姉さんを選んだ。

 そう言う話があたしの耳を右から左へ流れていく。

 通り過ぎているはずなのに、頭のどこかに苔か何かのようにこびりついてはなれない。

「だからさ・・・・・・宮崎!?」

 あたしはその場から駆け出した。

 それ以上聞いてたいなんて思わなかった。

 彼があたしに一定以上の感情を持ってくれてないことは、うすうす気がついてた。

 だって、下の名前で呼んでくれた事なかったから。

 走って走って、学校も飛び出して・・・・・・ようやくあたしは足を止めた。

「悪い事しちゃったな・・・」

 何も言わずに逃げてきた事に罪悪感を感じる。

 せめて何か一言残してくればよかった。

「・・・・・・馬鹿」

 あたしが漏らした呟きは、彼に対してか自分に対してか。

 自分自身にもわかりはしなかった。あるいは両方なのかもしれない。

 あたしはそっと自分のポケットに手を入れた。

 そこにあるのは・・・・・・お財布。

「こんな時は・・・・・・自棄食いよ、自棄食い!」

 本当に馬鹿だとか思うなかれ、こういう時は無理にでも明るく振舞っていたいものなんだから。

 袖で自分の目をぐしぐしやって、あたしは行きつけのファーストフード店に向かって足を向けた。

「って、あれ?」

 だけどあたしはファーストフード店に行き着くことはできなかった。

 いつもと同じ道を歩いていたにもかかわらず、目の前にはファーストフードどころか食べ物の欠片も無さそうな古めかしいお店が目の前に鎮座していたからなのだけど・・・・・・何この店?

 こんな店あったっけ・・・・・・?

「魂縛堂・・・・・・うっわ〜、あやしぃ〜〜〜」

 でかでかと看板に、妙に男らしい文字で書かれた看板はあまりにも怪しかった。

 中に入ると、到底食べられそうもないような鍋がぐつぐつといっていて、それをかき回してるお婆さんとかがいるかもしれない。

 でもって棚には黒とかげの干物とか、蛙の・・・・・・うえぇ・・・・・・

 あ〜駄目だ。気持ち悪くて頭がなんだかくらくらしてきた。

 あたしはその場でさっさと回れ右すると、反対方向に向かって歩きだした。

「いらっしゃいませ」

「にょえぇぇぇっ!!」

 いきなり声をかけられてあたしは我に返った。

 反対方向に歩きだしたはずなのに、あたしは何故か店内にいて、目の前には不健康そうでボロボロの服を着てはいる物のあたしより美人な女の人が立っていた。

 彼の好きなお姉さんっていうのもこんな風に美人なのかなぁ。

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・あれ? さっきあたし我に返ったって。

 我に返ったって・・・・・・何?

「本日お客様がお求めの商品はこちらですね?」

「いや、お求めってあたしは何も・・・・・・」

 あたしの言葉をまぁったく聞いてないらしく、女の人は箱にしまわれた何かを持ってきた。

 それをあたしに渡してくるもんだから、しょうがなく箱を開けてあげる。

 中に入っていたのはペンダントのようだった。

 鎖の先に小さなオレンジ色の真珠みたいなのがついてるんだけど、この真珠もどきはまるで寿命の来た豆電球のように小さな光を明滅している。

 なんとも宝石としても偽者っぽくて、価値なんかないガラクタのように思える。

 だけど、よくよく見てみるとなんだか鮮やかな光を放ってるように見える。

 その光を見つめていると、なんだかこうもっと見ていたいような魅力があって、なんだかそれが神秘的で・・・・・・

パタンッ

「・・・・・・えっ?」

 女の人があたしの手の上の箱を閉じる事で、あたしはぼんやりとしていた頭がハッキリするのを感じていた。

「あまり見つめていると危険ですよ。催眠術をご存知ですか?」

「まぁね。こう、ねむくな〜るとかやって、人を動物みたいにしちゃったり、記憶をいじっちゃったりする奴でしょ?」

「そうです。まぁ実際の催眠術にはかなりの制約がありますけどね。きっちりした信頼関係がないとそうそうかからない事や、相手が嫌だと思う行為をさせる事は出来ない事等。そうした制約を取り払ったものが、このペンダントです」

