幽霊催眠


※淦・緋・赫・紅・朱=あか
  禍津=まがつ
 彼岸花=ひがんばな、リコリス



こん、こん、こん。

貴方のお部屋の扉をノックする音が聞こえます。

誰だろう、こんな時間に。

真夜中の零時を過ぎています。

こん、こん、こん。

貴方のお部屋の扉をノックする音が聞こえます。

「…お兄ちゃん、入っても…いい?…」

かちゃ。

貴方は扉を開けました。

真っ暗な廊下に立っているのは、貴方の可愛い妹。

寝巻き姿で枕を抱えています。

貴方は、この歳の離れた小さな妹が可愛くて仕方が有りません。

どうしたの?眠れないの?

「…お兄ちゃんと一緒に寝ても…いい?…」

一人で眠れなくなるのなら、怖いテレビ番組なんて視なければいいのに。

そう思いながらも、貴方は内心、可愛い妹と一緒に眠れる事が嬉しくて仕方が有りません。

ベッドの上に妹を上げて、布団を分け合います。

一人用のベッドは狭いから、妹と寄り合って、もっと身体をくっ付けて。

部屋の明かりを消して、真っ暗になると、すぐ傍に居る妹の顔しか見えなくなります。

部屋の中が真っ暗になると、抱き合うようにして一緒に布団の中に居る妹の、静かな息遣いを感じます。

“沙耶”。怖いの?

ぎゅっと、しがみ付いて来る温もりに、貴方は問い掛けます。

「…お兄ちゃんと一緒だから、平気…」

大丈夫、怖くないよ。幽霊なんて居ないから。

「…ううん、幽霊は居るよ…」

小さな、可愛い、妹が、ぎゅっと、抱き付いて来ます。

「…でも、“沙耶”と一緒だから、大丈夫、なの…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大丈夫、平気、怖くないの。

“沙耶”が、お兄ちゃんを、守ってあげるから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は一人きりで立っています。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は一人きりで立っています。

右を向いても、左を向いても、前を向いても、後ろを向いても、貴方の目に映る物は闇ばかり。

闇ばかりが、貴方の目の前に広がっています。

生暖かくて重苦しい闇を掻き分けて、身体を動かしてみても、貴方は何処にも辿り着けない。

闇に囚われた貴方は、それでも不安に思う事は有りません。

貴方はもう何度もこの闇の中に来た事が有るから。

ほら、誰かが貴方の手を握ってる。

優しい温もりを感じるから、目に見えなくても平気、怖くない、貴方は一人じゃない。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

