暗い部屋

 

 「あれ、俺今どこにいるんだろう?」

俊夫は奇妙な意識の中にいた。

「たしか、葉子と一緒にレストランに行ったはずなのだが…」

今、彼の周りには自分がどこにいるのか確かめる術を与えてくれるものは何もなかった。どこまでも広がる暗いくらい世界。

自分の体を確かめる事もできないくらい深い闇のそこに俊夫はいた。

 今日、彼は3か月前に知り合った葉子と共にレストランで食事をしていた。高級至高なフランチレストラン、暗めの照明の室内で

葉子とテーブルを挟み向かい合い、ワインを舐めながら、彼らは燭の火を眺めていた。

「そこから先は…」

ぼんやりとした意識の中、彼は更に自分のあいまいな記憶を泳いでいた。

 そうだ、葉子が催眠術の話をしたんだった。俺はそんなもの馬鹿馬鹿しいと一瞥したが、彼女本気で怒ってたな。それからどう

したんだっけ?嗚呼、そうだった、なら試してみようという話になって、実際に彼女に催眠術を試してもらうことにしたんだった。

 暗い店内、俺達の座るテーブルには燭が一本、ゆらゆらと火を揺らしていた。彼女は俺にその火に集中するように言って、そ

れからどうしたんだっけ?

 

 

 

(あなたはだんだん気分が良くなっていきます)

 

 

 

 ぼぉんと俊夫の頭の中に彼女の言葉が思い出された

 嗚呼そうだ、だんだん気分がよくなっていったんだ。

 

 

 

 ぼぉん

 

 

 

(あなたはだんだん体が重くなり、でも心地よい感覚に満たされます)

 

 そうだそうだ、そんなことを言っていたな、そしたら体がだんだん重くなって…

 

 ぼぉん

 

 

 ぼぉん

 

 

 ぼぉん

 

 俊夫の体に心地よい波のようなリズムが絶えず流れる。暗闇の中で平衡感覚を失った彼の体はまるで波に揺らされるかのように

彼自身から起こる脈のリズムに揺らされていた。

 

 

「もうすっかり催眠にかかったようですね」

 葉子の声だ。

 俊夫はあたりを見渡したが、彼女の姿は見えない。それに、彼女の声はまるで俊夫の中から聞こえるかのように「ぼぉん」という

リズムと共に彼の体の中を隅々まで回り反射しているように聞こえた。

声を出そうとしたが出ない。舌が動かないのだ。それだけじゃない。手が重い、足が重い、全てが重い。重くて動けない。

ただ葉子の声を聞いていることしか今の彼にはできないのだ。

「さぁ、あなたの体はもう動きません」

彼女が続ける。

 

 「あなたは達磨です」

 彼女が言った

 「達磨なんですから手足はいりませんね。邪魔な手足は取ってしまいましょう」

 と聞こえると暗闇の中から彼の太ももに何か触れた。

 女性の手だ。

 「あなたの右足は…無くなる」

そう聞こえるが早いか、俊夫の右足の太ももから下の感覚は完全になくなった。本当に足が無くなってしまったようだ。

 「さぁ、右足の切除が終わりました。次は左足、そして右手、左手も同じようにとってしまいましょう」

 

 

 

 

 

 

 それから、どのくらい時間が経ったろうか、俊夫にも正確な時間はもう分からなかった。ただあのあと葉子が同じようにして、自分の手足を取ってしまった。それだけが今の彼には認識できた。

 

 不思議と痛みのないその切断手術は、暗闇という特殊な環境と混じり、俊夫に異常ともいえる性的興奮を湧きたたせていた。

 

 

ふぅ、ふぅ、という俊夫の荒い鼻息が、闇の中で響いていた。

 

 「あなたはいやらしい達磨さんです。」

 葉子の声がまた聞こえる、。

 「あなたはいやらしい達磨さんです。いやらしいあなたはわたしにちんぽを掻いて欲しくて仕方がありません」

 彼女のその声が聞こえると俊夫は何も抵抗なしに彼女に自分の陰茎を掻いて欲しいと思うようになった。

 「いいですよ、特別に…ちんこ、しごいてあげますよ?」

 俊夫は自分のモノに柔らかい手が包み込むように巻きつくのを感じた。ゆるゆるとモノを包み込んだそれはゆっくりと上下運動を

開始した。

 

 

 

 

 

 

 規則正しく運動を繰り返す手は、陰茎に血管が浮きでるまで大きくなってもその運動をやめない。

 

上 

 

 

 

 

 

 

「気持ちいい?…でもだしちゃ駄目。あなたは私がいいと言うまで射精することができません」

 さらに彼女が続ける。

「今から入るのは私の小指。あなたはこれが抜けるまで、射精することができません」

 

葉子の声がぼんやりと頭に響く。と、俊夫は尿道に違和感と鈍痛を覚えた。細長い何かが逆流して彼の中に亀頭の先から入ってくるのだ

 

「これが私の小指、あなたはこれが抜けるまで、射精することができません」

もう一度彼女がそうつぶやいた。

 陰茎と尿道からの強烈な電気が走るような刺激で俊夫は軽く達してしまった。しかし射精することはなかった。短い射精感が連続で起こるのだが、いくら

出したくても、彼女の「指」がつかえて外に出せないのだ。

 

「あなたは、私の手と指のとりこです。あなたはこの後、私が指を抜くまで、何度でもそのまま達する。でも、射精はできない」

 

 連続する絶頂の中で俊夫は最後に彼女のそんな言葉を聞いた。直後、菊門にまた指が入り、自分の体を内側から刺激する感覚に襲われた。

三方からの怒涛の刺激は、俊夫の意識を飛ばすには十分な力を持っていた。

 

 そうして、彼は暗闇のなか、自分を襲う絶頂にのまれていった。

 

 

 

 きぃ、というドアのきしむ音、安い古ぼけたラブホテルの一室から葉子は出てきた。シャワーを浴びたばかりの彼女はシャンプー独特

の良い匂いを発しながら、フロントへ向かった。

「すいません、30●号室なんですが、中に人がいるので、料金はその人持ちでいいですか?」

フロントのスーツを着た店員は変に律儀な客にいぶかしげな顔をしながら

「はぁ、構いませんが」

そう答えた。

「そうですか、では、お願いします。」

にこり、と彼女は笑うと出口へとむかった。

「さて、彼はいつになったら起きられるかしらね?」

外にでると彼女はそう呟いた。

先ほどとは異なる、妖艶な笑みで笑いを彼女は漏らすと、俊夫の眠っている部屋の窓を眺めまたくすりとわらい、帰路へとついた。

 

その頃の30●号室では、薄暗いカーテンを閉め切った部屋の中、男の荒いあえぎ声だけが部屋にこだましていた。

 両手足を手錠で固定され、目隠しをされ、アナルと尿道に麺棒を突っ込まれた男がそこにいた。

ただ荒い息を上げながら、彼の呟く言葉は「ヨウコ」の一言だけであった。




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