 あたしは自分の手の中にある箱に目を向けた。

 確かにさっきこれを見てたとき、頭がぼんやりとしてたような・・・・・・

「これを使えば誰にでも簡単に相手を催眠状態にしてしまう事が出来ます。そしてこれを首から下げている人には効果を及ぼしません。使う時には首から下げて普段は服の下にでも隠しておくといいでしょう。後は貴女次第です」

「ふ〜ん・・・・・・いくら?」

 女の人が提示した値段は、効果の割りには随分お買い得だった。

 あたしは自棄食いするつもりのお金でペンダントを買うと、今度こそ店を出て自分の家へと向かった。

「毎度ありがとうございます・・・」

 背中から聞こえてきたその声は、なんだか含み笑いを交えていたような気がした・・・・・・気のせいかな?

 

 家へと帰ってきたあたしは、早速箱からペンダントを取り出すと、真珠・・・仮だけど・・・を見ないように目をつぶってペンダントを首にかけた。

 ペンダントを首から下げて、ようやくあたしはもう一度真珠を見つめた。

 オレンジ色の光が明滅している。凄く薄い光だから肌着程度の布でもこれを隠す事は出来そうだった。

 とりあえず人を催眠状態にする事と、こうして首から下げていると効果がないことはあたし自身で立証済みだ。

 問題は本当にどんな制約もなく簡単に人を自由に出来るのかという所だけど、こればかりは自分で試す訳には行かない。

 でももしそれが本当なら・・・・・・

 あたしが真っ先に考えたのは、やっぱり彼のことだ。

 彼の律儀な性格を考えれば、あたしが別れるのを納得する言葉を返すまではそのお姉さんとは付き合わないはず。

 つまり今このペンダントを使ってあたしの方をより好きにさせてしまえば、まだ相手から奪った事にはならない。

 うん、奪うんじゃないんだ。守るんだ。彼はあたしの彼なんだから。

 あたしの方が先に付き合ってたんだから。

 そう考えると、ペンダントの力を借りてまでなんてちらっと覚えた罪悪感も薄れていくような気がした。

 だけど・・・失敗は許されない。

 相手にどんな命令でも聞かせる事ができるかどうかを確認できるまでは、迂闊に使う訳には行かない。

 失敗しても笑って誤魔化せるような相手といえば・・・・・・

コンコン

「お姉ちゃん、いる?」

「聡美?」

 声ですぐに分かる。

 あたしの妹の聡美だ。

 あたしが美里で、妹が聡美。

 なんだかひっくり返すだけで同じ名前になってしまうようなややこしい名前だけど、きっとこれにも深い意味があるはずとあたしは由来について親に尋ねた事がある。

 答え、ひっくり返すと同じ名前って面白そうだったから。

 ・・・・・・・・・本気でグレちゃいそうになったよ、あたしは。

「あのね、今日お父さんとお母さん帰りが遅くなるんだって。だから夕御飯は二人で残り物で食べてなさいってさっき電話が・・・・・・」

 ・・・・・・ざっつ、ちゃ〜んす!

 両親がいなくて妹と二人きり。しかもこの子なら失敗しても冗談で笑ってくれそうな相手!