呼吸をすると、貴方の胸の中に、生暖かくて重たい闇が、じんわりと染み込んで来る。

どろり、とろぉり、とろとろ、どんより。

呼吸をすると、貴方の胸の中に、生暖かくて重たい闇が、じんわりと染み込んで来る。

貴方の胸の中が、生暖かくて重たい闇に満たされて、貴方が段々と闇に染まって行くのが分かりますか。

まっくらくらの暗闇の中、貴方の身体は闇に染まって、周囲の暗闇に溶け込んで行きます。

まっくらくらの暗闇の中、貴方の身体は闇に染まって、周囲の暗闇に呑込まれて行きます。

静かで、暖かくて、不思議な安らぎを感じる、闇。

貴方の手を誰かが握っていてくれるから、闇の中に自分が消えてしまっても、怖くない。

ほら、呼吸をする度に、貴方の身体は闇に染まる。

貴方の身体が闇と一体化すると、どんどん存在が希薄になって、力が抜けて行きます。

重く、闇の底に沈むかの様に。軽く、闇の面に浮き上がるかの様に。

ゆっくり、ぐるぐると、闇に溶けた貴方は、深い闇の中を漂い続ける。

闇、闇、闇…まっくら闇。

ほら、誰かが貴方の手を握ってる。

「…行こう、お兄ちゃん…」

ぽぉっ、と。 闇の中に浮かび上がる赤い蝋燭。

闇の中に、一つ…二つ…。

闇の中に、無数の灯が点ります。

右と左、二列に分かれて、赤い蝋燭の道が出来ます。

真っ暗な闇の中、手を牽く声に誘われて、貴方は灯火の道を進んで行きます。

蝋燭の火が揺らめく度に、闇に溶けた貴方も、ゆらゆらと揺れながら。

ゆらゆらと、揺れながら。

右も左も分からない、まっくらくらの暗闇の中を、貴方は二人で進んで行きます。

右も左も分からない、まっくらくらの暗闇の中を、貴方は二人で進んで行きます。

蝋燭の灯りに照らされた闇は、蝋燭の火に薄められて、少しだけ、掻き分けるのが容易になります。

貴方は、何処までも続く闇の中、何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

貴方は、何処までも続く闇の中、何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

真っ暗な闇の中、何処までも続く蝋燭の道を、誰かに手を牽かれて歩き続けます。

ぐるぐると、同じ所を堂々巡りしているのではないかと、闇の中に目を凝らしてみても、見えるのは目の前の蝋燭の道だけ。

遠くに離れるに連れて濃くなる闇のせいで、向こうがどうなっているのか分かりません。

貴方は誰かに手を牽かれて、蝋燭の道を進んで行きます。

貴方は、何処までも続く闇の中、何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

貴方は、何処までも続く闇の中、何処までも続く蝋燭の灯を追って、ゆらゆらと揺らめく焔の道を辿って行きます。

真っ暗な闇の中、何処までも続く蝋燭の道を、誰かに手を牽かれて歩き続けます。

やがて、赤い蝋燭の一本道は、赤い蝋燭の十字路に突き当たります。

道の広がりは、前に、後ろに、左に、右に、道が繋がっています、前に、後ろに、右に、左に。

赤い蝋燭の一本道は、赤い蝋燭の十字路に突き当たります。

真っ暗な闇の中の、真っ暗な暗ぁい地面には、格子模様の白線が引かれています。

赤い蝋燭の十字路を、左から右に、右から左に、青い蝋燭がゆっくりと流れて行きます。

赤い蝋燭の十字路を、右から左に、左から右に、青い蝋燭がゆっくりと流れて行きます。

やがて、青い蝋燭の流れが止まり、何処からともなく歌が聞こえて来ます。

とおりゃんせ、とおりゃんせ、此処は何処の細道じゃ

ああ、そうか、これは、横断歩道だ。

そうです、横断歩道。 これは、横断、歩道、です。

とおりゃんせ、とおりゃんせ、此処は何処の細道じゃ

とおりゃんせ、とおりゃんせ、此処は何処の細道じゃ

赤い蝋燭と、青い蝋燭に囲まれて、ゆらゆらと影が揺れる真っ暗な世界に、カチカチと時計の針が進む音が、貴方の耳に次第に大きく聞こえて来ます。

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

段々と、意識が戻って来る。
時計の針に引き戻されて、貴方の意識が闇の面へと浮かび上がる。

十、九、八、意識が、七、六、五、段々と、四、三、二、目を覚ます、一、零。

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

此処は、貴方の部屋。

時計の秒針が時を刻む音と、妹の吐息だけが、貴方の耳に聞こえて来ます。

真っ白な天井を見詰めて、仰向けに寝ている貴方は、可愛い妹を起こしてしまわない様に、身を竦めたまま、ゆっくりと、静かに、目を閉じます。

すぅー。すぅー。妹の寝息が、すぅー。すぅー。貴方を再び眠りの淵へと引き戻します。

十、九、八、時計の針の音が遠くなる。七、六、五、段々と視界が暗くなる。四、三、二、再び闇の中へと沈んで行く。一、零。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

ほら、誰かが貴方の手を握ってる。

「…行こう、お兄ちゃん…」

格子模様の白線を渡って、赤い蝋燭の道を追い掛けます。

只管、前へ、前へと進み続けます。

貴方が呼吸をする度に、闇が貴方の臓腑に染み込んで行って、貴方はより深く闇と一体化して行きますが、貴方の手を誰かが握っていてくれるから、自分が消えてしまっても、怖くない。

