room

 

 

 

 

ぼくの元に1枚のCDが届いたのは冬の終わり

それは何も書かれていない封筒に入っていた

 

 

思えばその封筒を見た瞬間に

ぼくは堕ちていたのかもしれない

怪しいとは思いながらも

結局聞いてしまったのだから・・・

 

 

真っ白な封筒

透明のケースに入った真っ白いCD

 

CDを取り出す

 

コンポに入れる

 

スピーカーからは雑音

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ため息をつき取り出しボタンを押そうとしたそのとき

雑音はふっと消え

代わりに声が聞こえてきた

 

それは女性の声だった

どこかで聞いた事のあるような

初めて聞くような

耳に優しい

甘い

そんな声だった

 

 

♪こんにちは

 聞いてくれてありがとう

 私はユイよろしくね

 

突然で悪いんだけど

 イヤホンとか持ってる?

 できればヘッドホンとかが良いな

 私の話を聞いて欲しいの・・・

 

 

声が途切れる

ヘッドホンを付けろってことなのか

 

持っていたヘッドホンを接続し

ぼくはユイの声を待った

 

 

 

 

 

 

♪うれしいな

 ヘッドホンで聞いてくれるのね

 

!?

 

思わずぼくはヘッドホンをはずした

なぜぼくがヘッドホンを使っているとわかったんだろう

イヤホンを使うことも考えられるはずだ

 

なぜ?

 

 

ナゼ?

 

 

 

床に転がるヘッドホンからはまた声が聞こえてくる

 

 

♪私の話・・・聞いて?

 

 

 

はっきりいって怖かった

 

ただ

 

ユイの声が

 

妙に

 

やさしく

 

甘く

 

 

   ココが最後の

   引き返せる処だったんだ

   ココが

   最後の

 

 

ぼくは震える手でヘッドホンを拾う

恐る恐るヘッドホンを着ける

 

 

 

♪あなたは今しあわせ?

 毎日が充実してる?

 

 もしあなたが今とてもしあわせで

 心が満たされているなら

 ここで電源を切って

 私の話はあなたには必要ない

 

 

この世の中に

幸せな人が何人いるんだろう?

 

ぼくはユイの声を待った

 

 

 

 

♪しあわせじゃないのね

 じゃあきっと

 私の話が役に立てる

 

 あなたがしあわせじゃないのは残念だけど

 少し嬉しいな

 

 

 

 今から

 私の言うとおりにしてみて?

 

 怖がらないで

 

 私はあなたをしあわせにしたいの

 

 あなたを救ってあげたいの

 

 

 

 いい?

 まず目を瞑って

 

 そう

 

 次は深呼吸

 

 心を静かにして

 今は私の声だけに集中して

 

 ほかの事は全部頭の中から無くすの

 

 

 

 どう?

 今どんな気持ち?

とてもリラックスした気持ちだと思うの

 

 からだの力も抜いて

 そう

 どんどん力が抜けていく

 疲れも

 どんどん抜けていくね

 

 

 

 どう?

 気持ち良いでしょう?

 今あなたはね

 『部屋』にいるの

 わたしとあなただけの世界

 ここにはね

 誰も入ってこれない

 誰も邪魔しない

 

 この部屋で私が

 あなたを癒してあげる

 今よりもっと気持ち良くしてあげる

 あなたをきっと

 しあわせにしてあげるよ・・・

 

 

そこは

   不思議な部屋だった

   白い壁

   白いテーブル

   白いソファ

   白いベット

   そして白いドア

 

 

 

♪ドアが見える?

 そこを開けるとあなたは

 あなたの世界に戻る

 あなたが戻りたいときに

 戻ることが出来るわ

 

 外の世界には

 嫌なこと

 辛いこと

 たくさん溢れてる

 

 そんな世界に疲れたら

 またこの『部屋』に戻ってきて

 『鍵』は・・・

 

 

 私の声にあなたのすべてを預ければ

 きっとまたこの『部屋』に戻ってこれるわ

 

 

 今日はここまでにしましょう

 

 そんな顔しないで?

 私はいつだってあなたの傍にいるわ

 さあ

 ドアを開けて・・・

 

 

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

耳障りな雑音で目を覚ました

あの部屋はいったいなんだったんだろう

白い・・・『部屋』・・・

 

 

コンポからCDを取り出す

真っ白なCDに『room』と小さく書かれたCD

 

 

 

 

何だ?

 

 

何かが

 

 

何かおかしい

 

 

♪考えちゃダメ

 考えちゃダメよ

 

 

 

CDを取り出しケースに戻す

room』と小さく書かれたCD

 

 

何だろう

凄く気分がいい

それに・・・

 

 

その日から

ぼくは毎日オナニーをした

ユイの声を

思い出しながら

 

 

次の日ぼくは

もう一度ユイの声が聞きたくなって

CDをコンポに入れた

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ぼくは勃起していた

ユイのことを思い出すと

どうしようもなく興奮した

それは

恋に似ていた

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

しかし

いつまで待っても

ユイは現れなかった

 

ぼくはユイの声を思い出そうとした

 

ユイの声は

ぼくの頭の中で

鮮明に思い出された

 

ぼくは必死に

自分のものを扱いた

 

 

 

 

2枚目のCDが届いたのは

初めてユイの声を聞いた一週間後だった

 

 

真っ白な封筒には

小さな字で

 

 

key

 

 

 

続く(予定)




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