 あたしは同じ職場で共働きの両親に感謝の祈りを捧げた。

「お姉ちゃんってば、聞いてる?」

「はいはい、聞いてますよ。ねぇ聡美、ちょっと入ってきてよ」

 あたしは聡美を部屋に招きいれた。

 このあたしに似て可愛らしい妹だ。

 それでもって、このあたしに似てちょっと童顔。

 ・・・・・・この童顔が彼の心を離れさせたんじゃないかと思うと、今まで可愛いと思ってた自分の顔にもちょっと腹立つけど、それはそれ。

「実はね、今日学校の帰りにこういうのを見つけたんだけど」

 そう言ってあたしは服の下に隠しておいたペンダントを取り出して、鎖の部分をつまむと聡美の前でぷらぷらと揺らし始めた。

 別に服から出して見せているだけでも効果はあると思うんだけど・・・なんとなく気分の問題である。

「へぇ・・・・・・なんだか綺麗ね」

「そうでしょ。ほら、よくわからないけど光るのよ。おもちゃみたいだけど、それがなんともいえず可愛くてさ。つい衝動買いしちゃったの」

「うん・・・・・・可愛いね・・・・・・」

 あたしの話にも、聡美はどこか上の空だ。

 ペンダントの真珠を見ているんだろうけど、その目は何処かうつろで何も見ていないように見える。

「このペンダント、凄く綺麗でしょ。オレンジの光が輝いて・・・それが綺麗で・・・目を離す事が出来ない」

 ゆらゆらと揺れるペンダントにまるで同調するように、聡美の頭もゆらゆらと揺れてきている。

 本格的に催眠にかかってきているみたい。

 それを見てあたしも、本格的な催眠術師みたいに言葉をかけていく。

「オレンジの光があなたの心に染み込んでいく・・・光があなたの心を覆っていく・・・光に覆われて真っ白になっていく・・・・・・もう何も考える事が出来ない。ほら、ペンダントの動きが止まってきた・・・この動きが止まると聡美の動きも止まるよ・・・身体と一緒に心も止まるの。でもあたしの声だけは聞こえるわ・・・・・・あたしの言葉があなたの心・・・ほら・・・ほら・・・ほら・・・止まっちゃった。聡美の心も止まったよ。もうあたしの声しか聞こえない。あたしの声だけが聡美の全て・・・・・・」

 聡美はうつろな瞳をしながら、ぼんやりと座っている。

 少し口が半開きになっていて、深い催眠状態にある事が素人目にもよくわかる。

「聡美・・・・・・あたしの声が聞こえる?」

「うん・・・・・・聞こえる」

 あたしが男の子だったら、聡美の姉じゃなくて兄だったら、妹だとしてもこのままいやらしい事をしてしまうかもしれない。

 でもあたしは別にそっち系の趣味はない。無いんだけど・・・・・・

「それじゃあ聡美、まず・・・・・・服を脱いで」

「うん・・・・・・」

 あたしに言われて聡美は何も疑う事無く、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。

 べ、別にそういう趣味は無いってば!

 ただほら・・・どこまでの命令に従うのかは調べとかないといけないし。

「下着もちゃんと脱ぐのよ。生まれたままの姿をちゃんとあたしに見せなさい・・・・・・」

 あたしのひたすらとんでもない命令に、聡美はうつろな目をしたままで従ってくれる。

 そんな姿を見ているとなんだか、あたしはぞくぞくとしてきてしまった。

 自分の言葉が相手の全てを支配しているという快感。

 それが間違いなく、あたしの心の中で芽生えている事に気がついてしまったからだ。

「・・・・・・脱いだよ、お姉ちゃん」

「そうね、じゃあ今度は・・・・・・あたしに聡美のオナニーを見せて頂戴」

「・・・・・・うん」

 あたし何を言ってるんだろう・・・・・・でも、なんだか自分を止められない。

 まるであたしがあたしじゃないみたいで、それは聡美と同じようにペンダントに操られてるんじゃないかってそう思ったりもする。

「んっ・・・・・・あ、はぁっ・・・あんっ!」

 でもこれはあたし自身だ。

 あたしの言葉に従って床にへたり込みながら少し小振りな胸に手をやってゆっくりともみ始めた妹を前に、あたしは征服欲というか支配欲に酔いしれてしまっている。

「ん・・・・・・そうよ。聡美・・・これからあなたは凄く敏感になるの・・・いつもの3倍は感じる事ができるわ。いい・・・ほら、このペンダントを見て・・・揺れてるでしょう。ゆらり・・・ゆらり・・・ほら・・・もう少し触るだけで快感を感じる事ができる。ね・・・気持ちいいでしょう?」