ほら、呼吸をする度に、貴方の身体は闇に染まる。

貴方の身体が闇と一体化すると、どんどん存在が希薄になって、力が抜けて行きます。

重く、闇の底に沈むかの様に。軽く、闇の面に浮き上がるかの様に。

ゆっくり、ぐるぐると、闇に溶けた貴方は、深い闇の中を漂い続ける。

ゆっくり、ぐるぐると、闇に溶けた貴方の意識も、深い闇の中へと消えて行く。 消えて行く。

闇、闇、闇…まっくら闇。

格子模様の白線を渡って、赤い蝋燭の道を追い掛けます。

右と左、二列に分かれて、ゆらゆらと揺らめく蝋燭の火を追い掛けて。

ゆらゆらと蝋燭の火が揺れると、闇と同化した貴方も揺れる。
ゆらゆらと蝋燭の火が揺れると、闇と同化した貴方の影も揺れる。

ゆらゆらと揺れる蝋燭の火は、真っ赤に咲き乱れる彼岸花。

蝋燭の火を見詰めて。炎の中に彼岸花が咲き乱れている。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

風が吹くと、ゆらゆらと揺れる、真っ赤な真っ赤な彼岸花。

彼岸花の咲き乱れる夕暮れ時の山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

ぽつんと、道端に、電気の切れた電信柱が立っていますが、気にする事は有りません。

電信柱の影に誰かが立っているような気がしますが、気にする事は有りません。

そっと、手を握ると、優しく握り返してくれるから、怖くない。怖くない。怖くない。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

風が吹くと、ゆらゆらと揺れる、真っ赤な真っ赤な彼岸花。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

ぽつんと、道端に、壊れた電話ボックスが立っていますが、気にする事は有りません。

電話ボックスの中に誰かが立っているような気がしますが、気にする事は有りません。

そっと、手を握ると、優しく握り返してくれるから、怖くない。怖くない。怖くない。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

風が吹くと、ゆらゆらと揺れる、真っ赤な真っ赤な彼岸花。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

ぽつんと、道端に、古びたお社が立っていますが、気にする事は有りません。

お社の中から誰かが覗いているような気がしますが、気にする事は有りません。

そっと、手を握ると、優しく握り返してくれるから、怖くない。怖くない。怖くない。

彼岸花の咲き乱れる山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

道端に停められた車の中の影、怖くない、怖くない、怖くない。

山の向こうから聞こえて来る鳥の鳴き声、怖くない、怖くない、怖くない。

真っ暗なトンネルを潜り抜けて行く、怖くない、怖くない、怖くない。

彼岸花の咲き乱れる薄暗い山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

風が吹くと、ゆらゆらと揺れる、真っ赤な真っ赤な彼岸花。

赤く燀る彼岸花に照らし出される貴方の影が、ひらひらと宙を舞う、烏揚羽に変わる。

彼岸花の咲き乱れる昏い山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

彼岸花の咲き乱れる昏い山道を、誰かと手を繋いで貴方は歩いています。

やがて、彼岸花の咲き乱れる道の先に、線路と踏切が見えて来ます。

かん、かん、かん、警報を鳴らしながら、黒と黄色の縞模様の竿が下りて来ます。

左右交互に点滅する橙色のランプ。

遮断機の警報音は、電車が近付くに連れて、貴方の耳に次第に大きく響いて来ます。

かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、かん、

段々と、意識が戻って来る。
踏切の音に引き戻されて、貴方の意識が闇の面へと浮かび上がる。

十、九、八、意識が、七、六、五、段々と、四、三、二、目を覚ます、一、零。

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

此処は、貴方の部屋。

時計の秒針が時を刻む音と、妹の吐息だけが、貴方の耳に聞こえて来ます。

真っ白な天井を見詰めて、仰向けに寝ている貴方は、可愛い妹を起こしてしまわない様に、身を竦めたまま、ゆっくりと、静かに、目を閉じます。

すぅー。すぅー。妹の寝息が、すぅー。すぅー。貴方を再び眠りの淵へと引き戻します。

十、九、八、時計の針の音が遠くなる。七、六、五、段々と視界が暗くなる。四、三、二、再び深い闇の中へと沈んで行く。一、零。

ゆっくりと、闇に溶けて行く。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

まっくらくらの暗闇の中、右も左も分からない、そんな場所に、貴方は二人で立っています。

ほら、誰かが貴方の手を握ってる。

「…行こう、お兄ちゃん…」

遮断機の竿の上がった踏切を渡って、彼岸花の咲き乱れる暗い夜の山道を進みます。

より深く、山の中へ、山の中へ。

貴方が呼吸をする度に、闇が貴方の臓腑に染み込んで行って、貴方はより深く闇と一体化して行きますが、貴方の手を誰かが握っていてくれるから、自分が消えてしまっても、怖くない。

