成人向け催眠小説 序章・モノローグ 「ホワイトシープ」≪物語の館≫



モノローグ・序章「ホワイトシープ」≪物語の館≫







※前作、「物語の館」を見ていないと話が分からないです。







1人暮らしを始めて今月で半年。
季節は春から夏に変わり、俺は相変わらず今日も夏休みをダラダラと過ごして
いた。
今も部屋のフローリングの上で仰向けになり、天井をぼーーーっと眺めている。

やる事がない。とにかく予定がないのだ。


ここの生活にも慣れてきた…といった感じか。
しかし、未だに1人の寂しさってやつには慣れ切れていない。
実家は俺と妹と姉、そして父と母の5人家族だ。
実家にいた頃は毎日家族みんなで飯を食っていたからか、
1人での食卓は何か物寂しさを感じてしまう。
あんなに五月蝿いと思っていたのに、今となってはそれも懐かしい。
まぁ…良いか悪いか分からないが、いつかそんなのも薄れていくのだろうと思
う。
実際、ここに移りたての頃より大分マシになっていた。
ホームシックもそんなに長続きしなかったし案外寂しさなど来週には消えてい
るかもしれない。
人間の適応力はすごいと中学校の生物の先生もボヤいていたしな。


再び眠気が襲ってきて、瞼が段々下がってくる。
眠気でぼやけた意識の中で、不意に大学の友人から教えてもらった店の名前が
頭をよぎった。







《ドリームスレイブ》。







夢の奴隷という意味だが、友人は


「催眠術で癒やしてくれるんだ。それが凄くてよ!
俺も馬鹿にしてたんだが…今ではもうすっかり常連になっちまった!
言っちまえば、あそこは大人のテーマパークさ。
ただし、ちとマニアックだけどな。お前も行ってみろよ!ホレ、紹介状だ!行
って来い!」


と言っていた。その後「だから借金チャラにして☆」なんてぬかしやがったが、

しかし正直興味は湧いた。


そして先日、俺はそのドリームスレイブとやらに行ってみた。
テレビでやってる催眠術なんて所詮はヤラせだろうと思っていたし、
実際催眠術なんてどうせかかりっこないとも思っていた。
しかし、その帰り道に俺はそんな考えを見事に180度変える事となったのだっ
た。
簡単に言えば催眠術はすごく気持ちよかったのだ。それはもうびっくりするぐ
らいに。

ドリームスレイブは人気のないビル群の裏路地の奥の奥の奥にある。
其処はまるで世界から隔離されたようなところだ。
壁のペンキは剥げた結構古いビルだ。中に入ると全面鏡ばりのロビーに出る。

どこを見ても鏡、鏡、鏡鏡鏡………床でさえ鏡のように俺の姿を映している。
なんだか怖くなってきて、やっぱり帰ろうかなんて考えていたら、
女性が一人フロントの奥からやってきた。


彼女は名を深津水面と言った。


友人からもらった紹介状を渡すと彼女はニヤリと淫靡な笑顔を見せ、
俺を地下一階の白い扉へ案内してくれた。
扉には「ホワイトシープ」と英語で書いてあったが、
深津さんが言うには通称≪物語の館≫と言うらしい。
俺が扉を開け、部屋に入る瞬間に振り向くと、
深津さんが「ようこそ♪」と笑っていた。


背筋にゾクッと悪寒が走っていったのは何故だったのだろうか・・・。



そして、僕が物語の館から出てフロントに帰ってくると、
深津さんは僕に会員証をくれた。
会員証には灰色の兎のデザインが施してあった。
どうやら、ここに来れば来る程に段々会員の位が上がっていくというシステム
らしい。
僕が店を出ると深津さんは「また来てねぇ♪」と、あの笑顔を俺に向けた。


俺は会員証を財布から取り出してみた。
灰色の兎のデザイン。金色のドリームスレイブの文字。
しばらく考えてみた後に、俺はあの店に再び行くことに決めた。
どうせ今日もこのまま暇な1日を過ごすなら、少しぐらい楽しい思いがしたか
ったからだ。


いや、理由としてはもう1つある。


始めてあそこに行った時、俺の中にある孤独が…
どうしても消えない寂しさが紛れた気がしたのだ。


俺は身支度を整えて扉を開けた。







俺はこの時に気付くべきだったのだ。

純白の羊の毛が徐々に灰色になっていくように…
俺の心が欲望にまみれになっていることを…俺は気付けなかった。






迷える純白の羊は、逃げ惑う灰色の兎へと姿を変えた。







モノローグ「ホワイトシープ」 了

次回「グレーラビット」《逃走心》





























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