「あっ!んぅ・・・・・・はぁっ、あ、あんっ!はぁぁんっ!」

 胸を揉む行為自体に変化は無い。だけどあたしの暗示を受けて明らかに聡美は、さっきよりも数倍感じているようだった。

「あぁっ・・・・・・イ、イッちゃ・・・おねえちゃっ・・・!」

「駄目。あなたはまだイケないわ」

「・・・・・・ひぅっ」

「いい、聡美・・・・・・あなたの身体は今までに無い快感を感じている。だけどあたしがいいって言うまで決してイク事は出来ないわ。・・・・・・ほら、嘘だと思うなら好きなだけ試してみなさい。あなたはイケない・・・・・・あたしが許可するまで絶対イケない・・・・・・」

「あっ!やぁん!ひゃぅ・・・・・・あっ、あっ、あっ!」

 あたしの言葉は聡美にとって絶対だ。

 聡美は胸への刺激だけではいけない事に気付いて、既にぐっしょりと濡れ始めていた自分の下腹部にあるまだまだピンク色の可愛らしい花びらの所まで指を持っていくと、その指でその中をかき回し始めた。

 すぐ側で見ているあたしの耳には、そのたびにじゅぷ、ちゅくっといやらしい音が聞こえてくる。

 そんな妹の様子を見つめているあたしも、なんだか少し濡れてきちゃったみたい・・・・・・

 右手はペンダントを手にしたまま、左手は自分の秘部へと導いた。

「んっ・・・・・・」

 やっぱり・・・・・・しっかり濡れてる。

 あたしはしばらく聡美と同じように自分で自分の中をいじっていたけど、ふとそんな事を自分でする必要なんてないことに気がついた。

 あたしはスカートと下着を脱いで、下だけ裸になると聡美の目の前に腰をおろした。

「ふぇ・・・・・・」

 自らが自らに与える快感と、一向に訪れない絶頂と催眠のせいで、聡美の目は完全に焦点を失っていた。

 その表情は今まで見たこともないほどに淫蕩だ。

 自分で思考する事も出来ない今の聡美には、快感だけが全ての感覚に違いない。

「聡美・・・・・・あたしのここを舐めて・・・ここから流れるあたしの液を飲めば、あなたは絶頂を迎えることができるわ」

「う、ん・・・・・・ん・・・ちゅ・・・ちゅぷ・・・んちゅ・・・」

 聡美はあたしの声に反応すると、自分の秘部をいじる指の手は止めないままに、あたしの股間に顔をうずめると舌で必死にあたしの秘部を舐め始めた。

「あっ、うぅ・・・ん・・・はぁ・・・上手よ・・・もっと、もっと飲まないといけないわよ。ほら・・・もっと舐めなさい」

「ちゅっ、ちゅる・・・ぺろ・・・ちゅ・・・はぁっ、ん、ちゅ・・・」

 自分自身いきたくて必死な聡美は、懸命にあたしの秘部を舐め上げる。

 時には舌で舐め、吸い・・・正直な所オナニーぐらいしか経験の無いあたしには十分すぎる刺激だった。

「んぅっ・・・はぁ・・・イク・・・聡美、あなた、も・・・イッていいわ。あたしがイクと同時にあなたも・・・んぁんっ! イクことが・・・できる、から・・・・・・」

「うん、お姉ちゃん・・・・・・一緒に・・・ん、ちゅ・・・・・・ちゅ・・・」

「あ・・・う、ぁ・・・・・・はぁ、聡美ぃ・・・・・・」

『あ、ふあぁぁぁぁぁぁぁんっ!!』

 あたしと聡美はまったく同時に上り詰めた。

 あたしの頭も催眠にかかったように白くなっていく・・・・・・

 

「ふぅ・・・・・・危ない危ない」

 なんとか聡美より先に目を覚ましたあたしは、聡美にもう一度暗示を与え始める。

「聡美・・・・・・目を開けなさい」

「うん・・・・・・」

 聡美はあたしの声を聞くとゆっくりと身体を起こして目を開けた。

 ひょっとしたらあたしみたいに意識がとんじゃった訳じゃなくて、催眠状態から冷め切ってなかっただけなのだろうか?