ほら、呼吸をする度に、貴方の身体は闇に染まる。

貴方の身体が闇と一体化すると、どんどん存在が希薄になって、力が抜けて行きます。

重く、闇の底に沈むかの様に。軽く、闇の面に浮き上がるかの様に。

ゆっくり、ぐるぐると、闇に溶けた貴方は、深い深ぁい闇の中を漂い続ける。

ゆっくり、ぐるぐると、闇に溶けた貴方の意識も、深い深ぁい闇の中へと消えて行く。 消えて行く。 消えて行く。

闇、闇、闇…まっくら闇。

彼岸花の咲き乱れる山道を進みます。

二人で、手を繋いで。

彼岸花の咲き乱れる山道を進みます。

風が吹くと、ゆらゆらと頭を垂れる彼岸花は、まるで貴方達を手招きしているかの様。

闇、闇、闇…まっくら闇。

彼岸花の咲き乱れる山道を進みます。

二人で、手を繋いで。

彼岸花の咲き乱れる山道を進みます。

ゆらゆらと頭を垂れる彼岸花は淦く緋く赫く明々と紅く朱く燀えて、まるで貴方達が夏の夜空に見た大輪の花火の様。

あの日も二人で手を繋いでいて、今も二人で手を繋いでいて、一緒に、真っ暗な闇の中へと、二人で、真っ暗な闇の中へと、貴方達は歩いています。

咲き乱れる彼岸花。

貴方達の周りをくるくると廻る彼岸花。

貴方の耳に聞き覚えの有る歌が聞こえて来ます。

かごめかごめ、かごのなかのとりは、いついつでやる、よあけのばんに、つるとかめがすべった、うしろのしょうめん、だぁれ。

くるくると、貴方の周りを、くるくると、赤く燀る彼岸花が、くるくると、廻り続けています。

地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天上道、また地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天上道、輪廻の華がくるくると、紅く赤く朱く輝きながら、火の粉を揚げて貴方の周りを、くるくる、くるくる、くるくるくるくる、廻り続けています。

かごめかごめ、かごのなかのとりは、いついつでやる、よあけのばんに、つるとかめがすべった、うしろのしょうめん、だぁれ。

揺れる、揺れる、世界が廻る。

かごめかごめ、かごのなかのとりは、いついつでやる、よあけのばんに、つるとかめがすべった、うしろのしょうめん、だぁれ。

廻る、廻る、世界が揺れて。

貴方の後ろの正面に、大きな池が広がっています。

真っ暗な淀んだ水の底に、道は続いています。

真っ暗な冷たい水の底に、道は続いています。

ほら、誰かが貴方の手を握ってる。

「…行こう、お兄ちゃん…“小夜”と一緒に…」

二人で手を繋いで、真っ暗な水の中に、二人で手を繋いで、真っ暗な闇の中に、足を踏み入れた水の中には、真っ赤に燀る彼岸花が、無数に咲いています。

ぐるぐる、ぐるぐる、貴方の上に、下に、右に、左に、前に、後ろに、真っ赤に燀る彼岸花が、無数に咲いています。 真っ赤に燀る彼岸花が、無数に咲いています。

貴方の身体は、水の底に沈んで行く。
ゆっくりと、水の底に沈んで行く貴方の手を、誰かが握ってくれています。
貴方は、水の冷たさも、呼吸の苦しさも忘れて、咲き乱れる彼岸花の中を、ゆっくりと、水底に向けて、沈んで行きます。水中で燀える赤い華の中を、ゆっくりと降りて行く。ゆっくりと、降りて、逝く。
くるくると、廻りながら、ゆっくりと、降りて逝く…。

