「ただいまー」

妹の文香(ふみか)が買出しから帰ってきた。

「おう、おかえり」

「あれ、もう帰るの?」

帰り支度をしている満(みちる)を見て文香が言った。

「これから図書館にも行かないといけないから。じゃあ例の件、よろしく」

「わかってるって。明日どうすればいい?」

「そうだね…」

満は何かが書かれている紙を取り出した。

「…とりあえず明日も午後から図書館に行く予定だから…午前中にまた来るよ」

「そうか。今日は何も忘れるなよ」

こいつはうちに来るといつも忘れ物をする。

「今日こそは大丈夫だよ。じゃあ、また明日」

そう言って満は帰っていった。

微妙に違和感がある気がするが気のせいだろう。

「めしの支度でもするか」

買ってきた物は……キッチンにあるかな。

そう思って居間を通った時、見覚えのないものが見えた。

よく見るとそれは満の上着だった。

「あはは…相変わらずだね…」

着替えを終えて部屋から帰ってきた文香がつぶやく。

「…まぁ、明日にでも返すさ……でも悪いな、一緒に行ってやれなくて」

「ううん、別にいいよ。それより…今度は、何なの?」

文香は不安そうに聞いてくる。

『例の件』で今までの事を思い出したんだろう。

「えーと……あ、心理テストを作ったから試してくれって」

「え?心理テスト?今回は意外と普通だね」

ふぅ、と肩の力を抜く文香。そこまで警戒されてる満が気の毒に思う。

中学からの付き合いである月城満(つきしろみちる)は、好奇心の塊のような奴だ。

興味本位の実験だけで、いろんな事件を起こしたりもする。

俺たち兄妹も今まで散々な目にあってきた。

今回も俺としては厄介事でしかない。

「そういうわけでお前にも協力を頼む」

「まぁ、心理テストくらいならいいけど…前みたいにはならないよね?」

この前は夜の学校で召喚魔法だっけ?散々怒られたよな……

「安心しろ。さすがに心理テストじゃ天使も悪魔もよび出せない」

「それもそっか。じゃあ後で部屋に行くね」

文香は『例の件』を承諾すると、夕食の支度を始めた。

「……今日のめしは何だ?」

「うん、時間も遅いから手っ取り早く食べれるものにしようと思って」

「そうか。それで出来合いのものばっかりなんだな」

ピザを持った文香の手が一瞬ピタリと止まる。

そして何事もなかったかのように再び手を動かし始めた。

「1時間もかかったのは遠くまで行ったからなんだろうな。疲れなかったか?」

俺はわざとやさしく言う。

「あぅぅ……お兄ちゃん、これはね…」

文香は遅れた理由を話し始めた。大方、雑誌にでも夢中になっていたのだろう。

話し続ける文香をよそに、俺は1時間前のことを思い出していた…

 

「…なんだって?」

俺は文香を買出しに行かせてから、満に本題を切り出させた。

「だから、催眠術だよ。よくTVとかで見るでしょ?」

「それはわかるけど…」

どうして俺がやらなければならないのか。

「一番頼れるのが君だから」

「……お前、読心術にもはまったことあるだろ?」

「それはさておき。ねぇ、頼まれてくれないかな?誰にでも出来るんだよ?」

こいつごまかしやがった…

「別に誰でもいいんだろ?じゃあ、俺じゃなくてもお前がやれば…」

「それは無理だよ。僕が何かやろうとするとみんな警戒するからさ」

一応自覚はあったのか…

「まぁ、親にも見放されると自覚もするよ?」

「……それはご愁傷様」

こいつだけは敵にしたくないな……

 

………それから渋々OKを出すと、満は『今日やって明日報告してね』と言った。

「まぁ、どうせ暇だからいいんだけど……」

初心者がたった数時間やっただけで成功するのか?

まぁ、満は『単なる研究だよ』とか言ってたし、相手が文香だ。失敗してもなんとかなるだろ。

コンコン

『お兄ちゃーん、居るー?』

そうしてるうちに文香がやってきた。

「おう、入っていいぞー」

ガチャ

「あれ?部屋が片付いてる」

「おい、入ってくるなりそれはないだろ?」

「だって、さっきまで大分散らかってたじゃん」

確かに少しは掃除したけど……『さっき』っていつの間に入ったんだ?