 とりあえず聡美に服を着るように命令する。

 ゆっくりと着替え終わった聡美にあたしはゆっくりと言い聞かせるように語り掛けた。

「いい? 今日あたしはここであなたと珍しい色の真珠の話を皮切りにして、宝石の話で盛り上がったの。それが真実。今あったことは全て忘れるの。いいわね?」

「うん・・・・・・忘れる」

 こうやって忘れさせておかないと・・・・・・さすがにこのままじゃああたし達の今後の関係が心配だしね。

「いい子ね。あたしが今から3つ数えると、あなたはすっきりと催眠から目が覚めていつもの聡美に戻るわ。でもあたしが『淫らなオレンジ色の虜』って言ったら、またすぐに今みたいに催眠状態になるの。わかった?」

「うん・・・・・・」

「いい子ね。聡美、あたしが『淫らなオレンジの虜』って言ったらあなたはどうなるの?」

「催眠状態になるの・・・・・・今と同じなの・・・・・・」

「そうよ。あなたはその事を普段思い出すことは出来ない。だけど心の奥底ではそれを知っていて、あたしが『淫らなオレンジの虜』っていうと、必ず今と同じようになるの。忘れないで」

「うん・・・忘れない」

「じゃあ、催眠はといてあげるわね。1・・・2・・・3・・・はいっ!」

「あ、あれ?」

 あたしの合図で聡美の目に光が戻ってきた。

 どうやらうまくいったみたいだ。

「どうしたのよ、聡美?」

「え? あ、ううん・・・・・・なんでもない」

「そう? あ、それよりそろそろ晩御飯食べないと。残りものっていったって用意はいるんだし・・・・・・ほら、行きましょ」

「うんっ!」

 あたしの言葉に聡美はいつもと代わらない笑顔で頷いた。

 