貴方の、意識が、遠くなる。

十… 九… 八… 七… 六… 五… 四… 三… 二… 一…    ……零。


目を覚ました貴方は、ベッドに横たわって、真っ暗な天井を見上げています。

部屋の中には、咲き乱れる彼岸花。

闇と一体化した貴方の身体は、まるで死人の様に、ぴくりとも動きません。

ようこそ、死後の世界へ。

暗くて冷たいこの場所で、“小夜”は、ずっとお兄ちゃんの事を待ち続けていたの。

すぅっと、目の前の虚空に、貴方と向かい合う様にして、白い経帷子を着た少女が、姿を現します。

寂しかったよ、お兄ちゃん。

貴方にそっと触れる少女の手は、とても冷たくて、とても優しくて、この闇の中で、一人で待ち続けていた少女が貴方に向ける笑顔は、とても愛(かな)しくて、とても哀(かな)しくて、貴方は振り払う事が出来ません。

ずっと、一緒に居ようね、お兄ちゃん。

ずっと、ずっと、一緒に居てね、お兄ちゃん。

此処は、嘘と現実の境界。

彼岸の原を越えて、開かずの踏切を渡り、黄泉の水底に身を沈めた貴方は、もう戻れない、もう目を覚まさない。

永遠に。此処で私と、二人きりで、ずっと、ずっと、ずっとずっとずっと、一緒に居られるの。

私を見て。私を一人にしないで。お兄ちゃん。

少女の冷たい唇が、貴方の唇に重ね合わされます。

大好き。お兄ちゃん。

少女に口付けされると、貴方の心に、少女への思慕が湧き上がります。

貴方はもう、帰りたくない、帰りたくなくなります。

ずっと、この暗闇の世界で、少女と二人、寄り添っていたい。

そう、思うようになります。

……そうだよね、お兄ちゃん……?

頷いて、お兄ちゃん。

……うん、頷いたね。

これでもう、お兄ちゃんはずっと“小夜”と一緒なの。

ずっとずっと、“小夜”と一緒に此処に居られるの。

良かったね、お兄ちゃん。

目の前に浮いている少女が、ゆっくりと降りて来ます。

仰向けに横たわる貴方に被さる様に、身体を重ね合わせて、ぎゅっと、抱き付いて来ます。

帯が解けて、経帷子の前が開いて、膨らみ掛けの小さな胸が剥き出しになって、こりこりと硬くなった乳首を押し付けられると、貴方の身体に電気の様にぞくぞくっと、背徳的な欲情が走り抜けます。

……おちんちん、おっきくなってるの……。

“小夜”の手が貴方のあそこに伸びます。

好奇心に満ちた、嬉しそうな、恥かしそうな表情で、貴方の敏感な部分に触れられると、どくんどくんと熱く脈打つあそこから、耐え難い快楽と歓喜が、じわじわと、貴方の全身に、広がって行きます。

……お兄ちゃん、えっち、なの……。

そっと、愛しむかの様に、貴方の亀頭を愛撫する少女の掌が、貴方のカウパーで汚れて行きます。

……妹におちんちん撫でられて興奮してるの……変態さんなの……。

裏筋に垂れたカウパーをくりくりと指先で弄んで鈴口に塗り付けながら、“小夜”が貴方の耳元に口を寄せて囁きます。

……へ・ん・た・い・さんっ、なの……。

びくんっ、と。貴方のあそこが反応します。
“小夜”の吐息が耳を擽ると、首筋から脳に直接電気が走り抜けるような、ぞくぞくっとした感覚が湧き上がります。

はむっ、はみはみっ。

“小夜”に耳朶を甘噛みされて、耳の穴に舌を差し入れられると、それだけで貴方の身体は痺れるような快楽を堪えきれず、勝手にぶるぶるっと震えてしまいます。

“小夜”の吐息の匂い…。“小夜”の髪の匂い…。“小夜”の甘い体臭…。
息をするだけで、頭がくらくらとして来ます。貴方の脳に染み込んで来る。
“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。“小夜”の匂い。
気持ち良過ぎて涎がとろーんと垂れて来ていますよ。
はぁーはぁー、はぁーはぁー、どんどん息が荒くなる。どんどん息が荒くなります。

ちろちろと舌先で耳を弄ばれながら、…変態ぃ…。…お兄ちゃんのへんたぁい…。耳を唾液塗れにされながら、…またおちんちん硬くなったの…。ぎゅっと抱き付いて来る“小夜”の太ももにおちんちんを挟まれて、…えっちなお汁、竿の根元まで垂れて来てるの…。“小夜”の指先で亀頭と裏筋、鈴口をいっぱい擽られて、…ねぇ、お兄ちゃん。…“小夜”の事、…好き?