「まぁいっか。で、心理テストってどんなやつなの?」

「その前に……」

確かそこらに置いたはず……あ、あった。

「これを見てくれ」

「え?なんで?」

俺がろうそくを出して火をつけると、文香は怪訝そうに聞いてきた。

「何でも、この心理テストは落ち着かないとだめだから、これでリラックスさせるらしい」

「…相当凝ってるね。で、見てるだけでいいの?」

「リラックスしながらな」

「ふぅーん、わかった」

そう言うと文香はじっとろうそくの火を見つめる。

「………」

「………」

だんだん文香の目が虚ろになってくる。

「…じっと見つめていると、だんだんまぶたが重くなってくる。

 だんだんとまぶたが重くなり、静かに閉じていく」

するとどうだろう。文香の目が閉じてしまった。

………まさか、な……ただの演技だろ……

でも、確かめない限りは報告のしようが無い。

「……シャツを脱いでくれ」

いくら演技でも、さすがに冬にこれは無理だろうからな。

「…はい」

そして文香は自分のシャツに手をかけた。

……文…香?…もしかしたら本当に…

そう考えた瞬間、俺の頭の中でスイッチが切り替わった感じがした。

今まで抑えてきた文香への想いが一気にあふれ出す。

「……これから20数える。数え終わると目を覚まして…俺にお前の全てをくれ」

自分でも訳がわからずそんな言葉をつぶやいた。でも、もう自分でも止められない。

俺が20数え終わると文香は目を覚ました。

「あ……お兄…ちゃん…。…あ…あの…」

頬を染めた文香は何か言いたげに口をパクパクさせている。

「文香……セックス、しよう」

言いたいことを言われた文香は一瞬驚いた表情を作ったが、さらに頬を染めて近寄り、

「……いい…よ、お兄ちゃん。私を…あげる」

キスをした。とても簡単であまりにも幼稚な…けれども温かみのあるキスだった。

俺らは服を脱いでベッドに座ると、再びキスをした。

「ちゅっ…んっ…」

先ほどとは違い、今度は相手を求めるだけのディープキスだった。

「んんっ!ぷっ…ちゅる…」

舌を絡めあいお互いを感じあう。

二人の口唇を離すと口から糸が引いた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

お互いに荒い吐息を吐き、熱のこもった目で見つめあう。

「文香…入れても、いいか」

「……」

文香は無言で頷くと、ベッドに横になり足を広げた。

俺は少しためらいながらも文香の中に入れた。

「いたっ」

文香がか細い声をあげる。

「大丈夫か?」

「大、丈夫。大丈夫だから…抜かないで」

文香は弱々しく懇願してくる。

「せっかく…せっかくお兄ちゃんと一つになれたんだもん。……もう、離れたくない」

その一言で俺の理性は一気に吹き飛び、文香がとてもいとおしく思えてくる。

「愛してるよ」

俺は一言そう言って軽くキスをすると、腰を動かし始めた。

「はぁ、あっ、んんっ!」

はじめはゆっくりだった動きが次第に激しくなる。

「くっ、ふぁ!はぁ!んんっ!ああぁ!」

しばらくして俺は絶頂を迎えようとしていた。

「文香!出しても、いいか!」

「んっ!はっ!あん!いいよ!中に、私の、中に、出して!」

返事を聞くと俺は文香の中に射精した。

「あああぁぁ!文香、好きだ!」

「私も!私も、お兄ちゃんのこと、大好き!」

二人とも絶頂を迎え、俺は息を荒げながら文香の隣に転がった。

「はぁ、はぁ……。私の中に、熱いのが…お兄ちゃんのが、いっぱい」

文香は半ば放心状態で呟いている。

「はぁ……綺麗な、月だね…」

隣にいる文香は夢うつつに窓を見つめていた。

「ああ…そう、だな」

――窓の外には満月が輝いていた――

 

…それから数日後…

「でもひどい話だよねー」

「あぁ、まぁな」

俺らは夕食を食べながら話をしていた。

「せっかく心理テストを作ったのにもう飽きたって」

あの日のことは『二人で心理テストをやった』ことにした。

「……まぁ、そうだな。あいつが長続きしなかったのは珍しい」

満が言うには、

『催眠術より面白そうなものを見つけたんだ。しばらく会わないだろうけど気にしないで。』

だそうだ。それ以来、あいつの姿は見ていない。

「まぁ、あいつのことだからまたどこかで迷惑かけてるんだろ」

「そうだろうね。でも、ちょっと心配だな…」

文香は少し表情を暗くする。

「そんなことより片付けいいのか?見たいテレビがあるんだろう?」

「いっけない!早く片付けないと」

文香は慌てて後片付けを始める。

「皿、割るなよ」

俺は部屋に戻ろうとしたが引き返して、

「そうだ、文香」

「なぁにー」

 

『後で俺の部屋に来いよ。久しぶりに遊んでやる』




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