「昨日はごめんね・・・・・・」

「いや、いいよ。俺の方もちょっと唐突だったと思うし・・・・・・」

 翌日あたしは、自分から誘って彼を昨日の場所へと連れてきた。

 ここまで来て、あたしはまだちょっと迷ってる。

 だけど昨日ネックレスを縛心堂で買った時に比べれば、よっぽど迷いはなかった。

 昨日の聡美の痴態があたしの脳裏に蘇る。

 彼もきっとああなるんだ。あたしの前でうつろな瞳をして、あたしの言葉に盲目的に従う人形になる。

 あたしにはそれができる。

 そう思っただけで、体がじんと痺れてくる。

「ええと・・・・・・ひょっとしてそのお姉さんと、もう付き合い始めてたりしてるの?」

「いや・・・答えはまだしてないんだ。やっぱり俺は今は宮崎と付き合ってるんだからまず宮崎との事を解決してからと思ってさ」

 ・・・・・・可哀相な金剛君。

 もしもう付き合ってるのなら・・・あたしは諦めたかもしれない。

 今のあたしにはペンダントがある。

 どんな男の子だって、あたしの物にしちゃう事ができる。

 他の人ともう付き合い始めてるなら、あるいは別れるとはっきりその人に告げていたなら、あたしは彼の幸せを奪うつもりなんて無かった。

 でも、付き合い始めたわけでもなければ、別れると相手に言った訳でもない。

 それは彼のけじめであり、優しさ。だけど・・・・・・

 だからこそ今はあたしの彼だ。まだそのお姉さんのものじゃない。あたしだけの彼だ。

 金剛君・・・・・・ううん、卓也はあたしのものだ。

「そっか。ねぇ金剛君、これ・・・覚えてる?」

「ん、どれだい?」

 あたしはそう言って服の下からペンダントを取り出した。

 もう後には引けない。

「いや、見覚えは無いけど・・・・・・」

「本当に? 本当に見覚えが無いの? ねぇ、もっとよく見て。とても大事な事なの・・・・・・」

 あたしの言葉に、卓也は記憶の糸を探ろうとするようにペンダントを凝視する。

 彼が知ってるわけが無い。

 だってこれは、あたしが昨日彼と別れてからかったばかりの物なんだから。

 だけど卓也は自分が忘れているんだと思って、ペンダントを見つめ続けた。

 わざと似は見えないようにほんの少し揺らしてみる。

 ペンダントの先についている真珠のような球がオレンジの光を明滅させながら・・・・・・ゆらり・・・ゆらり・・・・・・

 その動きにか輝きにか、卓也の目は光を失ってうつろになっていく。

「ねぇ、綺麗でしょう。もうこの光から目が離せない。光が心に染み渡る。もう逃げられない・・・・・・」

 ・・・・・・逃げられないのは卓也なのか、はたまたあたし自身なのか。

 じっとペンダントを見つめていた卓也はあたしの誘導とペンダントの魔力で、深い催眠状態へと落ちていった。

「・・・・・・ごめんね。でも・・・・・・あなたが好きだから」

 あたしはもう一度、言葉に出して謝った。

 結局自分の我儘なんだ。そんな事はわかってる。だけど止められない。自分を抑えられない。

「卓也・・・あたしの声が聞こえるよね」

「ああ・・・・・・聞こえる」

「卓也はあたしの事、好き・・・・・・?」

「宮崎が・・・? もちろん、好きだよ」

「隣のお姉さんより?」

「・・・・・・よく解らない。だけどあの人に感じた感情と、宮崎に感じる感情は違う事がわかる。宮崎の事は好きだけど、それは・・・・・・」

 愛じゃない。

 卓也が口にするより早くにあたしは彼の言いたい事に気がついた。

「本当に? 本当にあたしに感じるのは愛じゃない?」

「・・・・・・ああ」

「違うわ。あなたは自分を隠したいだけ。本当に愛しているのはあたしなの・・・・・・あたしに感じているのが愛で、お姉さんに感じているのが憧れなのよ」

 あたしはそう言いきると、卓也にそっとキスをした。

「口に出してみて・・・・・・『俺は美里を愛してる』」

「・・・・・・俺は美里を愛してる」

「そう、その調子・・・そのまま何回も・・・何回も言うの。言えば言う程その気持ちが真実となってあなたの心に染み渡るわ。そして言えば言う程あたしへの愛が募っていくの・・・・・・さあ」