好きっ!

“小夜”の事、…好き?

大好きっ!!

“小夜”の事、…好き?

しゅきっ、しゅきぃっ、らいしゅきぃっ!!!

じゃあ…“小夜”の言う事、何でも聞いてくれる?

頷いて、お兄ちゃん。

……うん、頷いたね。

これでもう、お兄ちゃんは“小夜”の言いなりなの。

“小夜”の命令した通りになるの。

お兄ちゃんは、もう、“小夜”に絶対に逆らえないの。

大好きな“小夜”の物になれて良かったね、お兄ちゃん。

……命令、なの。

お兄ちゃん、“小夜”の事を、もっともっと好きになって。

“小夜”以外の女の子の事は考えちゃ駄目、なの。

お兄ちゃんの心の中で、“小夜”への想いがどんどん膨らんで行くの。

お兄ちゃんの頭の中は、“小夜”の事だけで一杯になって行くの。

だから、他の事はどんどん頭の中から消えて行くの。

お兄ちゃんは大好きな“小夜”の事だけ考えていれば幸せになれるから、

他の事なんて全部忘れてしまっても構わないの。

忘れて。

忘れなさい。

“小夜”以外の事は全部忘れて。

“小夜”の事と、気持ちのいいえっちな事だけで頭の中を一杯にして。

お兄ちゃんは“小夜”の物。

お兄ちゃんは“小夜”だけの物。


……命令、なの。

お兄ちゃんは“小夜”の物。

お兄ちゃんは“小夜”だけの物。

だから…お兄ちゃんのおちんちんは“小夜”の物。

そうだよね?

頷いて、お兄ちゃん。

……うん、頷いたね。

お兄ちゃんのおちんちんは、“小夜”の物。

だから、私に許可無く勝手に使っちゃ駄目なの。

お兄ちゃんはもう、勝手にオナニーして気持ち良くなっちゃ駄目なの。

気持ち良くなりたかったら、“小夜”にお願いして、おちんちん弄って貰わなきゃ駄目なの。

お兄ちゃんのおちんちんは、“小夜”の物。

だから、私に許可無く勝手に使っちゃ駄目なの。

お兄ちゃんはもう、勝手におしっこしちゃ駄目なの。

おしっこしたい時は、『“小夜”様のおちんちんを使わせて下さい』、ってちゃんとお願いしなきゃ駄目なの。

お兄ちゃんのおちんちんは、“小夜”の物。

だから、私に許可無く勝手に使っちゃ駄目なの。

お兄ちゃんはもう、勝手に射精しちゃ駄目なの。

イキそうになったら、ちゃんと『“小夜”様、もうイッちゃいます!!!』って大きな声で報告しなきゃ駄目なの。

“小夜”が『お兄ちゃん、イッてもいいよ』って許可を出すまでは、絶対に射精しちゃ駄目なの。

お兄ちゃんは“小夜”の命令に逆らえない。

お兄ちゃんは“小夜”の命令に逆らわない。

“小夜”に命令されると、凄く気持ちがいい、そうだよね。

“小夜”の言い付けを守ると、もっともっと気持ち良くなれるの。

だから、お兄ちゃんは、“小夜”の命令に従うの。

お兄ちゃんの無意識が命令を覚えているから、お兄ちゃんが“小夜”に命令された事を忘れてしまっていても、おしっこや射精の時が来たら、体が勝手に命令を実行しちゃうの。

分かった? お兄ちゃん?