「・・・・・・俺は美里を愛してる」

「・・・・・・俺は美里を愛してる」

「・・・・・・俺は美里を愛してる」

「・・・・・・俺は・・・・・・美里っ!!」

「きゃぁっ!!」

 いきなりの事にあたしは催眠誘導中であることも忘れて、悲鳴をあげてしまった。

 あたしの背中に地面の冷たさが、唇には唇の温かさが伝わってくる。

 そう、卓也があたしを押し倒してキスしてきたんだ。

「美里・・・・・・」

「んっ・・・・・・む・・・ちゅ・・・・・・ぷぁっ・・・・・・ん」

 少し荒々しく入れて来られた舌があたしの口の中を蹂躙する。

 でもこれは・・・・・・

 あたしは気がついた。あたしに恋しすぎてしまったあまりに耐え切れなくなってあたしに襲い掛かってきたんだ。

 あたしと一つになりたいから・・・・・・

 その願いはあたしも同じだ。でもさすがにこれは・・・・・・

「んっ、ちゅ・・・・・・ぷぁっ! はぁはぁ・・・・・・あ、あなたは美里を大事におも・・・・・・ひゃうっ!」

 突然走った快感に、あたしは誘導を中断させられた。

 彼の指があたしの胸の先端をきゅっとつねったのだ。

 電流が走りぬけるような衝撃に、あたしは思わず声をあげてしまっていた。

「だ、だから・・・・・・ひゃぁんっ! あっ・・・・・・ふぁ・・・ん・・・・・・」

 彼の舌が、指があたしの双丘を刺激する。

 あ・・・・・・ん・・・・・・舌が温かくて・・・気持ちいい・・・・・・

「美里・・・・・・美里。お前は・・・・・・俺の物だ」

 卓也の言葉があたしの心を痺れさせる。

 身体だけじゃない、心に感じる快感。

 ・・・・・・作り物でもいい。彼があたしを思ってくれる。あたしも彼を思っている。

 今はこれ以上の催眠なんて必要ない・・・・・・

 今度はあたしの方からもう一度キスをする。

「ちゅ・・・・・・ん・・・ちゅる・・・ちゅ・・・・・・」

 舌としたが絡み合い、お互いの唾液が交じり合って、淫らな音が耳に届く。

 その間も彼はその手であたしのお腹の辺りをなでさすっていた。

 くすぐったいような、気持ちのいいような、変な気分だ。

「ん・・・・・・ちゅ・・・あっ、ひゃぅんっ!」

 あ・・・・・・ん、そこはぁっ!?

 卓也の指があたしの秘部に触れると、そのすぐ側にある陰核をそっとこすったの。

 やっぱりあたし、凄く敏感になってる・・・・・・

「可愛いよ、美里・・・・・・」

「あっ、ひゃぁんっ! やっ、んっ・・・・・・あぁっ!」

 や、中に・・・・・・指っ! あっ・・・・・・はぁ、気持ち・・・・・・いい・・・あぁ・・・・・・卓也ぁ・・・・・・

「そろそろいい・・・・・・よな?」

「え・・・・・・? あぅぅっ!!」

 痛っ!!

 あたしの中に卓也の肉棒が入ってきたのが分かる・・・・・・分かるんだけど・・・・・・やっぱり痛い。

 痛いとは聞いていたけど、まさかこれほどなんて。

 でも・・・・・・

「美里・・・・・・大丈夫か?」

「卓也・・・・・・うん・・・大丈夫・・・いいよ、動いて」

 彼があたしを気遣ってくれる。

 それだけであたしは痛みが引いていくような気がした。

「じゃあ、動くぞ・・・・・・ん・・・はぁ・・・」

「あ・・・はぁ・・・あぁ・・・卓也・・・卓也ぁ・・・・・・」

 あたしはただひたすら彼の名を呼びながらその背に手を回して抱きしめる。

 強く、強く、それはあたしの想いと同じほどに強く。

「美里・・・・・・俺、もう・・・」

 卓也の声が聞こえてくる。

 あたしはそれを聞いて少し気分が軽くなった。

 彼だって経験はないんだ。だからそんなに長持ちしない。

 あたしはペンダントでまだイッちゃあ駄目といおうか迷ったけど、これからはいつでも出来るんだし、慌てる事なんてない。

「うん・・・・・・いいよ、出して」

「う・・・・・・・・・あぁぁぁぁっ!」

 一言大きな声を上げると、卓也はあたしの中に一気に射精した。

 熱く、熱く・・・・・・・・・

 

「なぁ美里・・・・・・お前って本当にこういうの好きだな」

「なによぉ。いいでしょ別に。それとも卓也はいや?」

「そんな訳ないだろ?」

 そういって笑いかけてくる卓也。

 今あたしと卓也は、あたしの家のあたしの部屋でいつものようにして2人交わり終わったばっかりだった。

 あれからは特に大きな問題もなく、あたしと卓也ははれて恋人となる事が出来た。

 それもこれも、あのペンダントのおかげなんだけどね。

 そうそう、ペンダントといえば・・・・・・実は今もあたしの首にかかっている。

 すっかり支配しちゃう事の楽しさを覚えたあたしは、あの後も何度か卓也や、時にはまた聡美を催眠にかけて楽しんでいる。

 もっともそんな事はこの2人はつゆほども知らないのだけど。

 この前もちょっと卓也にかわった暗示をかけてみたんだけど、その時の卓也ってば・・・・・・

「ふふ・・・・・・」

「なんだよ美里。人の顔見て笑い出したりして・・・」

「ヒ・ミ・ツ♪」

 あたしは適当にはぐらかしてその場は切り抜けた。

 さぁて・・・・・・今度はどんな暗示を与えて遊ぼうかなぁ。

 そんなことを考え出すと、あたしの興奮はとどまる所を知らないみたいだった・・・・・・

 

〜FIN?〜





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