命令を理解したら頷いて。

……うん、頷いたね。

いい子、いい子。

大好きだよ、お兄ちゃん。

ご褒美に、気持ちいい事してあげるね。

だけど、命令は守らなきゃ駄目だからね。

射精しそうになったら、ちゃんと報告する事。

“小夜”の許可が出るまで、射精はお預けなの。


それじゃあ、足を開いて。

お兄ちゃんの足が、ゆっくりと、勝手に開いて行くの。

いやらしく勃起したおちんちんを、無防備に曝け出すの。

命令、なの。

男の人の急所を、一番痛くて気持ちのいい場所を、大好きな“小夜”に全部見せなさい。

……お兄ちゃんのおちんちん、“小夜”に見せた途端に一杯カウパーが垂れて来たの。

変態。ド変態。妹に汚らしい物見せて盛ってんじゃないわよ。

……ほら、ひくんひくんって反応してるの。

お兄ちゃん、“小夜”に罵られたり、いぢめられたりすると感じちゃうんだね。

どうしようもない変態さんなの。

……ふぅーっ。

お兄ちゃんのおちんちん、“小夜”が息を吹き掛けただけでイッちゃいそう。

でも、まだ射精しちゃ駄目。

“小夜”のお口で、大好きなお兄ちゃんのおちんちん、一杯気持ち良くしてあげるの。

“小夜”がいいよって言ったら、お口の中に一杯射していいから、それまで我慢。

だけど、命令なの。

お兄ちゃんのおちんちんの感度は、普段の二倍、ううん、三倍だよ。

おちんちんを虐められると、普段よりずっと気持ちがいいのに、射精は出来ないの。

いっぱい、我慢した方が、びゅーって射す時に気持ちがいいからね。

ほら、行くよ。 おちんちんの先っぽ、咥えちゃうよ。

はむっ……。(ちゅちゅちゅぅぅぅーーーっっっ)ぷぁっ。

どう? 亀頭だけ、ちゅーちゅー吸われると、刺激が強過ぎてイケないでしょ。

お兄ちゃんのおちんちんの先っぽ、充血してカリ首が凄く太くなってる。

いやらしいおちんぽ。血管が浮き出てる。

こんなにびきびきに勃起させて、まるで発情期の犬みたいなの。

さっきから腰がかくっ、かくっ、って、勝手に動いちゃってるよ。

浅ましいお兄ちゃん。恥を知りなさい、この変態。

でも、もうお兄ちゃんは“小夜”の事と、えっちな事しか考えられなくなっちゃってるの。

“小夜”にいやらしい事をされて、射精する事しか考えられなくなっちゃってるの。

動物以下だね、お兄ちゃん。

まだまだ、もっと凄い事してあげちゃうんだから、覚悟しなさい、なの。

何処までも堕ちて、快楽に狂っちゃいなさい。

“小夜”の舌が、お兄ちゃんの竿を摺り抜けて、直接、輸精管を嘗め回しちゃうよ。

ほぉらっ、れろっ、れろっ、裏筋に沿って、つつっぅーって、おちんちんの内側を直接嘗め回されてるのが分かるかな。

つんつんって、“小夜”が舌で突付いてるの。此処を通って精液が外に飛び出て来るんだよ。

まだ、射精はしちゃ駄目。

お兄ちゃんの玉袋を口に含んで、はむっ。

……何をされるか、もう分かった?

精子を作ってる金玉を、直接お口の中でころころ転がして刺激してあげるね。

お兄ちゃんの一番大事で、一番弱くて、一番気持ちのいい快楽神経の塊を、“小夜”のお口で虐めてあげる。“小夜”の舌で突付き回してあげるの。

ほぉらっ、じゅぶっ、じゅじゅっ、つんつんっ、れろっ、輸精管もっ、れろっ、金玉もっ、ちゅぶぅぅっ、おちんちんの海綿体に“小夜”の唾液をいっぱい流し込んであげる。ほらっほらっ、どんどん大きくなるよっ。限界まで勃起してるのに、“小夜”の唾液で無理矢理パンパンにされて、もっともっと大きくなっちゃうのっ。精巣も、“小夜”の唾液で満たしてあげるっ。お兄ちゃんのザーメンっ、薄くなっちゃうけどっ、じゅぶぶぅっ、精液タンクが満タンになっちゃって、射したくて射したくて仕方が無くなって来ちゃうでしょうぅっ?男の人はっ、れるっ、一杯になっちゃうと勝手にお漏らししちゃうように出来てるのっ。んっ、じゅぶっ、おいひいよぉっ、お兄ひゃんのおひんひんっ、じゅぢゅぅぅぅっっ……ぷあっ。あはっ、べとべとだね、お兄ちゃん。ぺちゅっ、ちゅぅぅぅぅっ……

“小夜”様、もうイッちゃいます!!!

イキたい? “小夜”のお口でおちんちん弄ばれて射精しちゃいたいの?変態お兄ちゃんっ。

“小夜”様、もうイッちゃいます!!!

うーんっ。どうしよっかなぁー? 『駄目っ、射しちゃ駄目っ!我慢してっ、お兄ちゃんっ!!』

“小夜”様ぁぁぁぁーーーーー!!!!

右:イキたい? イキたいよねっ、お兄ちゃんっ?
左:『駄目っ、お兄ちゃんっ!逝っちゃったら本当に帰って来られなくなっちゃうのっ!!』

右:もう、我慢の限界だよね。金玉、上がって来ちゃってるの。
左:『駄目なのっ!起きてっ、お兄ちゃんっ!!』

右:それじゃあ、射精してもいいよ。今から十カウントするから、ゼロになったらイッちゃってもいいの。
左:『今から十数えるから、十になったらお兄ちゃんは目を覚ますの!!』

右:十  九  八  七  六  五  四  三  二  一  
左:『ひ  ふ  み  よ  い  む  な  や  こ  と』

右:ゼロ!お兄ちゃん、イッてもいいよ!!!イけっ!!イッちゃえっ!!!イきまくりなさいっ!!!!
左:諸々の禍津怨霊、祓い清め給え!!!

あ、ああっ、イクっ、イクっ、イッちゃうっ!!!

神経が焼き切れそうな物凄い快感と共に、貴方は涎を垂れ流しながら、噴水のような勢いで射精してしまいます。
おちんちんから精液噴き出てる。気持ちいい。気持ちいい。気持ちい過ぎて射精がぁっ、おちんちん止まらないっ、止まらないよぉっ!!!!!


・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・


カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

段々と、意識が戻って来る。
時計の針に引き戻されて、貴方の意識が闇の面へと浮かび上がる。

カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。カチ。

此処は、貴方の部屋。

ベッドに横たわる貴方の股間が、じっとりと湿っています。

妹の“さや”が、心配そうに貴方を見下ろしています。

「…だから、幽霊は居るって言ったの…」

小さな、可愛い、妹が、ぎゅっと、抱き付いて来ます。

「…でも、“さや”と一緒だから、大丈夫、なの…」

じっとりと湿った貴方の股間に手を這わせて、指先に掬い取った、白く濁ったべとべとのお汁を愛しそうに舌で舐め取りながら。

「……ずっと、“さや”がお兄ちゃんを守ってあげるの……だから、お兄ちゃんは、ずっと、ずっと、“さや”と一緒、なの……」







「――お兄ちゃんはもう、“さや”の物なの――」














・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今から、“沙耶”がお兄ちゃんに掛けられた呪縛を解いてあげるの。
最後までちゃんと聞けば、“小夜”に掛けられたおかしな命令は全部消えて無くなっちゃうの。
だけど、もしもお兄ちゃんが完全に“小夜”に取り憑かれちゃってて、“小夜”に支配されたいって思ってしまっていたら、もう“沙耶”にはどうする事も出来ないの。

お兄ちゃん、“沙耶”はお兄ちゃんが大好きなの。

お願い、還って来て。


行くよ。


ひ ふ み   よ い む な や   こ と も ち ろ ら ね
し き る   ゆ ゐ つ わ ぬ   そ を た は く め か
う お え   に さ り へ て   の ま す あ せ ゑ ほ れ け

諸々の禍津怨霊、祓い清め給え!!!



……多分、これでもう大丈夫なの。


でも、念の為に、お兄ちゃんはずっと“沙耶”と一緒に居るといいと思うの。

大人になったら結婚しようって、約束したの。

だから、“沙耶”はずっと、ずっと、一生死ぬまで、お兄ちゃんと一緒なの……。




……ううん、死んでからも、ずっと、お兄ちゃんから離れないの……。



暗黒催眠空間トップページ


※祝詞はひふみ神呪。
実在だが最後の部分のみ創作